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風が草を揺らし立てる音、ほのかな草の香り、全身に感じる柔らかな風の感触、そして……視界いっぱいに広がる草原!
やっぱりテストプレイ以上の感覚だ!
ゲーム開始地点、そこは草原だった。
少し上を向くと少し遠くに森が見え、さらに上を向くと、青空が見える。
空は少し雲が見える程度の快晴だ!
<初めにチュートリアルを受けることができます。チュートリアルを受けますか?>
感動に浸っていると、頭の中に声が響く。
チュートリアルか、受けておいた方が良いだろう。
「受けます」
<了解いたしました。チュートリアルを開始します。まずメニューの使い方をお教えします。メニューオープンと唱えてください>
「メニューオープン」
すると、突然目の前の何もなかった空間にウィンドウが現れた。
<これが基本的なメニューの開き方となっております。他にも方法は御座いますが、そちらはヘルプをご覧ください。次に重要なメニューの使い方をお教えします>
そして、メニューの重要な部分であるステータス、パーティー、スキル、スキル技能、メニュー画面カスタマイズ、ヘルプについて説明があった。
・ステータス
現在の自分のステータスを確認可能。
・パーティー
他のプレイヤーとパーティーを組むことが可能。
また、複数のパーティーで組むレギオンを組むことが可能。
その際、パーティーメンバーのステータスの一部を確認可能。
・スキル
所持スキル、使用スキル、控えスキルを確認可能。
使用スキルの変更が可能。
スキルの取得が可能。
・スキル技能
スキルに設定されている技能を確認可能。
また、技能をこのメニュー画面から使用できる。
・メニュー画面カスタマイズ
メニューの各項目の表示場所や表示方法等を、自由に変更することが可能。
その他には空のページが複数有り、そこに戦闘用や生産用等の自分独自のページを自由に設定できる。
また、スタート画面や空のページにはスキル技能を使用するためのショートカットを置くことができ、そのショートカットを押すことで、音声認識以外でスキルを使用することも可能。
・ヘルプ
各機能の説明等が確認可能。
その他の部分は各自ヘルプで確認してくださいとのことだ。
ただ、説明部分でもう少し詳しく知りたい点があったので聞いてみた。
まず、スキルに関してだ。
このゲームは所持スキルをすべて使用できるわけではなく、メインスキル3個、サブスキル5個を設定して、設定したスキルだけが効果を発揮するようだ。
また、使用していないスキルは消えるわけではなく、控えスキルに置かれることになり、必要に応じて使用するスキルと変更が可能だ。
次にスキルの取得についてだ。
スキルを取得するには1つのスキルにつきスキルポイントを1を消費する。
現在は6ポイント持っているので、現在だと6個までスキルを新たに取得できるわけだ。
また、スキルポイントの取得方法についても聞いてみた。
基本は種族レベルが1上がる毎に1ポイント取得だが、それ以外にも方法はあるとのことだ。
次にスキル技能だが、スキルに設定されている技能のことである。
剣技や魔法等がこれにあたり、使用するとMP等を消費するものもある。
また、スキル技能はスキルを取得した時点でも使用できるものの他、スキルのレベルアップ等でも新しく取得できる。
<次に戦闘の説明に移ります>
目の前に突然、畑が似合いそうな案山子らしきものが出てきた。
なんと麦わら帽子と軍手付きだ!
……攻撃目標にでもするのだろうか?
<武器を装備してください。武器等のアイテムは現在ベルトに装着されているマジックポーチ・微の中に収納されています>
これマジックポーチだったのか……。
ただのベルトポーチかと思ってた。
<ポーチの中に手を入れ、取り出したい物を仮想ウィンドウから選択すると取り出すことが可能です。また、武器の装備の仕方で分からないことがある場合は声をおかけください>
説明通りにポーチに手を入れてみると、目の前にウィンドウが開いた。
・2000サカフィ
・剥ぎ取りナイフ
・銅の魔法銃
・未開放の指輪
・未開放の腕輪
開かれたウィンドウにはアイテムがリスト形式で表示されていた。
ん?未開放の指輪?
……ランダムエンチャントのアクセサリーかな。
まあ、後で確認することにして、武器を出さないと。
そう思い、銅の魔法銃を選択した。
すると、ポーチに入れていた手に何かが握られている。
手をポーチから出してみると、やや赤に近い茶色をした銃が握られていた。
大きさは片手で持てる程度で、持ち手の部分には布が巻いてある。
布は滑り止めだろうか?
<武器を装備を確認しました。武器を魔法銃と確認しました。魔法銃用のチュートリアルを開始します>
まあ、ここで剣のチュートリアルが始まっても困る。
<案山子の前に進んでください>
指示通り、案山子の前に向かう。
<確認しました。武器を案山子に向けてください>
魔法銃を見様見真似で構え、案山子へと銃口を向ける。
<確認しました。武器の持ち方も問題ありません。人差し指で引き金を引いてください>
見様見真似で銃を構えてみたが問題ないようだ。
そして、指示通り魔法銃の引き金を引く。
ヒュ
小さな音がしたかと思うと、銃口から赤色の丸い物体が発射された。
そして、その物体は……案山子の首の横を通り過ぎていった。
<武器での攻撃を確認しました。魔法銃は使用するたびにMPを消費します。ご注意ください>
当てる必要は無いのか。
<MPを回復しました。攻撃が案山子に10回あたるまで攻撃を行ってください>
あ、やっぱり当てなきゃだめだよね。
もう一度銃を構えて攻撃を行う。
次の攻撃は何とか当たった。
これ結構難しいな……。
まあ、弓よりは簡単だと思うけどね。
その後も攻撃を続け、20回かけて10回の攻撃を当てることができた。
ただ、なんだか弾が曲がっていた気がする。
<10回の攻撃命中を確認しました。お気づきかとは思いますが、魔法銃の弾は能力が足りない場合真っ直ぐに飛ばない場合があります>
やはり弾が曲がっていたのか。
そして、どうやら能力が足りないらしい。
足りないのがどの能力か気になるな。
<次に動く的に当てていただきます>
突然目の前にある案山子が動き始めた。
先ほどの止まっている案山子への攻撃ですら命中率が5割程度だったのに、当てられるのだろうか?
そう思い、不安になっていたが動きを確認していると、どうやら左右前後と直線的な動きしかしないみたいだ。
良かった……これなら何とか当てられるかな。
<10回当たるまで攻撃を行ってください>
さっそく攻撃を開始した。
やはり弾は曲がってしまうが、それでも25回の攻撃で突破できた。
<10回の攻撃命中を確認しました。次は攻撃を1度受けてみてください>
すると、案山子が消えて同じ位置に赤い目をした白い兎が現れた。
普通の兎だろうか?
いや、大きさが普通の兎より少し大きいかな。
<攻撃を開始します。大丈夫ですので避けないでください>
そう告げ終わるなり、兎が突進してきた。
避けたいが……チュートリアルなら仕方がないか。
痛みを覚悟して腹で攻撃を受ける。
ドン
結構痛い。
けど、衝撃に対して痛みが弱いような気がする。
<ありがとうございます。HPを回復します>
どうやらHP回復で痛みが軽減されるようで、痛みはほとんど無くなった。
<メニューのオプションより痛覚の設定が行えます。現在の痛覚が強いようでしたら設定を変更してください>
そう説明を受け、メニューを呼び出してオプションを開く。
現在は70%になっていて、下限は10%から上限は100%まで変更できるようだ。
とりあえず、今のままでいいか。
<一定の痛みを超える衝撃を受けた場合、状態異常になり痛みは受けません>
状態異常?
気絶とかだろうか?
<また、痛みを100%以外にすると、物に触った時の感触が異なります。ご確認ください>
痛みの項目を変化させつつ銃に触ってみたり、自分の腕を抓ってみたりする。
やはり、値が低いほど痛みに鈍感になるようだ。
ただ、感触が変化するのが問題だな。
これは100%の方がいいのだろうか?
<どうでしょうか?仮に痛覚を100%に設定されていても、危険な痛みの場合は自動で状態異常になり痛みは受けません。その為、現実の体への影響は無く安全です。勿論テストを重ねてのおりますのでご安心ください>
危険な痛みがどれくらいかはわからないが、もし危険な痛みをVRゲームで実際に受けてしまうと現実の体に影響が出てしまうのだろうか?
覚えていたら今度調べてみようかな。
<それでは痛覚を自動で100%に設定します。その状態で危険な攻撃を受けてみてください>
メニューを見てみると、痛みの項目が灰色になり100%になっている。
灰色の状態では変更が不可能ということだろうか?
<攻撃を開始します。大丈夫ですのでよけないでください>
先ほどと同じく、兎から攻撃を受けてみる。
全然痛く……。
<状態異常を回復しました。先ほどは気絶の状態異常にかかりました>
どうやら気絶していたらしい。
痛みが上限値を超えると気絶するのか。
まあ、予想通りかな。
あれ?ということは、痛みの数値って低い方が気絶し難くていいのでは?
<痛みの設定値が低い場合でも同じ衝撃で気絶します。安心して好きな値を設定してください>
良かった。
それにしても、実は思考を読んでいないだろうか?
先ほどから気になることを言う前に答えてくれている。
まあ、読まれていても問題は無いのだけどね。
少し迷ったけど、痛覚は100%に設定した。
多少痛いかもしれないが、安全なら問題ない。
痛みよりも、感触が違うことの方が大問題だ。
痛みを変更しながら魔法銃を触ってみた感じだけど、多分攻撃に支障が出る気がする。
痛みの数値が低いと細かなずれなどが分からないのだ。
しかも魔法銃でこれだから弓や近接系で弱点を正確に攻撃する時はかなり支障が出そうな気がする。
まあ、杖で魔法だけを使う分には問題なさそうだけど。
なにより、この全身に感じる柔らかな風の感触を感じてしまったら、100%以外にするなんて勿体ないとしか思えなくなったからね!
<設定は完了しましたでしょうか?>
「うん」
<了解しました。最後に魔物を撃破していただきます。戦闘に負けてしまった場合でも、回復して再度挑戦できます>
やはり実戦訓練もあったか。
これも勝つまで行うのだろうか?
<準備はよろしいでしょうか?>
魔法銃を目の前にいる兎に向けて構える。
まあ、今は戦闘のことだけを考えよう。
「準備完了」
<それでは戦闘を開始します。頑張ってください!>
20161216:
誤字を修正しました。
20150429:
誤字を修正しました。