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従魔使いのベアリアスワールド・オンライン  作者: 雪結晶
1章 - 始まりの町と初めての従魔
24/202

―――24―――

「よし、成功だ」

 

 見上げた空は、若干薄暗いが、雲が少しの快晴だ!

 若干薄暗いのは、まあ誤差の範囲内かな。

 今日はすぐに西の森に行きたかったので時間を調節して、ゲーム内の朝から始められるようにログインを試みたのだ。

 流石に魔物も見えずに死に戻りした場所へ、夜に挑む気にはならなかったからね。

 

 今日の朝から考えていた対策だが、従魔使いの特徴を生かして、感知能力を最大限まで上げたメンバーで挑もうと考えている。

 まず、ホークは森では感知能力はあまり高くないと思うので優先順位が下がる。

 ラビットは昨日探知できていなかったようなのでこちらも優先順位は下がる。

 そこであまり出番が無かったウルフだ。

 森のウルフ達はこちらの位置を正確に把握し、奇襲を狙ってきていたので、少なくとも森の中では感知能力はあるだろう。

 もしかしたらラビットと同じく感知できないかもしれないが、可能性はあると思う。

 なので1人目はウルフで決定だ。

 そして2人目なのだが、ラビットで召喚しようと思う。

 理由としては、確かに昨日は感知できなかったが、それはあくまでウッドパペット相手の話で、ウッドゴーレムは感知できるかもしれないことと、ここの森は少し密度が高いので空からの警戒と奇襲は難しいと思うのだ。

 さらに従魔だけに頼っていてはいけないので、自分自身はできるだけ集中し、周囲に注意を払うように進もうと思っている。

 他に対策が取れればよかったのだが、現状ではこれが限界だった。

 

 さて、方針は決まっているのでさっそく2人とも召喚する。

 イナバはラビット、ルビーはウルフだ。

 イナバがラビットで固定になりつつある気がするが、気に入っているようなので固定でもいいかもしれない。

 まあ、水中や空中だけの戦闘になればさすがに変更はするつもりだけどね。

 

 

 

 西門を出て、外壁の近くで少し実験をした後、さっそく森へと入っていく。

 町の近くでは魔物は出にくいようだが、油断してはいけない。

 昨日もそこまで油断していたわけではないが、視界外から矢で攻撃されたのだ。

 イナバとルビーにも周囲を警戒してもらい、自分は木々を注意深く観察しながら進む。

 

 少し進んだところで、ルビーが突然立ち止まる。

 昨日はここの少し先辺りで撃たれたと思う。

 つまり、ルビーは敵を感知した可能性が高い。

 ルビーが見つめている方向へと視線を向け、先にある木々を見てみる。

 だが、魔物は見当たらない。

 南の森の時のように魔法銃を撃ってみようか?

 いや、違う場所にいて反撃を受けたら、この距離で矢を回避できる自信が無い。

 どうする?

 ん?何か動いた?

 そう思った瞬間横に体を投げ出した。

 そして、急いで起きて先程の何か動いたように見えた場所を見てみると、弓を持っている人型の何かが見えた。

 しかし、すぐに木の後ろに隠れてしまったので、その他の情報は分からなかった。

 そして、自分が回避する前にいた位置を見てみると、少し後ろにずれて木製の矢が突き刺さっていた。

 

 さて、場所は分かったがどうする?

 一応注意深く見ていたら何とか避けられることは分かったが、どう近づこうか?

 木の後ろに隠れながら徐々に向かうのはどうだろうか?

 これならば木の後ろにいる間は矢は受けないだろう。

 しかし、本当にそれでいいのだろうか?

 木の陰に隠れながら進むということは、相手が隠れている木から少しの時間だが視線を外すことになる。

 その瞬間を狙い移動でもされたら……。

 いや、その時はその時だ。

 真正面から隠れずに行くよりは良いだろう。

 よし、そうと決まったら行動開始だ!

 

 イナバとルビーと共に木の陰に隠れながら、できるだけ魔物が隠れた木から視線を外さないように進む。

 残り5メートル程の距離に近づいたところで、急にルビーが吠えた。

 一体どうしたんだ!?

 だが、その理由は次の瞬間、理解できた。

 弓の魔物が隠れていた木のすぐ近くの木から、何かが飛び出してきたのだ。

 その姿は、周辺に生えている木と同じ模様の木材らしきもので作られた、人間を模した人形だった。

 手には木製の槍を持っている。

 そして、その人形は一直線にルビーへと向かってきている。

 

「イナバ、もう一体の魔物へ向かってくれ!ルビーは一緒に目の前の槍人形の相手だ!」

 

 そう指示をだし、木の陰から槍人形に魔法銃を撃つ。

 驚いたことに、人形は回避をせず腕で弾を受けてそのまま突進してきた。

 ならば!

 さらに足へ向けて魔法銃を撃つ。

 もう距離はほとんど無かった為、槍人形の足へと弾は当たり、槍人形は前へと転がり……前転して向かってきた!?

 まずい、これは避けられない!

 急いで横に回避しようとするが、間に合わない。

 そして、槍人形の槍が胸へと突き出さ……横に吹き飛ぶ。

 どうやらルビーが横から体当たりをしてくれたようだ。

 助かった!

 急いで体勢を立て直し、槍人形へと向かおうとしたところで、視界の隅に動くものが映った。

 その瞬間横に跳ぶ。

 そして、すぐ横を矢が飛んでいくのを見送りつつ、そちらへ向けて簡単に狙いをつけて魔法銃を撃つ。

 弾は弓人形が隠れていた木に当たったが、あれでいい。

 こちらに気をそらしてくれれば。

 そして、もう1本の魔法銃をマジックポーチから取り出し、槍人形へと狙いを定め撃つ。

 その弾は起き上がりかけていた槍人形の胸へと当たり、槍人形が起き上がるのを妨害する。

 そこにルビーが飛び掛かり、槍を持っている方の腕へ噛みついて……腕を噛み砕いた。

 こちらもその間に槍人形へと近づき、腕を砕かれて落とした木の槍を蹴り飛ばしてから、さらに槍人形の頭へ魔法銃を撃つ。

 そして、槍人形と弓人形が同時に視界へ入る様に位置取り、片方の魔法銃は槍人形へ、もう片方は弓人形へと向けて撃つ。

 勿論狙いは疎かになるが、両方とも狙い通りに当てる必要は無いのだ。

 相手へ当たりさえすればいい。

 後はイナバとルビーが攻撃を行ってくれる。

 そして、そのまま槍人形は起き上がることなく、HPバーが空になった。

 すぐに弓人形へと向かい、倒れている弓人形へと全員で攻撃を行うと、弓人形のHPバーもすぐに空になった。

 

 なんとか倒せたな。

 それにしても、まさかルビーが警戒していたのが弓人形だけでなく、槍人形も含めた2体だとは思わなかった。

 あの時ルビーが吠えて教えてくれていなければ、あのまま進み槍の餌食になっていたかもしれない。

 これは今後も気を付けないといけないな。

 

 それにしても、念の為に外壁の近くで魔法銃を2丁同時に使用する実験をしておいてよかった。

 まさか初遭遇で役に立つとは思っていなかったけど、同時に2か所に攻撃できるって思っていた以上に役に立つな。

 武器を2つ同時に装備するとペナルティがあるかもしれないと実験をしたのだけど、結果はペナルティは無しだった。

 そして、同時に撃った場合、別々に撃った場合でのMP消費量はあまり差が無かったように思う。

 まあ、MPが数値じゃなくてバーだから正確ではないとは思うけど、気にするレベルの差では無かったので問題は無い。

 あと、実戦で使用してみた感想だけど、やはり命中精度が悪い。

 命中位置を確認してたけど、かなりばらけていた気がする。

 もしかして、命中率にマイナス補正がかかったりするのだろうか?

 こちらも実験しておかないといけないな。

 

 さてと、剥ぎ取ろうか。

 そう思い、弓人形へと剥ぎ取りナイフを突き刺す。

 しかし、アイテムは残らなかった……。

 こんなに苦戦するのにアイテム無しなんて……。

 いや、予想はしてたのだけどね。

 それでも残念なものは残念なのだ。

 でも、次はもしかしたら……。

 淡い希望を持ち、次の槍人形へと移動する。

 そして、槍人形へと剥ぎ取りナイフと刺そうとしたところで、視界に木製の槍が映る。

 あの槍は……。

 あれ?確か、弓人形は弓を持っていなかったような気がするのだけど?

 そう思い、弓を探してみるが、やはり見当たらない。

 少し考えてみたが、ある可能性について確認したくなったので木製の槍に近づき、ナイフを突き刺す。

 すると、木製の槍は光の粒子になり消え、後には木材が残っていた。

 そして、槍人形の方を見てみるが、槍人形は消えていない。

 やはりそうだったか。

 条件は分からないが、人形と武器は別々にアイテムを剥ぎ取れるようだ。

 そして、槍人形も剥ぎ取ってみるが、何も残さなかった。

 これはもしかすると……。

 

 この森が人気が無いのには2つの理由がある。

 一つは魔物が強い点だ。

 そして、もう1つは……ウッドパペットは何もドロップしないのだ。

 いや、正確にはドロップはするのだが、魔石のみなのだ。

 しかも極低確率である。

 その為、この西の森は人気が無いらしい。

 

 でも、木製の槍から木材がドロップした。

 つまり、ウッドパペットは条件を満たさない限り、魔石以外のアイテムをドロップしない可能性がある。

 いや、条件を満たせば魔石以外のアイテムをドロップする可能性がある。

 これは凄い発見だ!

 しかし、これが知れ渡ればこの狩場にも人が増えてしまうかもしれないのか。

 どうしようかな……。

20140819:修正

字下げをするように修正しました。


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