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196―ダンジョンB3―

 同じ並び順のまま、ダンジョンへ向けて歩いている。

 前4人は先程のことを話題にして盛り上がっているようだ。

 普通のパーティならば警戒不足と思ってしまうが、リンカさんがいる以上それは無い。

 まあ魔物は出ないだろうけどね。

 

「ユウ君、最後の答え」

 

 何故前の集団に混ざらないかと思っていたら、これがあったか。

 アオさんは本当に強敵だ。

 さて、アオさんだけは真剣に質問してくれたので真剣に答えを返そう。

 まあ求められている答えではないけどね。

 

「そうだね……温かそうな手をしているアオさんならば寒い時には繋ぎたくなってしまうのではないかな?」

 

「……難しい」

 

「逆に凍えた手をしている時も、握ってしまうのだろうね」

 

「分からない」

 

 姉さんかマイさんならば分かるだろうね。

 2人とも経験しているのだから。

 そしてこれは分からない方が良い言葉だ。

 

「ユウ君、会った事ある?」

 

 それにしても、フウさんやアーネさん、リンカさんはアオさんのこの会話についていけるのだろうか?

 マイさんですら難しい気がする。

 

「このゲーム以外で、という意味でなら無いよ」

 

「2回目以降、少し違う感じがした」

 

 あれを分かるのか。

 才能、と言うよりもよく見られていた?

 

「どこかで覗いていたのかもね」

 

「そんな事しない」

 

「水着の美少女相手だったからね」

 

「違う」

 

「似ていたからね」

 

 似ていた、は少し違うかな。

 一致した、が正しいのかもね。

 

「自分と?」

 

「過去の他人だよ」

 

「分からない」

 

「10回ジャンケンしてアオさんが5回以上勝てば教えてあげるよ?」

 

「する」

 

 

 

「1回も勝てない」

 

「アオさんは素直だから難しいと思うよ?」

 

 それにしても、10セットもする事ないと思う。

 100連勝しちゃったよ。

 

「自分で考える」

 

「暇つぶし程度に考えてね」

 

「あり得ない事?」

 

 すぐにその発想に至れるのが凄いな。

 まああり得てるから違うと言えば違うのだけどね。

 

「2人とも、ダンジョンが見えてきたよ~!」

 

 姉さんのその声に遠くを眺めると、確かに何か建物が見える。

 今回は草に隠れてはいないのだね。

 

「一度来たことがあるの?」

 

「帰って来た」

 

 場所の確認だけはしていたのか。

 そして準備の為に、一度村に帰ったところで転移を試したところ、たまたま僕達のところへ転移できたので合流した。

 と言う建前かな?

 まあ一度ダンジョンに入ってしまえば長期間出られない可能性もある。

 その間に僕達もダンジョンに入ってしまえば、僕達との合流が難しくなるからね。

 

「そうだったのだね」

 

「メルは狙っていた?」

 

「そうだよ」

 

「丁度良かった」

 

「そうだね。僕としても皆とゆっくり話す機会が出来て良かったよ」

 

 おかげで少し分かったからね。

 

「うん」

 

 

 

 遠くに見えていた建物へ到着してみると、そこは壁のある神殿のような建物であった。

 入り口は1つ。

 そして内部の中央には大きな魔方陣が存在していた。

 それ以外は何もない。

 

 <冒険者達よ、新たな力を望むのならばその魔方陣へと乗りなさい。修練の間を与えましょう>

 

 修練の間か。

 新たな力と言っているから、新しいスキルかな?

 それとも他の何か?

 まあ乗ってみれば分かるか。

 

「ユウ君、手」

 

「ありがとう」

 

 アオさんの差し出された手を握る。

 レギオンを組んでいるとはいえ、違う場所に転移される可能性はある。

 まあ違う場所に転移される仕掛けならば、手をつないだからと言っても違う場所に転移される可能性の方が高いだろう。

 それでも同じ場所に転移できる確率は高い方がいい。

 なので姉さんと手を繋いでおこうかと考えていたのだけど、アオさんが提案してくれたのならばそちらでいい。

 

「ユウ君はアオちゃんを選ぶのだね?」

 

「リンカちゃん、大丈夫です。私達がいます」

 

「リンカさんは姉さんのものだから。僕には選べなかった……」

 

「……ユウ君? 君は何を言っているんだい?」

 

 ああ、リンカさんの笑顔が怖い。

 だが姉さんはこちらの味方だ。

 

「そうだよ。リンカちゃんは私のもの~」

 

 そう言い姉さんがリンカさんに抱き付く。

 

「メルまで……」

 

 

 

 茶番も終わり、魔方陣の上へと進む。

 そして全員が魔方陣の上に乗ると、魔方陣が輝きだした。

 

 <冒険者達よ、無事に乗り切ってくださいね。期待していますよ>

 

 その言葉が終わると、視界が変わった。

 

 

 

 そこは暗闇で満たされていた。

 周囲には何も見えない、何も聞こえない。

 そして気配も感じ取れない。

 そこでメニューを開こうとしてみたが、開けない。

 ……従魔達は強制送還された可能性が高いな。

 ならばとりあえず、召喚を試してみよう。

 

「召喚、イナバ、幸運の兎」

 

 しかし、詠唱は始まらない。

 さて、右手に持っていたはずの魔法銃もないので魔法銃の技能は試せない。

 

「射止め歌」

 

 こちらも歌が開始されない。

 他に試す方法は無いので、今はスキル及び技能は使用できないと考えよう。

 

 次に自分の体を触って確認してみる。

 マジックポーチが無い。

 それに服装も初期装備に思える。

 

 ふむ。

 とりあえず一方向へ進んでみようかな。

 目指すのは姉さん達との合流か、あるいはダンジョンのクリア。

 修練の間なので1人でクリアしないといけない可能性もあるからね。

 

 手を前に突き出し、掌を前方へ向けて歩き出す。

 何かあった場合にぶつかりたくは無いからね。

 先の地面が無い場合が微妙だけど、まあそこは頑張ろう。

 

 

 

 う~ん……先程から結構な時間あるいていると思うのだけど、何も無い。

 壁や落とし穴どころか、何か見える場所や何か聞こえる場所、気配を感じる場所すらない。

 そしてここでログアウトが出来ないのか。

 まあ助けを求めればログアウトさせてくれる可能性もあるのだろうけど……もしかしてふるいにかけられている?

 修練なのだから厳しいのは問題無いのだけど、ログアウトを選択するとそこでイベントは終了だ。

 この程度で諦めるならば、先に進むべきではない。

 そうなのかもしれない。

 ウルフリーダーの使っていた遠吠え、あれは恐怖の感情を強制的に引き出すものだ。

 そして今回はまず、孤独の恐怖を越えなければいけない可能性がある。

 ……考え過ぎか。

 

 それよりもここのクリア方法を考えよう。

 ここは修練の間であり、新たな力を望むものだけが来るべき場所。

 つまり何かを得る必要がある。

 そして何かを得て、それがこのダンジョンで得るべきものならばクリアとなるのだろう。

 五感全てが使えないこの場所で何を得るのだろうか?

 いや、自分以外の音が存在しないだけで音は聞こえるし、地面以外の触れるものが無いだけで感触はある。

 そして匂いに関しても自分の匂いはするし、味覚に関しても自分の味は感じられる。

 なので視覚に関しては光が存在していないから見えないだけで、光さえあれば見えるのだろう。

 

 ……出口を探せばいいのか。

 何か、出口へ繋がるヒントをこの空間から探し出し、それを見つけて出口から出る。

 そうすれば何かを感じ取ることができる?

 ただ、結構な時間あるいても何も感じ取れなかった。

 ならば僕の見落としか、運に任せて歩き回るしかないか、たまたま遭遇できなかったか……五感以外の何かが必要か。

 そう言えばこの世界は魔力があるのだったね。

 そしてログレスは魔力を感知できると。

 

 いいね、それがいい。

 魔力を感じ取れるようになればいいのか。

 以前から欲しかった感知能力なので、目指すのは悪くないだろう。

 そしてこのゲームでは、何か条件さえ満たせればスキルを取得可能になる事は確認できている。

 さらにスキルを装備しなくても技能自体は実行できるスキルが存在している。

 

 最後の一押しとして、剣の技能であるスラッシュはスキル無しでも使えるのに、風魔法のウィンドアローがスキル無しで使えないのだろうか、と言う事だ。

 一度だけ、ウィンドアローの詠唱をスキル無しで行ったことがあるのだけど、発動しなかった。

 僕が間違えていただけならば、それは問題無い。

 だが、詠唱が合っていたとしたら?

 他に何かの要素が足りないのだろう。

 例えば魔力操作し、放出するとかね。

 

 まあ違っていればその時考えればいい。

 それにたまには精神修行も悪くない。

 という事で座禅です。

 まあやり方は適当なのだけどね。

 どれがいいかな~……これにしよう。

 座禅じゃない気がするけどまあいいか。

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