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従魔使いのベアリアスワールド・オンライン  作者: 雪結晶
1章 - 始まりの町と初めての従魔
22/202

―――22―――

「それならこの町でなら問題ありません。ただし、他の町ではその町の考え方がありますので、その都度聞いておいた方がいいと思います」

 

 現在ギルドの総合相談所で従魔を町の中で連れていていいか聞いている。

 そして、回答を貰ったところだ。

 ちなみに従魔はギルドへ入る前に送還しておいた。

 流石に召喚した状態で、この質問は無いと思うのだ。

 そして、どうやらこの町ではいいようだけど、他の町ではダメな可能性があるらしい。

 ということは、他の町に初めて入るときは送還しておいて、すぐに聞きに言った方がいいのか。

 

 それにしても、街中でも従魔と一緒にいられるのは嬉しいな。

 一緒にいられるのが魔物ひしめく場所だけというのは、ちょっと触れ合いに欠ける気がするのだ。

 よし!ギルドを出たらすぐ2人を召喚しよう。

 これから町の中でも一緒だ!

 

 聞きたいことを聞き終えたのでギルドを後にして、一旦広場で2人を召喚する。

 イナバはラビットで、ルビーはホ……ウルフで召喚する。

 痛いからね……今度対策考えないとな……。

 

 召喚を終えると、イナバとルビーがじゃれついてきたので、広場の隅に移動しこちらもじゃれつき返しておいた。

 モフモフである!

 さて、聞きたいことも聞けたことだし、露店巡りを再開しようかな。

 

 

 

 相変わらず魔法銃が売っていない……。

 そんなに人気が無いのだろうか?

 まあ、いいか。

 それより次の露店へ移動しよう。

 

 

 

 おお、珍しい。

 ポーションを売ってる露店がある。

 もしかしたら今日初めて見たかもしれない。

 あれ?でもどうしてポーションの露店が少ないのだろう?

 ポーションなら普通に売れ筋の商品だと思うのだが。

 まあ、とりあえずあの露店に行ってみよう。

 もしかしたらそのことについて何か聞けるかもしれないからね。

 

「いらっしゃいませ……」

 

 水色の髪、青色の目をした少年が暗い雰囲気で出迎えてくれた。

 その髪は、青空のように空色で僕より少し長かった。

 その眼は、海のように青く、どこまでも潜っていけそうな印象を受けた。

 まるで大海原の真ん中で、青空を眺めているようだ。

 まあ、雰囲気で台無しなのだが。

 

 それにしても珍しい。

 僕より年下と思われる参加者を始めてみた。

 身長ははっきりとはわからないが、僕より少し低いくらいだろうか?

 声は声変り前のようで、高めの声だった。

 

 いや、それよりも店主がこの雰囲気でいいのだろうか?

 まあいいか、とりあえずポーションを見せてもらおう。

 

 ……暗い理由が分かった。

 多分商品のポーションがまったく売れないのだろう。

 そして、このポーションは売れなくても不思議じゃない。

 このポーション見た目は普通なのだが、品質が低いのだ。

 それでも鑑定を持っていない人には売れるかもしれないと思うかもしれない。

 だが、露店の機能として、商品に鑑定スキルによる鑑定結果を付けられるのだ。

 そして、その鑑定結果がこれだった。

 

 <アイテム:消費>低品質のHP回復ポーション

 拙い技術で作成された低品質の一品。

 使用するとHPを回復できるポーション。

 飲んでよし!塗ってよし!掛けてよし!

 

 うん、これはしょうがない。

 そして、これを120サカフィで売り出している。

 つまり、ギルドの方が安い上に品質が良いのだ。

 なんでこんな値段で出しているのだろうか?

 少なくとも半額の60サカフィ程度で出せば買う人もいると思うのだが?

 ……もしかして、ギルドのHP回復ポーションの値段を知らないのだろうか?

 

「すいません、失礼だとは思いますが……もしかしてギルドで販売しているポーションの価格を知らないのでしょうか?」

 

「ギルドで……販売……!?幾らで売っているのですか!」

 

 やはり知らなかったか。

 

「低品質じゃないHP回復ポーションが100サカフィで売っていますよ。一応確認してきた方がいいと思います」

 

「すいません、店番お願いします!行ってきます!」

 

 そんな言葉を残して店主はギルドへ向かって駆けて行った。

 ……店番って、システム的に無理なんじゃないだろうか?

 ほら、売り場に入れないじゃないか。

 まあ、店の横で待っていて、お客さんが来たら対応するくらいでいいだろう。

 その間は暇なので、掲示板を見て時間をつぶしておけばいいかな。

 

 

 

 おっと?これは……。

 

 

 

 少しすると店主がとぼとぼと帰ってきた。

 まあ、分かる気がする。

 ちなみにお客さんは何人か来たのだが、鑑定結果を見るなり踵を返していた。

 うん、お客さんの気持ちも分かる。

 

「う~……なんであんなに安いのですか……これじゃあ売れるわけないじゃないですか……」

 

 今にも泣きそうな顔で店主は呟いている。

 それにしても、気になることを言っているな。

 なんであんなに安い?

 こちらが高いのではなくて、あちらが安いのか?

 これは少し聞いてみようかな。

 

「落ち込んでいるところすいません。ギルドのポーションが普通の値段なのではないのですか?」

 

「材料費だけでも100サカフィ近くするのですよ……なんでそれをあんな価格で……」

 

 確かにそれだと異常に安いことになるな。

 でも、冒険者ギルドなのだから、冒険者を支援する目的で利益を度外視している可能性もあるのか。

 いや、よく考えたら職業ギルドもあるのだから調薬持ちが不利になるようなことはしないと思うのだが……。

 ああ、さっきの……。

 

「すいませんが、少し聞かせてもらってもいいですか?」

 

「はい、何でしょう……」

 

「調薬ギルドには登録されましたか?」

 

「仮登録ですがしましたよ~……」

 

 うん、これで材料が間違っている線は無いな。

 

「ではどこで材料を買われましたか?」

 

「普通に生産職ギルドで買いましたが?それが何か?」

 

 ということは材料を高く買ってしまった線も無いな。

 つまり……。

 

「そうですか。では最後に、調薬ギルドでHP回復ポーション作成の依頼はありませんでしたか?」

 

「はい、常駐依頼で貼ってありましたが報酬が低くて……ああ、そう言うことですか!」

 

「はい、多分ギルドで販売しているポーションはその依頼で作成された物です」

 

「確かにそうですね……あれ、でもあんな依頼受ける人がいるとは思えないのですが?」

 

「そうでしょうか?スキルのレベル上げに材料が要らない依頼だったら僕なら飛びつきますが」

 

「え?材料が要らない……?」

 

「ちゃんと受付で話を聞かれましたか?基本講習があったはずですが?」

 

「え?基本講習……?」

 

「やはりですか。先ほど待っている間に掲示板を見ていたのですが、調薬メインの方はその依頼を利用してスキルレベルを上げているようですよ。そしてその依頼については基本講習で勧められたと書いてありました」

 

「え?つまりは……」

 

「ちゃんと基本講習を受けていればこんな場所で品質の低いポーションを売っている必要は無かったわけですね」

 

「……泣いていいですか?」

 

「泣く前に調薬ギルドへ行ってみることをお勧めしますが?」

 

「それもそうですね、行ってきます!」

 

「待ってください!露店はどうするつもりですか?」

 

「ああ!忘れてました!ありがとうございます!」

 

 そして彼は急いで露店を片付けてギルドの方へと駆けていった。

 

 そう、実は先ほど掲示板を見ていた時に情報を偶々見つけたのだ。

 念のために変な材料を使用していて高い場合と、材料を高くかわされている可能性も聞いてみたが、違ったようだ。

 やはりギルドではあの依頼で作成されたポーションを売っているのかな?

 まあ、調薬ギルドは登録員のスキルレベルも上がるし、冒険者ギルドに恩も売れるしで良い方法だな。

 材料も普通に売って100サカフィ近くならば元はもっと安いだろうから、もしかしたら利益も出ているのかな?

 うん、あの依頼で作成されたポーションだから安価で提供しているで間違いなさそうだ。

 

 それにしても、彼はどうして基本講習を受けていなかったのだろう?

 職業ギルドの本登録条件だけ聞いて、余裕だと思って受けなかったとかだろうか?

 まあ、今度会えたら聞いてみようかな。

20140819:修正

字下げをするように修正しました。


20141026:修正

誤字を修正しました。

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