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ここが鍛冶屋か。
木工屋よりさらに大きいな。
さて、ここに居てくれるといいのだけど。
そう願いつつ、鍛冶屋の中へと入っていく。
さて、今回は最初から探そう。
そう思い、店内を見渡すが、少年の姿は無い。
代わりに気になるものがあったのだが、今は少年が先だ。
どうせここで探すのは最後だ。
ならば用事が終わってからゆっくりと見よう。
「すいません」
カウンターで話している2人組に申し訳ないとは思いつつも声をかける。
2人組は背が高めの白髪で黒色の目の男性と背が低めの同じく白髪で黒色の目をした男性だ。
「ああ?今忙しいんだよ!後にしろ!」
「そうでしたか。それはすいませんでした」
怒らせてしまった……。
だが、これは待っていてもかなりかかってしまう気がする。
何せ、会話を聞いていると背が低めの男性が背が高めの男性に説教をしているのだ。
確かにこれは大事なことだと思う。
だが、売り場で、しかもカウンターでしないでほしいとも思う。
こういう時は他の人をカウンターに呼んだ後に奥へ行って説教をするものでは無いのだろうか?
いや、これがこの店のやり方なのだろう。
商品を見て待っておくとしよう。
ランス!?
かっこいいな……。
鍬!?
あ、そうか。
そういえばそういうスキルもあった気がするな。
一瞬武器として使用するのかと思って驚いたよ。
でも、何も槍の隣に並べることは無いと思うのだけど……。
おや?
ここにも矢が売っているのか。
矢は木工屋だと思っていただけに意外だな。
どうしてだろうか?
ああ、そうか。
鏃が鉄製なのだから鍛冶屋で売っているのか。
よく考えてみたら、槍も持ち手の方は木製なのだし不思議ではないな。
あれ?
でも、木工屋では槍は売っていなかったような気がするな。
何か理由があるのだろうか?
おお!
何で……。
いや、何も言うまい。
店の隅の方に展示されていた魔法銃は吸い込まれそうな黒色をしていた。
そして、その隣には透き通るような白色をした銃が並べてある。
なんて、綺麗なんだ……。
そう、かっこいいではなく、綺麗なんだ。
特に目立った装飾でも無い、変わった形状でも無い、普通と思える銃の形をしている。
だが、惹かれるのだ。
そして、値段は表示されていない。
つまり、非売品なのだろう。
「おお、それに目を付けたか。どうだ?」
どうだ、とは感想を言えと言うことだろうか?
「綺麗です」
そう、思ったことはそれだけなのだ。
他の言葉は必要なかった。
「そうか。まあ、売ってやれないんだけどな!」
「分かっていますよ。これはあなたが作成されたのですか?」
「分かるか?それは今の俺の最高傑作の1つだ」
最高傑作。
つまり、この鍛冶屋で最高の魔法銃なのだろう。
それにしても、綺麗だ。
これを超えるものをプレイヤーはいつか作れるのだろうか?
作れるとしても、相当先になりそうだ。
おっと、そういえば。
「先程はお忙しいところを申し訳ありませんでした」
腰を折りつつ、先程の件を謝る。
「いや、分かってくれてるのならいいってことよ。それよりも、何か用事があったのだろう?」
あの状況で聞いていたの!?
そうなると、先程対応をできなかったからわざわざ来てくれたのだろうか?
「はい。今、人を探していまして、その人がこちらを訪ねていないかお聞きしたいと思いまして。
「ほう。鍛冶関係か?」
「分かりません。ですが、その人は生産系のスキルを持っているはずなので、関係ありそうな生産系の店を回っています」
そう、持っているはずなのだ。
あの少年はギフトアイテムを全て生産系にしているはずなのだ。
そうすると、スキルも生産系に特化していると思われる。
まさか同じギフトアイテムを複数選択したとは思えない。
それに加護で生産系を選択しなかったとしても、ギフトアイテムで選んだ以上興味があるはずだ。
ならばスキルを持っている可能性は高い。
「そうか、なら特徴を教えろ」
「水色の髪で青い目をした少年です。名前は知りません」
「名前を知らないか……。なぜ探す?」
やはり聞いてくる人もいるか。
「依頼をしたいのです。先日ある金属を入手したので、メイン武器である魔法銃を強化したかったのですが、私は鍛冶スキルを取得していません。なので、知っている中で一番鍛冶スキルを取得している可能性が高い彼を探して依頼したいと思い、探しています」
「ほう。金属の加工なら別に俺が引き受けてもいいぞ?金が心配なら先程後回しにした謝罪として、安くしてもいい」
「ありがとうございます。ですが、お断りさせていただきます。貴方に頼むには、私では技量が足りません」
この人が作るのなら、必ず強武器になるだろう。
あの黒と白の魔法銃はそれを決定づけるほどの印象を与えてくれた。
例え下位の素材だとしても、知らない人物の依頼だとしても、この人は手を抜くことはしないだろう。
だから、断るのだ。
道具に使われたくは無い。
武器は使ってこそ武器なのだ。
それに、プレイヤーがあの魔法銃に届く武器を作れるかも興味があるからね!
僕は作らないけど。
「はっはっはっ!面白いな!だが、それだけではあるまい?」
見抜かれたのだろうか?
「分かりますか?」
「いや、分からんさ。だが、悪戯を企んでいる子供のような表情が垣間見えたのでな」
本当に心を読んでいるのではないかと思ってきたよ!
確かに、あれは企みに当たるのだろうけど、表情に出てたかな……。
でも、悪戯じゃあないよ?
「まあ、いい。その子なら多分ウチで修業している子だろう。ちょうど今奥の工房にいるぞ。呼んでくるか?」
いた!
そして、修業中ということは、鍛冶のスキルも取得しているだろう。
そうなると、あとは依頼を受けてくれるかどうかだ。
「ありがとうございます。でしたら彼が休憩時間に入る時にお願いします」
「よし、分かった。ならば今から休憩だ!」
「言い直します。彼の作業の区切りがいいところでお願いします」
「はっはっはっ!分かっとるさ」
絶対試してるよね、これ?
まあ、いいんだけどね。
「では少し様子を見てくる。商品でも見て少し待っといてくれ」