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休憩も十分にとったので、第3の試練へと挑戦し……お腹が空いた。
そういえば今日はゲーム内では何も食べていなかった……。
携帯食料しかないけど食べておこう。
お腹も満たしたので、第3の試練へと挑戦しよう。
<それでは第3の試練の内容を説明する。第3の試練はゴーレムを倒してもらう。それだけだ。ゴーレムは開始と同時に目の前に現れる。さあ、頑張ってもらおうか!では第3の試練、開始!>
開始の宣言と同時に、目の前に突然ゴーレムが現れる。
そのゴーレムは若干黒味が強い灰色をしていて、金属のような光沢を放っていた。
体長はウッドゴーレムよりも大きく、5メートルはありそうだ。
そして、ゴーレムばかりではなくその周りの景色も変化している。
辺りを素早く見渡すと、周囲に木々は無く代わりに膝丈ほどの草が生い茂っている。
どうやらここはゴーレム用のフィールドらしい。
ゴーレムが転移してきたと思ったが、どうやらこちらが転移したようだ。
まずゴーレムに識別を使用しておく。
<魔物>メタルゴーレム Lv5
レベル5……今まで出てきた中で最高レベルじゃないか。
そして、金属か……これは硬いのだろうな。
木であれなのだ、金属だとダメージは諦めたほうがいいかもしれない。
まあ、確認はするのだけどね。
とりあえず、イナバたちに攻撃させるのはできるだけ止そう。
ウッドゴーレムでさえ反動ダメージを受けたのに、より硬そうな金属のゴーレムで受けないとは思えない。
なので2人は回避優先で行動してもらって、ゴーレムの気を引いてもらおう。
そして、ダメージ確認は魔法銃で行うことにしよう。
もしかしたら魔法系よりも物理系の方がダメージが大きいかもしれないが、仮にダメージが大きかったとしても反動ダメージの関係で削り切ることは難しいだろう。
ならば反動ダメージを受けない魔法銃で攻撃し、ダメージが無い、あるいは分からないほど低いなら他の方法を探したほうがいい。
よし、方針も決めたことだし、戦闘開始といこうか!
「イナバ、ルビー、回避を優先して!」
2人に回避優先の指示を出し、自分は目の前のゴーレムに魔法銃を撃つ。
まだ距離は離れているのでゴーレムが近づいてくる前に全身へ攻撃して、ダメージを確認しておきたい。
弾はゴーレムの腹にあたるが、ダメージは無かった。
やはり木ゴーレムと同じく、ダメージは通らないのか……。
そして、攻撃を当てた直後にゴーレムがその体を動かし始める。
!?
失敗した……。
どうやらゴーレムはこちらが攻撃するまでは動かないようになっていたのか。
まあ、今悔やんでもしょうがない。
それよりも、全身に攻撃を当ててダメージを確認しないと。
そう思い、頭へと魔法銃で攻撃していく。
弾は多少曲がってしまったが、ゴーレムの大きさの前では誤差にしかならず目標の部位へと当ってくれる。
だが、HPバーは減少しない。
腕、胸、腹、右肩、右腕、右手、左肩、左腕、左手と攻撃をしたところで、ゴーレムの腕が当たる距離まで近づかれてしまったので、一旦攻撃を中止して回避を優先する。
ウッドゴーレムならば、あの距離から近づいてくるのならばまだまだ攻撃を当てられたはずだ。
驚いたことに、どうやらこのゴーレムはウッドゴーレムよりかなり移動速度が速いらしい。
この速度だと逃げてもぎりぎり追い付かれてしまう気がするな。
ゴーレムは腕が届く距離に近づくとすぐに右腕で横薙ぎを行ってきた。
その攻撃を地面に伏せて避けると、すぐに立ち上がりゴーレムを見る。
そして、ゴーレムが次の攻撃を行う前に股へと攻撃を行うが、ダメージは無い。
ゴーレムが左腕で殴り掛かってきそうなのですぐに右後ろへと回避する。
灰色の金属の塊が目の前を通り過ぎていくのを確認しつつ、今度は左脚へと攻撃するがダメージは無い。
ゴーレムが左腕を戻したところで、さらに右脚へと攻撃を行うがダメージは無い。
離れたこちらに近づこうと踏み出した右足へと攻撃を行うがダメージは無い。
やはり移動速度だけでなく、行動速度も速いようだ。
普通大きくなったら遅くならないのだろうか?
再度近づいてきたゴーレムは右腕を空高く振り上げてきた。
これはまずい!
急いで左側へと飛ぶ。
着地し、さらに再度左側へと飛んだ。
ドゴーーーーン
その瞬間、ゴーレムの一撃が地面を揺るがす。
地面へと着地するが、揺れの影響で少し体勢を崩してしまう。
咄嗟に腕で体勢を整えられたが、少し離れた位置でこれなのだ。
あの攻撃の威力はすさまじいものだろう。
そして、あの攻撃は確実にまずい。
例え避けられたとしても近くの地面へと攻撃を受けると、振動で体勢を崩しかねない。
そこにその腕でそのまま横薙ぎされたら、体勢を崩した状態では避けることもかなわず直撃するだろう。
その横薙ぎでさえ必殺の威力が秘められていることは見れば分かるので、あの攻撃だけは絶対に大きく回避しなければいけない。
やはり今までの魔物とは格が違う……。
移動速度、行動速度、攻撃種類、少なくともこの3点はウッドゴーレムを完全に凌駕している。
ダメージが通らないので確認はできないが、おそらく防御力に関してもウッドゴーレムを凌駕しているだろう。
あのウッドゴーレムよりさらに強いのだ。
これはボスだとみて間違いないだろう。
そう、ボスだ。
ボスなのだ。
そう思うと、嬉しくて仕方が無い!
確かにあの攻撃力は怖い。
さらに先程の攻撃は攻撃力以外の威力まで秘めている。
そして、こちらの攻撃でダメージは通らない。
その上移動速度が速く、逃げることも難しいだろう。
それでも……いや、それだからこそ楽しい!
弱いボスなどごめんだ。
ボスはやはり、周囲の魔物とは格が違う強さを持ってこそボスだろう!
流石にあの攻撃の後に少し離れたこちらに連続攻撃はできないらしく、ゴーレムは体勢を整えている。
こちらはその間に逃げる!
攻撃が通らないのであれば、何かしら他の倒す手段を探さなければならない。
まずはウッドゴーレムと同じく、核が外にある可能性だ。
それを探る為に境界線まで逃げてみようと思う。
勿論ウッドゴーレムと違い、このゴーレムは追い付いてくるだろう。
その為、攻撃を避けつつ逃げることになるだろうが、回避に専念すれば何とかなるだろう。
それにしてもイナバとルビーが攻撃を行っていないな……。
どうしたのだろうか?
2人の今までの行動を考えると回避優先の指示を出していても攻撃を加えていそうなんだけどな。
もしかしたらあのゴーレムには攻撃が通用しないのを見抜いて、核を探してくれていたりするのだろうか?
そう思い、逃げるために振り返った時に少し見渡してみたが、2人の姿は確認できない。
流石にゴーレムが怖くて逃げたとは思えないので、やはり核を探しに行ったのだろうか?
それとも別の何か……いや、今は考えるのはやめよう。
もう後ろからゴーレムが追いかけ始めているのだ。
集中していないと逃げながらあの攻撃を避けるのは難しいだろう。
予想通り、早くもゴーレムは追い付いてきた。
追い付かれたら逃げるのをやめて後ろに振り返り、攻撃を避けることに専念する。
そして、パンチや横薙ぎ等の隙の少ない攻撃の時は回避と同時に少し後ろに下がりながら、隙の大きな攻撃である振り下ろしを待つ。
そして、ゴーレムが右腕を大きく上に持ち上げ始めたのを見た瞬間、横に2度飛んで避ける。
2度目の着地の際に揺れが収まるのを待ってから体を起こし、再度逃げ始める。
やはりこの攻撃は怖いのだが、これ以外の攻撃では距離をあまり稼げない為、多用してほしいようなしてほしくないような不思議な気持ちになる。
これを繰り返してゴーレムから逃げつつ、境界があるかどうか確認しようと思っている。
問題は境界が無かった場合だけど、ウッドゴーレムの境界の距離は大雑把にだが覚えているので、その2倍ほどの距離逃げてみて分からないようだったら境界は無いと判断しようと思う。
ゴーレムが追い付いてきたため、再度後ろに振り返り、避けに専念する。
20140824:修正
誤字を修正しました。