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どういうことだ?
ゴーレムから全力で逃げていたのだが、突然ゴーレムが止まった。
無事逃げ切れたかと思ったのだが、あの索敵範囲を持つゴーレムがあそこで追いかけてくるのをやめるとは思えないのだ。
それに、視認できるギリギリの範囲まで離れてみたが、ゴーレムはこちらを見たまま、元の場所に戻る気配が無いのだ。
本来ならここは逃げる場面かもしれないが、どうしても気になり、逃げる足を止めてしまう。
まあ、再度ゴーレムが追いかけてきても逃げ切れる自信はあるので大丈夫だろう。
まずは止まった理由を考えてみよう。
まず思いつくのが、一定距離離れると追いかけてこなくなる可能性はどうだろうか?
いや、よく考えてみたら今の距離よりも離れていたはずの、ルビーと同等以上の感知距離からこちらに近づいてきたのでこの可能性は低いだろう。
他は……エリア境界を超えることができない可能性はどうだろうか?
このゲームにエリアが設定されているかは分からないが、設定されているとすれば十分あり得るのではないだろうか?
いや、待て……こちらの方が1つ目の考えよりもあり得ない気がする。
もう少し状況が違えばありえたかもしれないけど、現状であそこがエリア境界の可能性はかなり低い。
う~ん……2つとも可能性としては低いが、絶対無いとは言い切れないな。
ならば、ここは一旦検証してみよう。
まずは、一定距離離れた場合に追いかけてこなくなる可能性を検証しよう。
「イナバ、ルビー少しここで待っていてね」
2人に指示をだし、ゴーレムにゆっくりと近づいていく。
少し近づいてみたが、ゴーレムはこちらを見たまま動く気配はない。
さらに近づいてみるが、ゴーレムに変化はない。
ゴーレムの攻撃範囲から少し余裕を持った位置まで近づいてみたが、やはりゴーレムに変化はない。
流石にこれ以上近づくと攻撃範囲に入ってしまう可能性があるので、ここまでにしておこう。
結果としては追いかけてくるのをやめた理由に対象との距離は関係ないと見ていいだろう。
次にエリア境界を超えることができない可能性についてだが、こちらの可能性はほぼ無いと思っている。
だって……。
少し離れてからゴーレムに向かって魔法銃で攻撃をする。
弾はゴーレムの足に当たったが、ゴーレムが動く様子は無い。
さらに腕、胴、頭と攻撃を行うがゴーレムの様子に変化は無い。
やっぱりそうだよね。
あそこがエリア境界だとして、そこで魔物が止まったままなんてありえない。
確かにゴーレムにはダメージが見受けられないが、一方的に攻撃できるのだ。
もし、これがゴーレムではなくてウルフやラビットだった場合どうだろうか。
相手側に遠距離攻撃が無いのだからこちらに攻撃する手段は無いので、一方的に攻撃できる上にゴーレムと違い防御力も高くは無いので楽に倒せてしまうだろう。
まあ、事前にエリア境界までおびき寄せなければいけないのだが、それを考えても楽すぎる。
このゲームがそんな状況をよしとするだろうか?
いや、ここまで弱点や効率の良いダメージの与え方、特殊ドロップを設定していてそれをよしとするとは思えない。
もしエリア境界を越えられないようにするにしても、エリア境界に触れた時点で魔物が強制的に元に位置に転移したり、消滅したり、あるいは元の場所へ戻っていく等の行動をとる様にすればいいのだ。
もしかするとバグだったりする可能性やこの方法に気づいていない可能性もゼロではないが、限りなく低いと考えておくべきだろう。
なのであそこがエリア境界になっていて魔物はエリア境界を越えられない為、追いかけてくるのをやめた可能性は無いと考えよう。
一旦ゴーレムから離れ、イナバとルビーがいる位置まで戻ってきた。
あの位置からだと考え事をしていて、突然ゴーレムが動き出した時に反応できないかもしれないからね。
あと考えられることは何だろうか?
う~ん……追いかけてくるのをやめたのではなくて、あのゴーレムはあそこで止まる必要があったと考えてみてはどうだろうか?
そうなると、魔物がエリア境界を越えられないのではなくて、あのゴーレムがあの境界線を越えられない可能性もあるのか。
もしかしてゴーレムは周囲の他の魔物より圧倒的に強い代わりに、行動可能範囲に制限があるのではないだろうか?
うん、それなら可能性はあり得そうだ。
だとすれば、ゴーレムがあそこから出られないことに倒すカギがあるのではないだろうか?
少し考えてみたが、2つの可能性を思いついた。
1つ目はゴーレムをどうにかしてあの境界線から押し出せば、動かなくなりダメージが通る様になったり、押し出した時点で倒したことになる可能性だ。
2つ目はある地点を中心として、ゴーレムの行動可能範囲が決まっている可能性だ。
よく考えてみたら、ゴーレムは本来使役されている存在だと思う。
そして、使役者がいるのなら、その使役者からあまり離れることはできない可能性は十分にあるだろう。
ならば倒す方法はその使役者を倒してしまえばいいことになる。
そして、先程からゴーレムがこちらに寄ってこないところを見ると、使役者はこちらの動きを確認できていないか、動けないと見るべきだろう。
さて、可能性が出てきたところで実行したいのだが、問題はどうやって実行するかだ。
1つ目に関しては……まあ、方法はあるのだが、正直余り実行したくない方法なのだ。
なので、まず2つ目を確認してみようかと思う。
確認方法は簡単だ。
使役者が動かないことを利用して確認してみようと思う。
まずはゴーレムを前に見て真横に移動する。
その際にゴーレムが同じく真横に動くか、或は円状に動くかで結界の形を判断する。
真横に動いたならば行動可能範囲は長方形の可能性が高いので、まずは長方形の隅を探す。
方法としてはさらに真横に移動していき、ゴーレムが横に動かなくなった場所が長方形の隅だ。
そして、隅から対角線に移動していけば中央に辿り着けるはずだ。
真横に動かず、円状に動いたならば行動範囲は円状の可能性が高い。
その場合もさらに横に移動してき、円周の位置を確認する。
そこから円の中心点を割り出せば中央に辿り着けるはずだ。
こちらに関しては正確性に欠けそうだが、まあやってみようと思う。
問題は円の半径がとても広い場合にほぼ真横に動いているように見えるだろうから、長方形と間違えるかもしれないことだろうか。
まあ、その場合はいつまでたっても長方形の隅に辿り着けないから判断はつくだろう。
そして、一番問題なのは、長方形でも円状でもない場合だが、この場合はもう諦めて次の方法を考えようと思う。
よし、そうと決まればさっそく実行しよう!
ご覧頂きありがとうございます。
主人公はテイマーのつもりで考えていたのですが、よく考えてみたらサマナーなのではないのかと思ってきました。
20140819:修正
字下げをするように修正しました。