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従魔使いのベアリアスワールド・オンライン  作者: 雪結晶
1章 - 始まりの町と初めての従魔
36/202

―――36―――

 それは突然起こった。

 ゴーレムの振り下ろしを避けて逃げた後、再度ゴーレムに追いつかれる直前だった。

 ゴーレムの全身が黒みが帯びた光に纏われた気がしたのだ。

 それに脳は警鐘を鳴らした。

 これは危険だと。

 そして、次にくる攻撃にいつも以上に集中した。

 今までも集中していなかったわけではないが脳が危険を察知したからか、いつも以上に集中できたのだ。

 ゴーレムが右腕が持ち上げられないまま、こちらへ向けて動き始める。

 より集中できていた為か、いつもより早く攻撃を判断できた。

 これは横薙ぎ攻撃だろう。

 急いで地面へと伏せ、回避するために行動を起こす。

 そして、地面に完全に伏せた瞬間。

 

 ブン

 

 頭上を通り過ぎていく大質量。

 すぐに身を起こし、飛び跳ねるように後ろへと移動する。

 これはまずい!

 行動自体はいつもと変わらない攻撃だ。

 だが、速い。

 脳の警鐘に従い、攻撃に対していつもよりも早く回避を始めていたというのに、回避はぎりぎり間に合った感じだった。

 圧倒的に速くなったわけではないが、すぐにわかる程度には速くはなったのだ。

 先程はより集中できていて、ゴーレムの攻撃がいつもより早く分かっていてあの状況なのだ。

 もしいつも通りの集中しかできず回避が遅れていたら、今頃直撃ではないにしろ攻撃に当たっていただろう。

 一応ポーションは第1の試練でのルビーの活躍もあり、かなり余っているが意味は無いだろう。

 なにせ、攻撃に当たってしまったら一撃なのだから。

 勿論当たって確認したわけではないが、どう考えてもあの質量で振るわれる最初と比べて速度の上がった攻撃は必殺の一撃となりえるだろう。

 以前の攻撃の時点で必殺に思えた攻撃がさらに強化されてしまったのだ。

 現状では掠ることさえも危なく思えてきた。

 もしかしたら現状で最高の防御系スキルと装備をしているプレイヤーでさえも耐えられないかもしれない。

 そう思えるほどの攻撃なのだ。

 

 ゴーレムが体勢を戻し終えた。

 次の攻撃へと集中する。

 もし読み違えてしまえばその時点で直撃が決定する。

 もし読み切るのが遅くなってしまえば攻撃は直撃はしないが当たってしまう。

 できるだけ正確に、早くゴーレムの攻撃を読み切るのだ。

 

 ゴーレムは左腕を引くように動かし始める。

 咄嗟に右側へと飛んで移動する。

 そして、すぐ横を通り過ぎる灰色の金属の塊。

 すぐに姿勢を戻し、再度ゴーレムの攻撃へと備える。

 

 どうしようか、これでは考えている暇はなさそうだ。

 でも、集中を乱すとその瞬間ゴーレムの攻撃を受けてしまうだろう。

 ならば今は集中して避け続けるほかないか。

 いつか訪れるかもしれない隙へと向けて。

 

 

 

 あれからどれくらい避け続けただろうか。

 ゴーレムが素早くなる前と違い、逃げる隙も無いのでその場で攻撃を避け続けていた。

 メニューを開いて時計を確認できれば経過した時間は分かるだろうが、そんな余裕は無い。

 多分体感では長く感じていても、実際は集中しているのであまり時間は経過していないだろうと思う。

 一体いつまで避け続ければいいのだろうか?

 流石にこのままではいずれ集中力が切れて攻撃を受けてしまうだろう。

 だが、打開策を考えている暇は無い。

 

 そして、ゴーレムが右腕を上へ振り上げようとしているのが見えたので、横に避けようとしたとき、それは起きた。

 ゴーレムが帯びていた黒い光が、今度は明確に視認できるようになった。

 つまり、強化されたのだろう。

 

 咄嗟に避ける足にさらに力を込める。

 そして、2度目に跳ぶ時にはさらに力を込める。

 

 大きく揺れる地面がその強化された攻撃力の高さを証明していた。

 そして、揺れが収まる前に全力で後ろへと飛ぶ。

 強化されたということは、揺れが収まるまで待ってから飛んでいたのでは確実に遅いだろう。

 

 その考えを証明するように、目の前をゴーレムの左腕が通過する。

 次はどの攻撃をしてくる?

 もう事前動作を見てから行動したのでは遅い。

 最初の振り下ろし攻撃は動作の途中で強化されたから間に合ったのだ。

 次の左腕での横薙ぎ攻撃は明らかに動作を見てから行動していては間に合っていない。

 ならば相手の行動を予測して動くしかない。

 

 通過した左腕が戻るまでに左側へと飛ぶ。

 ゴーレムの右腕をすぐ隣に見ながら、前へと走り出す。

 ゴーレムの右腕が戻り始めるのを見て、右側を向いて伏せる。

 頭上を何かが通り過ぎてから、思い切り前方へと飛ぶ。

 転がりながら立ち上がり、さらに前方へと飛ぶ。

 後ろに響く轟音を感じながらしゃがんだままでいる。

 上を通り抜ける物体を風で感じ、通り過ぎるのを見計らってさらに右前方へと飛ぶ。

 着地時に転がって距離を稼ぎ、後ろから聞こえる軽い地響きと左後ろを通り抜けた風圧を避ける。

 そして急いで立ち上がり、後ろを振り向きゴーレムを視界に収める。

 

 もう何も考えている暇は無い。

 全てを相手の行動予測と回避に注ぎ込まなければいけない。

 でも、楽しい!

 ボスとのぎりぎりの勝負とはここまで心を躍らせてくれるらしい。

 まだ初めて数日だが、このゲームをプレイできて良かったと思える。

 VRゲームでないと感じられない、自分自身が戦っているという感覚。

 本当に楽しい!

 

 

 

 あれからどれくらいの時間がたっただろうか。

 今目の前にはHPバーを空にして地面に倒れたゴーレムがいる。

 無限に続くかと思われた回避を続けていたら突然ゴーレムは止まり、膝をついたのだ。

 そして、そのまま地面へと崩れ落ちていった。

 

 それを確認すると、突然足に力が入らなくなり地面へと倒れ込んでしまった。

 良かった……倒せたのか……。

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