190―ユウの世界1―
台所の奥にあるダンジョンの外と書いてあるプレートが掛かったドアを通り抜けると、先程までいたダンジョンの入り口である魔方陣の傍へと移動した。
周囲に魔物はいない。
その内、出現するのだろうか?
そして腰を見てみると、ダンジョン内で使用していたマジックポーチが消えている。
そこで元から持っていたマジックポーチの中身を確認すると、消えたマジックポーチに入っていたアイテムも入っていた。
どうやら自動的に移動してもらえるようだ。
さて、村へと移動しよう。
ルビーに案内をしてもらい、町の入り口へと到達した。
門の外から見える限りでは人が少ない。
<ダンジョン1のクリアのおめでとうございます>
門を潜り抜けた瞬間、頭の中に声が響いた。
<クリア特典として村の中心にある神殿からの転移権とダンジョン2への挑戦権が付与されます。まず転移権についてご説明します。使用方法は神殿内で転移と唱える事。転移先はフレンド登録しているプレイヤーがいるイベントエリアかダンジョン1内部の住居エリアとなります。ただしイベントエリア転移はそのイベントエリアで1人でもダンジョン1をクリアしている必要があり、さらに5日に1度しか使用できません。そしてダンジョン転移はパーティ、レギオンメンバーが全員同等の転移権が付与されている必要がありますのでご注意ください>
転移便利ですね。
ダンジョンはあまり遠くは無いが、移動時間を短縮できるのならばありがたい。
そしてイベントエリア転移。
姉さん達が来ている気がするよ!
まあこれを考えるのは後だ。
<次にダンジョン2への挑戦権についてご説明します。先程、村の近くに存在するダンジョン2の結界を解除しました。挑戦権はそのダンジョンに入る資格となります。これで特典の説明を終了します>
ダンジョン2か。
気にはなるけど、とりあえずは世界の種からだね。
<冒険者の皆様に朗報です。条件が満たされた為、村の機能が追加されて以前のメニューの一部が常時使用可能となりました。ただしステータス上昇及び、スキルの取得と設定につきましては最初に配布したクリスタルを使用しない限り特別な場所以外では行えないのでご注意ください>
おお、以前のメニューが少し解放か。
これは確認しておこう。
メニューを確認したところ、どうやらベースは新しいメニューであり、そこに以前のメニューが追加された様だ。
そして説明であったステータスの上昇、スキルの取得と設定以外ではフレンドチャットの一部とログが使用不可になっていた。
ログはその機能自体が存在しないし、フレンドチャットはマイさん以外の相手が灰色になり、選択できない。
フレンドチャットは相手が違うイベントエリアにいる為に使えないのだと思うけど、何故ログが使えないのだろうか?
……そう言えばログに変な内容が表示されたことが1度だけあったね。
そうなると……いや、まだ確定は出来ないか。
まあイベントが進めば分かるだろう。
彼女はその可能性を示していたのだから。
「ユウ、確認は終わったかな?」
「終わったよ。待たせてしまってごめんね」
「いや、私も今終わったところだよ。ところでユウ、君はイベントエリアを移動するのかな?」
「30日目まではする予定が無いし、それすらもする必要が無いと思う。マイさんは?」
マイさんに依頼をするのだから少なくとも依頼が完了するまではこのイベントエリアにいる必要がある。
だが、もし30日目までに姉さんと同じイベントエリアにいなければ一旦姉さんのイベントエリアに移動してくるつもりだ。
例え60日でも大丈夫だとは思うが、一応ね。
まあ30日目までに姉さんがこちらに来る可能性がとても高いので移動する必要は無くなると思うけど。
そしてこれはマイさんにした依頼よりも優先されるが、一旦移動して5日程したら戻ってくる予定でいるので問題は無いだろう。
「私はユウの依頼を完了するまでは移動しないよ。完了した後は……レンちゃんを迎えに行ってこようと思う」
確かに心配になるのは分かる。
「その時は可能であれば僕も手伝うよ」
その時が来れば、だけどね。
レンさんならば自分からマイさんの元へ転移してきそうな気がする。
そして森エリア1を単独でクリア可能なのだから、ダンジョン内の情報さえ広まればパーティに参加するのも問題無い。
なのでパーティ次第ではすぐにダンジョンをクリアできる可能性もある。
「ありがとう。それでは家に移動しようか」
「うん」
マイさんの後を追い、先程潜った門の左側に位置する家へと移動を開始する。
家の2階、廊下の端にあるドアの前に移動した。
説明通りならば、ここで世界接続を使用すれば先程覚醒した世界に繋がるはずだ。
「世界接続」
そう唱えるとドアが少し黒く輝き、その光はすぐに消えた。
MPは移動中に自然回復してもので足りるか少し不安だったが、発動は出来たようだ。
ドアノブを握り、回す。
すると以前とは違い、回すことができた。
そしてドアノブを手前に引き、ドアを開ける。
ドアの先は親方の工房と同じく暗闇になっている。
「ユウ、そちらはどうかな? こちらは大丈夫みたいだけど」
「こちらも大丈夫みたいだよ」
そう言えばここは本人以外入れないのだろうか?
親方のところと同じであれば設定すれば入れるようだけど、最初はどうなっているのだろうか?
「ユウ、そちらに一緒に入ってみてもいいかな? 一応確認しておきたい」
「いいよ。丁度僕も気になっていたんだ」
マイさんがこちらに移動してきて、僕の後ろに立った。
まずは僕が手を暗闇へと入れると、問題無く入った。
次にそのままの状態でマイさんが暗闇へと手を入れようとするが、暗闇の直前でその手は止まった。
どうやらダメみたいだね。
「やはり最初は本人以外入れないみたいだね。ユウ、一旦ここで分かれてお互いの確認をしてこようか」
「そうだね。待ち合わせは1時間後くらいに村中央の神殿でいいかな? 勿論、内部で何かあり時間が掛かりそうならば無理に1時間後に集まる必要は無いけどね」
「うん、私もそれでいいよ。それではユウ、また後で」
「また後で」
マイさんが自分のドアの前に言ったのを確認し、暗闇へと一歩踏み込む。
ドアを完全に潜り抜けると、そこは石造りの部屋であった。
部屋の大きさは狭くも無く広くも無い。
しかし、部屋の中央に黒い半透明の大きなクリスタルが浮かんでいる。
明らかに何かありますよね。
そして従魔達が見当たらない。
メニューを開いて確認したところ、パーティに存在していないので強制的に送還されたのだろう。
<マスター。そのクリスタルに触れてほしい。それでこの世界に主と認められる>
突然、頭に声が響いてきた。
その声はイベントの最初に聞いたものだ。
「イベント初日以来だね。今回は君が説明してくれるの?」
<やはり貴方は気づくのですね。他の声も似ていたでしょうに>
「話し方が違うからね。気付いている人は結構多いと思うよ?」
姉さんとマイさん、それとアーネさんはすぐに気づくだろう。
リンカさんは少し迷ってから気づくかな。
<そうなのですか? では無くて、とりあえずクリスタルに触れてください>
「うん」
クリスタルのすぐ近くまで移動し、右手で慎重にクリスタルへと触れる。
するとそのクリスタルから黒い粒子が溢れ出てきて、それが治まるとそこには透明なクリスタルが存在していた。
<これで世界は完全に覚醒しました。この世界の主は貴方です。次に世界システムの使い方を説明したいと思いますが構いませんか?>
世界の主になりました!
やったね!
「うん、お願いするよ」