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200―ダンジョンB7―

 **********

 

 

 

 突然、ユウ君がアリサさんを投げ飛ばした。

 私が触れる事さえできない、彼女を。

 だが彼女は受け身を取り、すぐに立ち上がる。

 

「少年、どういうつもりですか?」

 

「貴方の考えは間違っています。止めてください」

 

 間違っている?

 何が間違っていると言うのだろうか?

 

「何も知らない少年が、何故間違っていると断言できるのですか?」

 

「貴方の目的は予想できました。隠している理由も分かります。ですが、その先にあるのが僕にとって最悪に近い出来事です。止めないのならば無理やり止めます」

 

 最悪に近い?

 

「最悪? 私の目的を予想できていないようですね。それとも、その目的を達成されることが君にとって最悪の状況なのですか?」

 

「達成できれば、僕にとっては嬉しい事ですよ。まあ最善ではありませんけどね。ただ、貴方の方法では真逆に進みますよ?」

 

 達成できればユウ君にとっても嬉しい?

 それでも、最善ではない?

 2人は何を言っているんだ?

 目的は一致しているようだが、手段の先に見えるものが違うのか?

 

「真逆? 凛はそんなに弱くありませんよ?」

 

「目の前のリンカさんを見ろ、そう言っているのですが?」

 

「どうやら君は凛を良く知らないらしいですね」

 

「貴方よりは知っていますよ。それに、僕が基準にしているのは最もリンカさんを知っている人だ。その人が貴方の方法を思いついていながら実行していない。ならばその先に望みは待っていない」

 

 最も知っている人?

 楓、か?

 ……私は何故、楓だと思ったんだ?

 親では無く、数年前に知り合った親友を?

 

「凛が最高の一戦と捉えた勝負を実現させた私よりも、貴方の方が凛をよく知っているというのですか? あり得ないですね」

 

 最高の一戦?

 手合せをしたのはこの前が初めてのはずだが……。

 

「だからダメなのですよ。その視点でしか見えていない貴方が、数多の視点から見ているあの人を超えられるはずがない。それに貴方の見ている人物は、本当に目の前のリンカさんなのですか?」

 

 そう言い、ユウ君は少し横に避けた。

 アリサさんと視線が合い、その瞳が私を射抜く。

 ……やはり私には分からない。

 

「……間違いありません。確かに凛です」

 

「何故、その答えに違和感を持っているのですか? いえ、まあそれは置いておきましょう」

 

「違和感? そんなものは持っていませんが?」

 

「やはり貴方は目の前の少女を見ていない。確信しました」

 

「何故、そう言い切れるのですか?」

 

「それでは言ってみてください。リンカさんは何故、それを達成しようとしているのですか?」

 

 達成?

 アリサさんは私が達成したい事を、手伝ってくれているのか?

 そしてユウ君はその方法では達成できず、逆の方向へ進むと考えている?

 

「それは勿論……」

 

「言えないでしょう? そんな貴方がリンカさんを知っている? 何の冗談ですか?」

 

 いや、君は知っているのか?

 楓から聞いている。

 その可能性もあるが、楓はユウ君に私の現実での事はほとんど話していないと言っていた。

 それならばゲーム内でのことか?

 アリサさんと勝負する事で達成できること?

 やはり分からない。

 

「分かりました、少年。私は戦う事でしか人を理解できない。さあ、語りましょう」

 

「僕にはそうは思えませんけどね。貴方は戦うこと以外、例えば語る事やともに過ごす事でも人を理解できる、そう思います。まあ貴方がそれで納得するのならば受けましょう。リンカさん、その刀を貸してくれないかな?」

 

 刀を、貸す?

 碧に作ってもらったこの刀を?

 ……ユウ君ならば問題無いか。

 それに私の為に戦ってくれるのだから、私も少しは我慢しよう。

 

「君は刀を扱えたのかい?」

 

「問題ないよ。リンカさん程では無いけどね」

 

 私ほども扱えないのに、私が手も足も出なかった彼女に刀で挑む?

 使い慣れた魔法銃の方が良くないのだろうか?

 まあ、ユウ君がその辺りを考えていないとは思えない。

 

「分かった」

 

 刀を鞘に納め、ユウ君に向けて投げる。

 それを見事に掴み取るユウ君。

 

「ありがとう。この刀でなければダメなんだ。ミドリさんが鍛えたこの刀。多分これが正解だから」

 

 碧が鍛えた刀でなければならない?

 分からない。

 確かに良い刀だが、そこに何があるのだろうか?

 

「それと壊さないから安心してね。まあ多少、消耗はするだろうけど」

 

「大丈夫だ。壊してしまっても、碧がまた鍛えてくれるさ。それよりも全力で頼むよ」

 

「ありがとう。でも、壊すつもりは無い。さあ、お待たせしました。語り合いましょうか?」

 

「少し驚きました。凛が自分の刀を人に使わせるとは。それも壊してもいい? 考えられません。少年はそれ程の腕前なのですか?」

 

「僕は刀を使うのは初めてですよ。それでは、行きますね」

 

 そう言い、ユウ君は刀に手を掛けてアリサさんへ近づいていく。

 その速度は速くない。

 そして刀を使うのが初めて?

 本当に大丈夫なのだろうか?

 まあいざとなれば、私も加勢しよう。

 

「初めてとは舐められたものですね。こちらも行きますよ」

 

 そう言い、アリサさんはユウ君に向かって素早い突きを繰り出す。

 やはり速い。

 ……何故、当たっていない?

 

「やりますね、少年。やはり手加減は無用でしたか」

 

「全力で語ってくださいね? 現実よりも動き難いその体なのですから、それくらいはお願いしますよ」

 

 ……現実よりも動き難い?

 何を言っているんだ?

 この世界の体が現実よりも動き難いはずがないだろう?

 

「知っていましたか。まあ少年達と同条件で参加していますからね、仕方ありませんよ。それでは全力で語りましょう」

 

 現実よりも動き難い!?

 それに私達と同条件だって!?

 私は、その体に手も足も出ないのか。

 

 アリサさんがユウ君に向けて、連続で突きを放つ。

 その鋭さは先程とは比べ物にならない。

 しかし、その全てが当たらない。

 

「よく避けますね。ですが回避だけでは勝てませんよ?」

 

 私では避けられない、あの攻撃。

 ユウ君は余裕で避けている。

 あの時アリサさんが言っていた、私がユウ君に敵わない。

 あれは煽りでは無く、事実。

 

 アリサさんが盾も攻撃に使い、ユウ君へと連続で攻撃を仕掛けている。

 盾での突撃。

 そこから避ける方向を先読みしたような鋭い突き。

 さらに体当たり。

 しかし、その全てがぎりぎり、ユウ君に当たらない。

 掠りもしない。

 

「やはり君は今の凛よりも強い。ですが、私は納得できていませんよ? 私に全力で語らせるのですから、貴方も全力で語ってもらわないと困りますね。それとも、攻撃する余力はありませんか?」

 

 アリサさんがさらに攻勢を強める。

 だが、空を切るランス、盾、体。

キリの良い話数では別視点になる不思議。

ですが、私としては対人戦が書けて満足した話でした。

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