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202/202

202―ダンジョンB9―

「なかなか面白かったですよ、アリサ」

 

「まあ楽しかったですね」

 

「それにしても、これでは私も負けてしまいそうですね」

 

「冗談を。君が負けるのはあの人だけでいいですよ」

 

「……私があの中で一番弱いのですよ?」

 

「……冗談ですよね?」

 

「本当です」

 

「従魔を含めてですか?」

 

「その通りです。まあ2人とは僅差ですが」

 

「他の人達とはかなり差があるのですか?」

 

「一番上は勝てる気がしません」

 

「あの人は仕方ないでしょうね。それに2番目も仕方ないと思いますよ?」

 

「貴方と同等ですものね」

 

「あちらが上でしたよ」

 

 ……現実のアリサさんよりも強い人がいる?

 世の中は広いな。

 そう言えば、現実のユウ君はどうなのだろうか?

 楓と同じくらいの身体能力?

 いや、ユウ君は男の子なのだからもう少し上、なのかな?

 楓もなのだが、あの小さな体のどこにあれだけの身体能力が詰まっているのか。

 

「そうなのですか?」

 

「君が知らなかったのですか?」

 

「あとで問いただしましょうか」

 

「君の勇者に聞けばいいと思いますが?」

 

「……あの人の勇者でもあるのですよ」

 

 勇者、か。

 ……所詮、現実を知らぬ子供の憧れ、そうなんだろうな。

 

「リンカさん、勇者が気になるの?」

 

「……君は妖怪なのかい?」

 

「鏡を見せてあげたいよ。それよりも、どうなの?」

 

 ……私は今、そんなに羨ましそうな表情をしていたのか?

 

「知らぬ子供の憧れだ。笑ってくれていい」

 

「そうだね。笑ってほしいなら笑ってあげようか?」

 

 肯定して、それでも君は……。

 どこからその自信が出てくるのか。

 

「君は厳しいな」

 

「知らない? 勇者は実在するんだよ? それも単なる子供だった」

 

 実在?

 それも子供だって?

 ……何故、私は信じているのだろうか。

 勇者なんていない、そう思っているのに。

 

「勇者とは人の偶像。世の中には数多の勇者がいるものだよ。リンカさんが目指すのはどんな勇者? 全てを救う、物語の勇者? それとも、最高の1人?」

 

 私が目指す勇者?

 物語の勇者、それとも最高の1人?

 

「あちらはどうやら、最高の1人のようだけどね。僕の勇者もそちら側。そしてリンカさんは?」

 

 この子も楓と同じで、言葉遊びが好きだな。

 簡単に説明できる事をワザと考えさせる。

 

「知る、と理解する、は別物だよ?」

 

 ……絶対に妖怪だ。

 

「サトリちゃん、リンカさんならそう呼んでくれてもいいよ?」

 

 目の前の少年は、笑顔でそう言う。

 私なら?

 これは少し近づけた、そう思っていいのかな?

 

「まあ時間あるのだから、勇者については考えるといいよ」

 

 ……私が目指したい勇者。

 

「ところでお2人さん。それらは僕の前で話してもいい事なのですか?」

 

 あちらの話しも聞いていた?

 君は聖徳太子か。

 

「君は知らないのでしょう? 問題無いと思いますよ?」

 

「そうです。愚痴くらい吐かせてください」

 

「話し難くないですか? 僕とリンカさんを元の場所に戻して頂ければいつもの口調で話せますよ?」

 

「……アリサ、ばれてますよ?」

 

「君ですよ」

 

「2人ともです。特にそちらの女性は以前と先程、素で話していたでしょう?」

 

「ぷぷ」

 

「笑わないで!」

 

「それにしても、君は名前を伝えていないのか」

 

「仕方ないでしょう」

 

「そうなのかい?」

 

「そうなのよ」

 

 私だけ蚊帳の外だ。

 もう帰ってもいいだろうか?

 まあ自力では帰れないのだが。

 

「ちなみにそろそろ帰っても構いませんか? 知り合いがそろそろ出てくるかもしれませんので」

 

「まだ大丈夫だよ。君達の知り合いが出るまでには帰してあげるから」

 

「監視しているのですか? 1プレイヤーを」

 

「あそこが最前線だよ」

 

「納得しました」

 

 私は説明が欲しい。

 

「さて、凛。私と少し話をしない?」

 

「それは構わないが、私の話題は少ないぞ?」

 

 私の話題は本当に少ない。

 このゲーム、それが一番大きな話題となる程度には。

 

「それでいいよ。私は君を知りたい。少年の言うように、私は君を知らな過ぎたようだから」

 

「それなら構わないさ」

 

「話題はリンカさんの好きな人、それでいこう」

 

「ぶっ。ユウ君、君は何を言っているんだい?」

 

「それはいいね。もう1つの話題はアリサの好きな異性のタイプ、それでいこう」

 

「……おい?」

 

「……おっと、すこし失礼」

 

「どうした? 彼女からか?」

 

「そうだよ、アリサ」

 

 彼女?

 先程話題に出ていた、楓をここに連れてこない様に忠告した人物だろうか?

 

「何で!? いえ、ごめんなさい。既に落ち着いたわ」

 

 驚いた。

 あの冷静そうな女性が、いきなり叫ぶとはね。

 それ程に驚くことがあったのだろうか?

 

「どうした?」

 

「アリサ、終わりよ」

 

 終わり?

 この空間で話す時間が無くなったという事か?

 

「……早すぎないか?」

 

「彼女が読み外した。いえ、これは仕方が無い事よ」

 

「私も行った方がいいか?」

 

「お願いするわ」

 

「僕はログアウトした方がいいですか?」

 

「必要無いわ」

 

「そうだ、凛。ごめんなさいね」

 

 何がだ?

 

「少年、肩を並べて戦う事を楽しみにしているよ」

 

「それはいつ、ですか?」

 

「希望の時間だ。この言葉に意味なんてないよ」

 

「そうですか」

 

 希望の時間?

 

「凛、また出会いましょうね」

 

「少年、またいつか」

 

 そう言い残し、彼女たちは消えてしまった。

 新たなイベント、なのか?

 ……待て、私達はどうやって帰ればいい?

 

「ユウ君」

 

 一旦ユウ君と相談しようと声を掛けたが反応が無い。

 集中して何かを考えているようだ。

 だが、ここは2人で話し合うべきだろう。

 

「ユウ君」

 

 ユウ君の傍により、耳元で呼びかける。

 しかし、反応は無い。

 

「ユウ君!」

 

 体を揺らしつつ、呼びかける。

 

「あ、ゴメンね、リンカさん。大丈夫、ここにいれば問題無いはずだよ」

 

 何を言っているんだ?

 

「イベントの続き、そう考えていても多分だけど問題無いよ」

 

 そう考えいても"問題無い"?

 

「すまないが分からない。説明してくれ」

 

「ゴメン。僕もギリギリなんだ。時間が惜しい」

 

 時間が惜しい?

 何を焦っているんだ?

 これはイベントなのだろう?

 君は私よりもイベントを優先するのか?

 そんな子ではないだろう?

 

 分からない。

 分からないよ。

 

「失敗した。もう少し情報を引き出しておくべきだった。どれなんだ……」

 

 君は何と戦っているんだ?

 

「姉さんに聞くか? いや、これは既に別の道へ進んでいるはずだ。それでも情報が無いよりもマシか?」

 

 別のルート?

 

「いや、無理だ。あれは言えない」

 

 言えない?

 ユウ君が、楓に言えないこと?

 

「ログアウト……はダメか。こちらが早すぎる。それに……」

 

 君は何を心配しているんだい?

 これはゲームなんだろう?

 何をそこまで深刻に悩むことがあるんだい?

 

 <英雄のたまご達よ、済まない>

 

 済まない?

 

「……問題無い、か」

 

 目の前でユウ君がそう呟いた。

 何が問題無いのだろうか?

 

「彼女達は僕達に何を期待しているのだろうね」

 

「期待?」

 

「そう、期待。終わりに得られたのは次への期待?」

 

 まったく意味が分からない。

 終わり、とはこのゲームが終わるという事だろうか?

 何故、終わる必要があるのだろうか?

 

「まあ、僕もよく分からないよ」

 

「私にはまったく分からないがね」

 

「持っている情報の差、かな」

 

 情報の差、か。

 ユウ君、君は一体何を知っているんだい?

 

「全体の情報量では無く、鍵となる情報。その僅か一部を僕がたまたま知っていた。その差だよ」

 

 鍵となる情報?

 それにユウ君が持っているのは僅か?

 

「何が起こるんだろうね。ゲームの終了、であれば問題無いのだけどね」

 

「それ以外にどんな終わりがあると言うんだい? 現実の世界が崩壊するとでも言うのかい?」

 

「それは無いだろうね。次は予想されていたのだから」

 

 次が予想されていた?

 あの2人の言葉だろうか?

 

「確かにあの2人はそう言っていたね」

 

「……どういう事だ? あれの予想が間違っている、そうなのだろうか?」

 

 あれ?

 やはり分からない。

 

「ああ、ごめんね。少し焦っていたのかもしれない。その時まで少し話でもしていようか」

 

 焦る?

 あれで焦っているのか?

 

「私は構わないが、何を話すんだい?」

 

「確かに、特に無いね。何か聞きたい事はある?」

 

「とりあえず、あの2人が去ってからの説明お願いしたい」

 

「ああ。僕の勇者に危険が迫っている可能性。それだけの事だよ。まあ問題なさそうだけどね」

 

「君の勇者?」

 

「そう。ただの女の子だった僕の勇者」

 

「先程も言っていたね。そうか、君には勇者がいるのか」

 

「勇者にも勇者はいるけどね」

 

「勇者の勇者かい? それは――」

 

 

 

 **********

 

 

 

「優君~。面白そうな物が届いたよ」

 

「面白そうな物?」

 

「国からの手紙で、最新型VRMMOゲームの体験イベントへの招待状だって」

 

「それは確かに面白そうだね。でも何故、僕達?」

 

「全国から一定条件を満たす人の中からランダムで選ばれたらしいよ。参加する?」

 

「勿論。ちなみにどんなゲーム?」

 

「剣と魔法のファンタジー、かな。ゲーム名はベアリアスワールド・オンラインだって」

 

「それは楽しそうだね。日時は?」

 

「4週間後の日曜日。問題無いね」

 

「4週間後?」

 

「どうしたの? 予定でもあった?」

 

「いや、何か引っかかったんだけど、予定は無かったから気のせいだよ」

 

「優君は結構抜けてるところがあるからね~」

 

「自覚しているよ」

 

「ふふ。それじゃあ参加申請しておくね。楽しみだね~」

 

「ありがとう。僕も楽しみだよ」

長い期間、ご覧頂きありがとうございました。このタイトルはここで一旦区切り、別タイトルへと突入します。

解決していない内容や伏線もそちらのタイトルで(きっと)解決しますので、ご覧頂ければ嬉しいです。


タイトルの移動について手間をお掛けして申し訳ないとは思いましたが、おそらくジャンルが別物に近くなっていることと、主人公やヒロインの関係上、区切るべきだと判断しました。ご容赦頂ければと思います。


・異世界交流はゲームの中で ~イナバの航海日誌・2冊目~

https://ncode.syosetu.com/n1995ek/


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