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181/202

181―ダンジョン-21―

 昼食美味しかったです。

 さて、ここからは今後の予定だ。

 

「さて、ユウ。この後はどうする? 他のエリアに行ってもいいけど、どうせなら朝一番からの方が良いよね?」

 

「うん、僕も朝一番からがいいと思う。今までの2エリアから、一度入るとクリアまでは出られないみたいだから、視界が確保できる時間が長くなる様に朝から探索開始が望ましい。まあ夜限定のイベントがあれば別だけど、今のところそれは無いからね」

 

「そうなると、どうする? ここで寛いでおくかい?」

 

 マイさんはそう言いつつ笑っている。

 半日程度なら寛いでも問題は無いと思うけどその間、従魔達は戦闘に行くだろう。

 そうなれば僕もついていくだろう。

 なのでマイさん次第だけど、長い休憩は夜だけが望ましい。

 まあマイさんも寛ぐ気は無いみたいだけどね。

 そうなると……。

 

「マイさん、もう一度海エリアに行かない?」

 

「……別にフユウクラゲはまた今度でもいいよ?」

 

「ちょっと欲しい素材もあるんだ。どうかな?」

 

 そう、浮遊核がもう少し欲しい。

 練習用としてね。

 

「……それは浮遊核かい?」

 

「うん。実は一時的にでも浮遊の能力があればいいなと思っているんだ」

 

 黒騎士のあの重力に浮遊であれば対策出来るかもしれないと考えている。

 浮遊はその名前から、空を飛ぶ能力では無く空に浮く能力の可能性が高いからね。

 それに空を飛ぶ能力であれば空中行動があるので、空に浮く能力である確率は低くないはずだ。

 

「それは誰に――」

 

「僕はマイさんに加工をお願いしたいと思っている。そこで1つ聞きたい。生産設備さえあれば加工は可能だろうか?」

 

 僕が以前マイさんに浮遊核を渡した時に言った、期待しているという言葉。

 あれの真実を隠す為にもこの言い方がいいはずだ。

 ただ、隠し過ぎても意味は無い。

 大事な時に気づけなければ、あれに意味は無い。

 

「本当に私でいいの? このエリアにはもっと腕のいいプレイヤーがいるかもしれない。それに何かを満たせば他のエリアに移動できるようになるかもしれない。そうすればもっと良い加工をできるプレイヤーは大勢いるよ?」

 

「僕はマイさんにお願いしたい。そしてこちらの浮遊核は失敗しても構わないから練習にもなると思う。でも、マイさんがスキルを取得していなくて、今からスキルを取得するつもりならこのお願いは止めておくよ。これの為にわざわざスキルを取得してもらうのは気が引けるからね」

 

「君に期待されたのだよ? 取得していない訳が無い」

 

 これでいい。

 僕が確認した事実が大事なのだから。

 

「だからこそ私が加工したい。君の期待に応えて見せる」

 

「ありがとう。僕はあの可能性を望み、願っているよ」

 

 ここで嘘は言えない。

 気付いた時の効果を薄める嘘を混ぜてはいけない。

 

「まあそんな訳で、僕としてもフユウクラゲを狩りに行きたいんだ。どうかな?」

 

「私もそれなら海エリアに行くことに賛成だよ。そうなると浮遊核がドロップするまでは海エリアに籠るのかな?」

 

「いや、ダンジョンクリアを優先しよう。今日は時間が余っていて、尚且つマイさんとの約束もあったから提案したんだ」

 

 そう、ここに籠って重力に対抗できるか分からない浮遊を目指すよりも、先に進んでさらに良いアイテムを狙った方が良い。

 それにこのイベントでは新エリアの体験がある。

 そこで新たな魔物から魔物カードを狙った方が対策としてはいいと思うのだ。

 だから余った時間があれば狙う程度でいい。

 

「それなら今日ドロップしたら依頼、という事でいいのかな?」

 

「いや、1個は用意してあるから安心して。マイさんに初めての1個を渡した後に色々とドロップ条件を調べていたのだけど、その際に1個だけ運良くドロップしたんだ。だからこそ、今回は練習程度に思ってくれればいい」

 

「ふふっ。別に練習で成功させてしまってもいいんだよね?」

 

 そう言ったマイさんの表情は楽しそう微笑んでいる。

 

「勿論だよ」

 

 

 

 海へのドアを潜ると、そこは安全地帯に戻った時と同じ神殿であった。

 従魔達は隣にいて、防具はドアを潜る前と変わらず白の浴衣のままだ。

 どうやら海エリアに初めて入った時にあった試練の制限は無くなったと考えて良いだろう。

 まあ水中での防御力は同じなんだけどね!

 

「問題無いみたいだね、ユウ」

 

「うん、それじゃあフユウクラゲを倒しに行こうか。とりあえず第一目標はマイさんがフユウクラゲの魔石からクラゲの魔物カードを作成する事。それが終わった後は浮遊核を狙おう」

 

「それでいいのかい?」

 

「約束が優先だからね」

 

 浮遊核は入手できたらラッキー程度でいい。

 

「ありがとう、ユウ」

 

 

 

 神殿の外に出て、ルビーをアクセラレーションホーク・ウィンドでログレスをクラゲで再召喚する。

 そしてイナバに浮きクラゲを探してもらうと、すぐに発見した様子でイナバが移動を始めた。

 

「ユウ、イナバちゃんは砂浜で待機かい?」

 

「今のイナバは水中も移動できるから問題無いよ」

 

 移動を開始したイナバの後にマイさんが追いかけ始めたのを確認し、僕も後についていく。

 さあ、数日ぶりの浮きクラゲだけど上手く戦えるかな?

 

「疑ってはいなかったけど、実際に見てみると凄い光景だね」

 

 確かに現実では海に平然と入っていく兎は見られないから、凄い光景だ。

 しかしクラゲやアジフライが浮いているこのゲームでは普通の範囲内なのかもしれない。

 

 

 

 まず1体目。

 核を外に取り出し、膜を剥ぎ取った後で核を風切羽で攻撃して終了です。

 従魔達も問題無く戦えていたようで良かった。

 そして気になる核からのドロップは……魔石でした。

 まずは1個目だね。

 

 ついでに射止め歌を試してみたのだけど、核を取り出すまで歌っても効果が無かった。

 やはり浮きクラゲは耐性が高いらしい。

 

 

 

 一旦休憩を行う為、神殿へと戻って来た。

 連戦してもよさそうだったけど、マイさんは初なので念のためにね。

 

「ユウ、私がいる意味はあるのかな?」

 

「それを言ったら僕もいなくていいからね。これは相性だから仕方ないよ」

 

「まあ私はいいのだけどね。そう言えばクラゲの魔物カード作成までに魔石は何個いるの?」

 

 ……確か8個だったかな。

 まあ作成できるまで集めるから問題無い。

 

「確か8個だったかな。なのでとりあえず魔石を8個集めて、それで登録できなかったらその時から色々と試してみよう」

 

「うん。そうすればミーも参加できるよ」

 

「そうなれば効率が一気に上がりそうだね」

 

「今でもかなり早いのにね……」

 

 早いのだろうか?

 実際のところ、最初と比べると早いけど、他のプレイヤーパーティと比べるとどうなのだろうか?

 姉さん達ならば僕達より早い様な気がするのだけどね。

 

 

 

 休憩を終え、2体目を撃破。

 そしてマイさんも問題無い様だったので連続で3体目に挑戦したところ、余裕で撃破できました。

 まあプレイヤーは周囲の警戒をしているだけだからね。

 従魔達が問題無ければ余裕に変わりは無いだろう。

 さて、イナバ達もマイさんも余裕がある様なのでもう1戦してから休憩にしよう。

 

 

 

 4体目を撃破して神殿へと休憩に戻って来た。

 現在の魔石は2個。

 まあ順調だと言えるだろう。

 ……そう言えばマイさんは特大触手が欲しかったりするのだろうか?

 まあどちらにしてもクラゲの魔物カードを作成した後の方が効率がいいので、その後になるのだけどね。

 

「マイさん、大触手や特大触手もほしかったりする?」

 

「いや、今はまだ良いかな。前回ユウが入手してきてくれたものがまだまだ余っているはずだよ」

 

「それは良かった。あれの入手は時間が掛かるからね」

 

 そう、倒すまでに必要な時間がかなり変わってくるからね。

 今必要無いならば狙いたくは無い。

 

「そうだね。確かに今の方法に比べるとかなり遅くなるだろうね」

 

 特大触手で思い出した。

 依頼料を今、話し合えばいいのか。

 生産設備を入手してからか、ダンジョンを出てから依頼するときに話し合おうかと思っていたのだけど今でも問題無いね。

 それにマイさんが報酬として欲しいものがあれば予め知っておいた方が良い。

 

「そう言えば先程の依頼、依頼料を決めてなかったね」

 

「え、別に無しでいいよ? 私としては貴重な素材を使った加工を練習させてもらえるわけだからね」

 

 マイさんとしてはいらないと考えているのか。

 それでは考えていた提案をしよう。

 

「それじゃあここで得た素材は全てマイさんのもの。それでいいかな?」

 

「何がそれじゃあなのかな?」

 

「無しでいい。つまりあったら嬉しいのだよね? それにここの素材は魔物素材の加工の練習になると思っているのだけど、違うかな?」

 

「確かにここの素材は練習になるけど、それじゃあ私だけが得をして……そうだ、私はユウが私の膝枕で寝てくれる事を報酬として望むよ」

 

 マイさんはそう言い、クスクスと笑っている。

 絶対この前のお返しだよね。

 まあその程度なら問題無いかな。

 

「分かった。それじゃあ2人の案を採用して膝枕とここで得た素材を報酬にするね。それでいいかな?」

 

「……はぁ。それではありがたく貰っておくよ。ただし、ここの素材は加工に成功してからの報酬でお願いするよ」

 

「練習用の素材は先に必要だよね? だから膝枕を完了した後の報酬にしよう」

 

 平然とここの素材を達成報酬では無く成功報酬にするとは気が抜けないな。

 まあマイさんの場合、既に練習用の素材を集め終わっているのだろう。

 それでも多い方が良い事に変わりは無い。

 

「……ユウ、もし加工に成功したら特別報酬をくれないかな? この成功報酬があった方がやる気が出るんだ」

 

「その内容によるかな」

 

「手を繋いで一緒に寝てほしいの。ダメ、かな?」

 

 少しだけ震える声が、その言葉を紡いだ。

 既に半分先払いしています、と言うのは内緒なので仕方ないとしてこれはどうしようかな。

 年頃の女の子が実際にあった事も無い異性にこれを望むのは不味い気がするのだけど……必要なのだろうね。

 それにシステム的にブロックが掛からないだろうか?

 セクハラ防止とかで。

 いや、今までの経験から掛からないのだろうね。

 これだけの技術があるのだから、セクハラ防止システム自体はあるのだろう。

 そうなると線引きが上手いのかな。

 

 ……まあそんな事を考えても意味は無いか。

 最初から答えは決まっているのだから。

 

「それなら大丈夫だよ」

 

「それは良かった。これでさらにやる気が出るね!」

 

 マイさんが次の一歩へと進む為、受ける以外の選択肢は無い。

 例え依存度が高まってしまっても、ここを通過しなければ先へ進むのは難しいだろう。

 いや、依存度が高いからこそ通過できる。

 そしてこれが成功すれば、マイさんは誰かを少しは信じられるのかな。

 

 それにしても、僕が離れるまでにここまで達成できてよかったよ。

 ここまでくればユリさん相手ならば信じる事が出来るかもしれない。

 その可能性が出てくるからね。

 まあ僕としては理由が無ければまだ離れるつもりは無いけどね。

 それでも、可能性は常にあるのだから。

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