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187/202

187―ダンジョン-27―

 扉を完全に潜り抜けると、目の前には一軒の家が見えた。

 すぐに周囲を確認したところ魔物はおらず、後ろに扉は無い。

 そして従魔達とマイさんはすぐ近くにいる。

 これは予想通りなのかな?。

 

 <冒険者達よ、頼みがあります>

 

 はい。

 

 <貴方達が作成した良きアイテムを捧げてもらいたい。そうすれば私は力を取り戻し、このエリアを元に戻すことができるのです>

 

 どうやら予想通りだったようだ。

 まあ最後まで同じとは限らないけどね。

 

 <依頼を受けて頂けるのならばそこにある家を自由に使っていただいて構いません。家の中にはアイテムの作成に必要な設備が備えられています>

 

 そう言えばこの設備って結構良い物なのかな?

 まあ見ても分からないのだけどね。

 

 <力を取り戻すのに必要なアイテムの個数は分かりませんが、どうか頼みを聞いてくださいませんか?>

 

「マイさん」

 

 隣にいるマイさんを見つめる。

 この試練のメインはマイさんだ。

 それならば受けるのはマイさんであるべきだ。

 

「分かってる。この試練は私が主役。私が受けるべきだね」

 

 今までの試練で僕が主役だった訳では無く、主役がいなかったので僕が受けていただけだ。

 そして今回は明らかにマイさんが主役。

 僕達が主役になるのは次の試練。

 

「お受けします」

 

 <ありがとう、冒険者達よ。まずはこのエリアで取得した素材でアイテムを1個作成し、捧げてください。アイテムの種類は自由ですが質の悪いものでは力を取り戻せません。捧げる事の出来る場所は家の中に存在しています。冒険者達よ、よろしくお願いします>

 

「ユウ、まずは家を確認しよう」

 

「分かった」

 

 

 

 マイさんの後に続き、家の中へと入る。

 入り口からすぐの部屋は広い部屋で、真ん中には木製のテーブルがある。

 しかし北の試練とは違い、マジックポーチは無い。

 まあ封印はされていないからね。

 それに違うとは言っても採取してきた素材を加工する、そこに変わりは無い。

 

 マイさんが奥にあるドアへと近づき、開けようとするがドアが開くことは無かった。

 

「ユウ、やはりドアは開かないみたいだね。私が鍵を探しておくからユウは南の草原でラビットの肉を取ってきてほしい」

 

「うん、行ってくるね」

 

 

 

 家から出て南へ少しだけ移動した。

 

「イナバ、ラビットを探してほしい」

 

 その言葉にイナバは頷き、駆け始めたのでその後に付いていく。

 

 

 

 草原でラビットの肉を5個個ほど採取し、戻って来た。

 家のドアを開け、中へと入る。

 中ではマイさんが椅子に座って待っていた。

 どうやら鍵を必要分見つけ終えたのだろう。

 

「マイさん、ラビットの肉を取得してきたよ」

 

「お帰り、ユウ。鍵は全て見つけておいたよ。すぐに作成してしまうからユウは寛いでいて」

 

 おや、次の素材は集めなくていいのかな?

 ……そう言えば第2、第3試練の内容は寝ていたので聞いていないのだった。

 そうなると第2試練以降はマジックポーチが封印されていなかったのだろうか?

 まあマイさんの指示通りで問題無いだろう。

 

「分かった。頑張ってね」

 

「ああ」

 

 

 

 <冒険者達よ、ありがとうございます。捧げてもらったアイテムは質が良く、力を一部取り戻す事が出来ました。次はアイテムを5個、作成して捧げてください。ただし、アイテムの種類が先程と同じ系統であるか質が悪いものでは力を取り戻すことができません。冒険者達よ、よろしくお願いします>

 

 おお、ラビットの肉を渡してから数分で完了か。

 既に加工する準備も終わっていたのだろうね。

 

 <冒険者達よ、ありがとうございます。捧げてもらったアイテムは質が良く、力を大きく取り戻す事が出来ました。この調子ならば次のアイテムで力を取り戻すことができるでしょう。それでは最後に、最高の一品を捧げてください。ただし、アイテムの種類が先程の2種類と同じ系統であるか、質が良い物以外では力を取り戻すことができません。冒険者達よ、よろしくお願いします>

 

 数十秒後、完了を告げる言葉が頭に響いた。

 これは事前に用意していたものだろう。

 やはり北の試練でもマジックポーチは封印されていなかったのかな。

 

 <冒険者達よ、ありがとうございます。捧げてもらったアイテムはとても質が良い物でした。おかげで完全に力が戻り、このエリアを元に戻す事が出来ました>

 

 流石マイさん。

 一番得意な繊維系以外でも突破できるのか。

 

 <エリアが元に戻った事で今後このエリアにもダンジョン外のアイテムを持ち込むことができます。そして森には以前の様に強力な魔物も出現するでしょう>

 

 これはレア魔物の出現率が気になるな。

 北の神殿と同じく、レア魔物の出現率が高いのだろうか?

 まあ機会があったら来てみよう。

 

 <さらにアイテムを捧げてもらっていた部屋の入り口のドアを元の場所へと繋がるドアへと変更しました>

 

 これはもう捧げる必要が無いからなのかな。

 まあ外よりは中の方が良いのでありがたい。

 

 <これで安心してこの地から去る事が出来ます。本当にありがとうございました。冒険者達に祝福あれ>

 

「マイさん、お疲れ様。流石だね」

 

「ありがとう、ユウ。このダンジョンで私が主役になれるのはここくらいだからね」

 

「そんな事ないと思うけどね。まあとりあえず、戻ろうか」

 

「うん。案内するよ」

 

「ありがとう」

 

 マイさんが移動を開始したのでその後に付いていく。

 奥のドアを開けるとそこは少し長い廊下であった。

 左右に一定間隔でドアがある事から、これらのドアの先には生産設備があるのだろう。

 そこを奥へと進んでいき、突き当たりのドアの前でマイさんは足を止めた。

 

「ユウ、ここがアイテムを捧げていや部屋だよ。開けるね」

 

 マイさんがドアを開けると、その先は暗闇であった。

 マイさんに続き、その暗闇へと足を踏み入れる。

 暗闇が晴れるとそこはドアが複数ある部屋、安全地帯の中央部屋であった。

 さて、これでクリアと見ていいだろう。

 

「マイさん、この後はどうする?」

 

「この後はユウの部屋で一緒に寛ごうかと思っていたのだけど、ユウは草原エリアに挑戦したいのだろう?」

 

「うん、少し休憩をはさんだ後に挑戦したいと思っている。マイさんが早くクリアしてくれたおかげで時間があるからね」

 

「私もそれに賛成だよ。それじゃあ休憩しようか」

 

「ありがとう」

 

 

 

 部屋です。

 そして何故かマイさんがいます。

 先程の言葉、冗談かと思っていたよ!

 ……いや、冗談で言ったものを本当に置き換えたのかな?

 まあ問題無い。

 

「そう言えばマイさん、2回目と3回目は何を捧げたの?」

 

「2回目が木矢を5本。3回目がポーションだよ」

 

「あの時作っていたポーション?」

 

「うん。ポーション系も苦手では無いからね」

 

 苦手でなければとても良い品質で作成できるのか。

 

「それは凄い。あの条件を満たすのは簡単では無いと思っていたのだけどね」

 

「いや、私もレンちゃんがクリアした時であれば得意な繊維系でしかクリアできなかったと思うよ」

 

 僕もそうかもしれない。

 初めて西の試練でゴーレムを倒した時は苦戦したが、今は余裕で倒せてしまう。

 

「それでも得意分野以外でも満たせるのは凄いと思うよ。これは僕も頑張らないとね」

 

「そうだね。君が突破してくれれば、私も突破できる気がするよ」

 

「大丈夫、例え僕が突破できなくてもマイさんなら浮遊核の加工を成功させられるよ。まあ突破はするけどね」

 

「ふふ。ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 休憩を終え、草原エリアのドアの前に移動した。

 そして、そのドアを開け暗闇へと足を踏み入れる。

 

 目の前には見渡す限りの草原。

 すぐ後ろには床に魔方陣が描かれた壁の無い神殿のような何か。

 そしてさらに先を眺めると遠くに森が見える。

 

 <冒険者達よ、頼みがあります>

 

 突然、頭に声が響く。

 以前来た時は無かった事だ。

 他3か所のクリアがキーになっていたのだろうか?

 

 <このエリアにいる、ある強力な魔物を撃破して頂きたいのです。そうすれば私は力を取り戻し、このエリアを元に戻すことができるのです>

 

 ボスウルフ。

 多分そうなのだろう。

 

 <その魔物は森の中にある魔方陣から転移した先に群れと共にいます。その群れはとても多く、こちらも大人数で挑む事が望ましいです>

 

 少しは慣れた位置にプレイヤーが見える。

 このエリアにいるプレイヤーはあれから増えたのだろうか?

 まあ僕はこのパーティだけで挑む。

 いや、僕達だけで挑む。

 マイさんは基本的に防御に徹してもらうようにお願いしてある。

 

 <周囲の魔物とは比較にならない程に強い魔物で撃破するのは困難だと予想されますが、どうか頼みを聞いてくださいませんか?>

 

「受けます」

 

 今回の主役は僕達。

 なので代表して僕が受ける。

 

 <ありがとうございます。今、魔方陣がある神殿の結界を解きました。これで魔方陣が使用可能となります。私にはこれくらいしかできませんが、どうかよろしくお願いします>

 

 そうか、このイベントが発生するまでは魔方陣がある神殿自体に干渉できないのか。

 どうりで薬草探しの時にそれらしいものを見かけなかったはずだ。

 

「マイさん、行こうか」

 

「うん」

 

 

 

 森に入って少ししたところで、ルビーが神殿を発見してくれた。

 その神殿は石造りの壁の無い神殿。

 北や西の神殿と同じに見える。

 そしてその中央には光り輝く魔方陣が存在している。

 あれに乗ればボスウルフとの戦闘が開始される。

 

「マイさん、説明した通りバラバラの位置に転移する可能性が高いから気を付けてね」

 

「大丈夫。ボスウルフ以外の単体であれば問題無いよ。それにウルフならば複数でも問題無い」

 

「うん。それでは皆、勝とうか」

 

 その言葉に、従魔達は頷いた。

 意気は良し。

 今の布陣はイナバが幸運の白兎、ルビーがアクセラレーションホーク・ウィンド、ログレスがフユウクラゲだ。

 そして作戦は伝えてある。

 あとは僕がどれだけ避けられるかだ。

 避けられさえすれば、先には勝ちが待っている。

 

 一度深呼吸し、マイさんの手を掴まずに魔方陣のへと足を進める。

 今回は同じ場所に転移したら不味い可能性もある。

 僕がボスウルフの前に転移した場合、ボスウルフが同じ場所に転移したマイさんを目標とするのは不味い。

 同様にミーも不味い。

 だからこそその可能性を下げる為に、出来るだけ違う位置へ転移するべきなのだ。

 懸念するべきはマイさんとミーの前にボスウルフが出現する事だが、そこまで対策出来る程僕は強くない。

 だから2人には説明し、承知してもらった。

 

 魔方陣へ最後に一歩を踏み出す前にもう一度深呼吸を行い、最後の一歩を踏み出す。


 <冒険者達へ一度限りの祝福を>

 

 魔方陣に全員が乗った瞬間、頭の中に声が響き、景色が変わった。

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