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188/202

188―ダンジョン-28―

 目の前には大きな灰色の狼。

 しかし、動く様子は無い。

 あちらが動かないのならば飛んで避けるのは危険だ。

 そこを狙われると避ける事が難しい。

 

 数秒、睨み合っているが動きは無い。

 ならば有効活用させてもらおう。

 大きく息を吸い込み、空へと向かって叫ぶ。

 

「ルビー!」

 

 そしてすぐ、しゃがんだ。

 頭上を何かが通り過ぎるのを感じ、後ろに魔法銃を撃つ。

 すぐに立ち上がって左に飛んだボスウルフへ魔法銃を撃つ。

 それと同時に前方へと飛び、すぐに振り向く。

 

 振り向くと、丁度ボスウルフがこちらへ向き直っている途中であった。

 

「チャージ」

 

 AIはあまり変わってないようだ。

 優秀なAIで助かった。

 そして音も十分に聞こえる。

 これならば、ボスウルフが見えない位置にいても飛んだ方向程度なら分かる。

 1人だからこそ、これができる。

 

 こちらを向いたボスウルフは再度動かなくなった。

 多分こちらの隙を窺っているのだろう。

 どうやら1対1の場合は隙を窺う傾向にあるのかもしれない。

 リンカさんの場合は大きな弱点があるので、そこを隙として狙っていたのであればこの可能性は高いだろう。

 これはありがたい。

 

 十数秒後、上空にルビーの鳴き声が響いた。

 その直後、ボスウルフの少し右へ魔法銃を撃つ。

 それを左に避けたボスウルフの目の前をルビーが通り過ぎる。

 その瞬間、ボスウルフのHPバーが5パーセント程減った。

 これは予定通り。

 あとは僕がルビーに合わせればいい。

 

 ルビーの攻撃にバランスを崩し掛けたボスウルフだが、上手く着地した。

 着地したボスウルフの左目へ向けて魔法銃を撃つ。

 

「チャージ」

 

 ボスウルフはそれを避けようとせず、何かを探すかのように目を瞑った。

 弾はボスウルフの左瞼に当たったが、チャージされていない魔法銃ではダメージを期待できない。

 すぐにボスウルフへと向けて移動を開始する。

 今のボスウルフは僕を脅威とは思っていない。

 だからこその隙。

 

 ボスウルフの目の前に移動し、その顎を左足で蹴り上げる。

 そしてすぐにやや左前方へと魔法銃を撃つ。

 ボスウルフは未知の攻撃を警戒したのか右後ろへと飛び下がったが、そこには魔法銃の弾が存在している。

 弾はボスウルフの額へと当たるがダメージは確認できないレベルだ。

 チャージ時間が短すぎたか。

 

「チャージ」

 

 ボスウルフを追いかけるように、前方へと飛ぶ。

 その行動に対してボスウルフはこちらに飛び掛かろうとしたが、その目の前をルビーが左に抜けた。

 そして今度はバランスを崩し、僕の左側を通過していく。

 着地後、すぐに後ろを向くとボスウルフは立ち上がる直前でだったので急いで近づいたが、ボスウルフは僕から距離を取る様に前方へと飛んだ。

 

 ボスウルフのHPは残り8割後半。

 この調子でいけば大丈夫。

 集中し続けることもできるだろう。

 

 ボスウルフは着地したところで僕の方へを向いた。

 その目は開かれている。

 どうやら僕も厄介な相手だと認識させることができたようだ。

 

 ボスウルフはこちらを見つめたまま動かない。

 数秒後、突然後ろに飛んだと思ったらルビーが先程までボスウルフの頭があった位置を通り過ぎて行った。

 目で僕を、それ以外の方法でルビーを感知しているのかな。

 それならば動き難いだろう今の内に識別をしておこう。

 先程は少しでも気を抜くと危なくてできなかったからね。

 

 <魔物>ウルフリーダー Lv31

 状態:交戦

 

 レベル31か。

 あれ?

 いや、これが祝福か。

 それにしてもリーダーか。

 これは周囲のウルフを全滅させるのは良くなかったかもしれないな。

 まあ今回はウルフリーダーを倒すまでは全滅させる事が出来ないので問題は無いか。

 

 十数秒後、ウルフリーダーの右後ろ脚に向けて魔法銃を撃つ。

 そしてすぐに前方へと走り出す。

 

「チャージ」

 

 良くチャージされたその弾をウルフリーダーは右後ろに飛ぶことで避けようとしたが、その頭上をルビーが通り過ぎた。

 HPバーは残り8割と少し。

 ウルフリーダーはルビーの攻撃を受け、バランスを崩したのか着地を失敗して地面を転がる。

 そしてこちらに背中を向け、右側を向いて倒れた状態で止まった。

 これは好機。

 

 少し近づいたところでウルフリーダーの頭に向けて魔法銃を撃つ。

 そしてすぐにウルフリーダーの背中へ向けて飛ぶ。

 ウルフリーダーは顔を背けて弾を回避したが、その代わりに僕はウルフリーダーの背中に乗る事が出来た。

 

「チャージ」

 

 ウルフリーダーは僕を乗せたまま立ち上がり、体を大きく揺らした。

 そして左右前後に大きく、速く飛び回り始めた。

 それを背中にしがみついて耐える。

 

 10秒程経過した時、ウルフリーダーの前方、少し離れた位置に木が見える状態でウルフリーダーが飛び上がる直前を狙ってその背中から飛び降りる。

 それと同時にその木とウルフリーダーの間に魔法銃を向けた。

 その直後、前方へと飛んだウルフリーダーが視界へ映り、予想していたその着地点へと魔法銃を放つ。

 魔法銃を放った直後、お尻に衝撃が走るが着地は諦めていたから仕方ない。

 すぐに立ち上がり、ウルフリーダーの方を確認するとウルフリーダーは木の幹に横たわっていた。

 その頭上をルビーが通り過ぎる。

 

「チャージ」

 

 ウルフリーダーはまだ動かない。

 いや、動けないのだろう。

 狙ったのは着地する直前の右前脚。

 そして上手く当たった様なのでウルフリーダーは着地を失敗し、木へと突っ込んでいったはずだ。

 ウルフリーダーに見えるように、魔法銃を構える。

 しかし撃つことはしない。

 これは僕に注意を向ける為の行動なのだから。

 今しているチャージは別のタイミングで撃つためのもの。

 

 ウルフリーダーはまだ動けず、今ルビーから3回目の攻撃を受けた。

 そのまま4回目の攻撃も可能かと思ったが、ウルフリーダーは攻撃を受けた数秒後、立ち上がり始めた。

 それを確認し、ウルフリーダーへと近づく。

 

 立ち上がる直前、4回目の攻撃を後頭部に受けていたがウルフリーダーは立ち上がり、こちらを向いている。

 HPバーは残り4割。

 これは少し賭けでもある。

 それでも、成功すれば大ダメージを与えられる。

 

 ウルフリーダーは大地を踏みしめ、天を仰いだ。

 むき出しになったその喉に向けて、十分にチャージした魔法銃を放つ。

 

 ウルフリーダーの口から方向が出始めた瞬間、弾が喉へと当たり咆哮はは中断された。

 さらに上空から急降下してきたルビーが開けられた口の真横を通り過ぎて行く。

 これで残りHPは1割を切った。

 

「ログレス!」

 

 姿見えないログレスの名を叫ぶ。

 目の前のウルフリーダーは再度、大地を踏みしめて天を仰いだ。

 そして、その口から放たれた咆哮が森を駆け抜け――ウルフリーダーの体が左側へ吹き飛んだ。

 恐怖を堪え、ウルフリーダーが吹き飛んだ方向を確認すると、そこにはHPバーが空になったウルフリーダーが倒れていた。

 直後、森が暗闇に包まれる。

 しかし、耳を澄ましてもウルフリーダーが動く気配は感じ取れない。

 慎重に、ウルフリーダーが倒れていた位置へと近づく。

 そしてその姿を確認し、マジックポーチから剥ぎ取りナイフを取り出して突き刺す。

 ウルフリーダーの体は光の粒子となり、空中へと消えていった。

 

 <冒険者達よ、ありがとうございます。おかげで力が戻り、このエリアを元に戻す事が出来ました>

 

 光の粒子が完全に消えたところで、頭の中にそんな声が響いてきた。

 どうやら無事に倒せたようだ。

 まだ恐怖が消えない。

 しかし、空は暗闇から青空へと戻りつつある。

 まるで夜明けの様だ。

 

 <エリアが元に戻った事で今後このダンジョンにダンジョン外のアイテムを無制限に持ち込むことが出来るようになり、森には以前の様に強力な魔物も出現するでしょう>

 

 そう言えばラッキーラビットやゲイルウルフは見ていなかったね。

 

 <さらに先程移動に使用した魔方陣からとても強力な魔物に挑戦する事ができます>

 

 ……新たなダンジョンやイベントが何も無かったら来るのもいいかな。

 もう一度倒せるかは分からないけどね。

 

 <それでは魔方陣の場所へとお送りします>

 

 景色が変わる直前、空はすっかり元通りになり森を太陽の光が照らしていたのが見えた。

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