186―ダンジョン-26―
2体目。
<魔物>メタルゴーレム Lv20
状態:通常
鎧騎士でした。
どうやら条件は西と同じと考えても良いようだ。
そうなるとゴーレム2型を出現させるのに時間が掛かるね。
まあそれは仕方ない。
いや、こちらが成長して楽に倒せるようになっただけなのだから喜ぶべきことだ。
十分に離れて魔歌を開始する。
数十秒後、鎧騎士が地面へと倒れた。
今回も従魔達は攻撃しない。
しかし、ログレスは近づいて鎧騎士がその手に持つ剣と盾を奪い取る。
これで無力化は完了です!
さあ、起きるまで待とう。
鎧騎士が倒れて40秒程経過し、そこで鎧騎士が起き上がり始めた。
そして起き上がった鎧騎士は右手に剣を、左手に盾を再生成し始めるが、数秒後にそれらが完成する事無く地面へと倒れた。
まだ従魔達は攻撃しない。
ここで武器を持っていたならば攻撃を開始するようにお願いしていたが、今は武器を持っていないからね。
それにしても、鎧騎士も2回目の方が効力を発揮するまでが早かった。
もしかして効力を発揮するたびに耐性が下がる?
……いや、よく考えてみたら距離じゃないのかな?
有効範囲を確認しようとした際、懸念していたのは音が聞こえない距離になると効力を発揮しない可能性だ。
離れる程聞こえる音が小さくなる事を考えると、効力が下がっても不思議ではない。
最初に試したラビットで効力を発揮するまでの時間が変わっていなかったので、聞こえさえすれば効力は変わらないと無意識に考えていたのかもしれないな。
この辺り、やはり僕は抜けているよ。
3度目、鎧騎士が起き上がり剣と盾を生成しようとしたが数秒後に地面へと倒れた。
そして従魔達が攻撃を開始する。
3回目からは攻撃をお願いしていたからね。
鎧騎士が4度目に倒れたところで鎧騎士を撃破した。
そしてドロップは上々でした。
今日中に何とか集まるだろうか?
まあそれはゴーレム2型のドロップ次第な気がするよ。
それにしても、魔歌はゴーレムに対してもの凄く有効な事が判明したね。
ウッドゴーレムとウッドパペット、メタルパペットが近くにいたら試しておこう。
休憩後、イナバにウッドゴーレム達を探してもらったところメタルパペットとウッドパペットが近くにいたので魔歌を試しに行った。
その結果、ゴーレムと同じくパペット系も同程度の効果がある事が判明した。
多少差はあったがそれは個体差とレベル差と考えてもいいだろう。
僕は詳しく解析するつもりはないのでこれで問題無い。
さて、あとはウッドゴーレムだけど近くにいないのならば仕方ない。
ボスゴーレムに挑戦しよう。
7回目の挑戦の後、近くにウッドゴーレムを発見したので魔歌を試してきた。
その結果、他のゴーレムと同程度の効果がある事が判明した。
ここまでの結果からゴーレム系には魔歌が効きやすいと考えてもよさそうだ。
そしてゴーレム系に見えた黒騎士に対しても強力な手札が出来たことになる。
勿論このゴーレム達と同程度に効力を発揮するとは考えていないが、有効な可能性は高い。
ログレスが成長させてくれたフユウクラゲに続いて手札が強化されつつある。
だが、これでも勝てる可能性は低いだろう。
もう少し手札を増やさないとね。
日が沈み始めた頃、何とかゴーレムと鎧騎士の魔石が揃った。
それらを空白のカードに充填し、魔物カードを作成する。
そして従魔の書へ登録した。
これで魔物カードに関しては新たなエリアを待つだけだ。
今日中に間に合ってよかったよ。
さて、金属もある事だから今の内に体を作成してもらおう。
「ログレス、ゴーレムと鎧騎士の体を作ってもらってもいいかな?」
その言葉にログレスは、迷う事無くすぐに頷いてくれた。
ログレスを送還し、ゴーレムで召喚する。
そして近くに手持ち全ての金属を置くと、ログレスはその金属の一部を使って以前と同じゴーレムの体を作成した。
次に鎧騎士で再召喚する。
ログレスは先程出した金属の残りの一部を使用し、以前と同じ鎧騎士の体を作成した。
両方とも以前と同じ体。
次に同じ事が起こっても成功させてみせる、そういう事なのだろう。
「ログレス、頑張ってね」
僕もそう思うよ。
夜ご飯の後、色々と用事を済ませて寝ようとしていたところ、ドアがノックされる音が聞こえた。
「どうぞ」
「少しお邪魔するよ。ユウに聞いておきたい事があるんだ」
何だろうか?
北の試練の内容はレンさんを通じて知っているだろうし、ボスウルフに関してだろうか?
そうであればあまり良い情報は持っていない。
僕自身は動きを読めるけど、あれを説明しろと言われても無理だからね。
なので他の情報と言えば掲示板に書かれた事くらいだ。
それを見ていないとは思えないので、マイさんの役に立ちそうな情報は持っていないと言える。
「まあとりあえず座るといいよ」
そう言いちゃぶ台近くの座布団へと座る。
「ありがとう、まあ本当に少しなんだけどね」
そしてマイさんは逆側の座布団へと座った。
「……ユウ、流石に1日以上対処しないで何もペナルティが無いとは思えないんだ」
……言ってなかったかな?
うん、言ってないね。
「ここの外では僕が2時間おきに使用してたよ。あとは寝る前に。それと僕自身で試したんだけど、大体8時間程でペナルティが出ると思う。どんなペナルティかは分からないけど、感覚はあった。まあ食事などの関係性は分からないから参考程度に考えてほしいかな」
「いつの間に……全く気付かなかったよ」
排泄物処理魔法に関する内容。
女の子に言わせる言葉じゃないからね。
僕から言い出すべきだったよ。
色々あって完全に忘れてました。
「楽な戦闘中とか、壁の向こうとかでね。黙って使用していてごめんね」
「いや、気を使ってくれていたんだろう? ありがとう、ユウ」
「どういたしまして。ちなみに用事はそれで合っていたのかな?」
「うん。夜遅くにゴメンね。それではおやすみ」
「おやすみ」
朝ご飯を済ませ、ダンジョン外から持ち込んだアイテムを部屋に置いてきた後に森エリア1のドアの前に集まった。
予想通りだとこのエリアは北の試練と同じでクリアする為には自分で作成したアイテムを認められなければならない。
そしてそうであれば、マイさんの自信のある表情を見る限りすぐ終わる気がするな。
まあ予想通りならだけどね。
「冒険者よ、ここから先は試練の道となっている。進みたければさらなる試練を受ける必要がある」
ドアを潜って少ししたところで、以前と同じく声が聞こえてきた。
「この部屋からの試練は真の現地調達。ダンジョン外から持ち込まれたアイテムを所持して門を潜る事は出来ない。さあ、どうする?」
この先に待っているのが北の試練と同じだとしたら、これをクリアする為には生産職がパーティにいた方が良い。
森エリア2では武器系と魔法系がいた方が良かった。
そして草原エリアでは多くのプレイヤーとそれを指揮出来るプレイヤーがいた方が良い。
海エリアは多分、些細な事に気付ける人がいた方が良い。
どのエリアも必須では無いけど、それらが得意なプレイヤーがいた方がクリアが早まる様に作ってある。
これは多くのプレイヤーが得意分野を活かせるようにだろうか?
それとも、多くのプレイヤーがダンジョンをクリアできるようにだろうか?
まあただの予想なのだけどね。
「試練を受けます」
マイさんが頷いたのを確認して試練を開始する。
「それではユウ、マイパーティの試練を開始する。冒険者達、汝らの健闘を期待する」
その言葉を聞き終え、奥にある扉の前へと移動して扉を押し開ける。
そしてその先に広がる暗闇の中へと一歩、踏み出す。