180―ダンジョン-20―
ここから神殿、そして再度ここまでの道のりを2周し、宝玉を6個持ってきた。
さて、多分6個同時に近づけないと意味が無さそうだけど、腕に持てるのは1人2個まで。
頑張れば3つ同時に移動させられるが、それで宝玉が壊れては意味が無い。
なので最終手段にしよう。
そうなるとどうしたものか。
……こちらの海には浮く可能性があるのかな?
それか海底に転がしても良い?
あるいは近づけたら勝手に浮いてくれる?
まあどの方法にしても、1人、あるいは参加人数で可能にはしてあるはず。
取りあえず1つずつ試してみようか。
まずオレンジ色と灰色の宝玉から確かめよう。
取りあえず海に浮かべてみようとしたが、浮かなかった。
これで浮かぶ可能性は消えた。
次に赤い宝玉の近くへと運んだが、特に何も起こらない。
次に2つの宝玉を海面より上に持ち上げて、赤い宝玉のより近くへと近づけてみた。
すると2つの宝玉は僕の手から離れ、赤い宝玉の近くへと移動してそのまま浮かんでいる。
うん、これが正解か。
透明な宝玉2つを僕が、白と黒の宝玉をマイさんが運んで赤い宝玉の近くで海面より上に持ち上げた。
すると透明な宝玉2つと白い宝玉が赤い宝玉の近くに移動し、そして周囲に浮かび始めた。
そして5個の宝玉が浮かんでから数秒後、突然透明な宝玉の内の1つが赤い宝玉へとさらに近づき……何かが壊れる音がした。
だが、それ以降は何も起こらない。
念の為、もう少し待ってみよう。
さらに数分待ってみたが何も起こらない。
「何も起こらないね。回収してみる?」
うん、これ以上待つよりは何か試した方が良いだろう。
「そうだね。これ以上は待つよりは回収を試してみよう。マイさんは黒い宝玉を持っているから、僕が試してみるけどいいかな?」
「うん、お願い」
まずは近づいていない方の透明な宝玉に手をのばす。
そして宝玉に触れた瞬間、手の上にゆっくりと手の上に乗る。
うん、回収可能みたいだね。
それをマイさんに手渡し、次に灰色の宝玉とオレンジ色の宝玉に手をのばす。
これらはあのイベントがあった事から、同時がいいと思うのだ。
そして2つの宝玉に手を振れた瞬間、両方がゆっくりと手の上に乗る。
うん、こちらも大丈夫。
さて、一旦陸に置いてこよう。
一旦陸に戻り4個の宝玉を置いた後、再度赤い宝玉の元へ移動してきた。
残り3個。
まずは白い宝玉に手をのばした。
すると白い宝玉も他の宝玉と同じく、ゆっくりと手の上に乗った。
それをマイさんに渡し、次の宝玉へ移る。
問題はここから。
結界があった赤い宝玉と、その中に移動した透明な宝玉。
まあこれらは同時だろう。
透明と赤、2つの宝玉に手をのばす。
そしてそれら2つの宝形に同時に触れると、2つ同時にゆっくりと手の上に乗った。
これだけが正解だったのか、1つずつで良かったのかはわからない。
それでもこれは正解だったようだ。
さあ、神殿へと戻ろうか。
入江から神殿を2往復し、宝玉を全て神殿に移動した。
そして今、最後の赤い宝玉を台座の上に置いた。
……何も起こらない?
他に何か条件があったのだろうか?
そう思い考えを巡らせていると数秒後、突然宝玉7個が光輝き、その光はすぐに消えてその後には何も残っていない。
「冒険者達よ、ありがとうございます。おかげで力が戻り、このエリアを元に戻す事が出来ました」
どうやらあれで良かったようだ。
「エリアが元に戻った事で今後このエリアには本来の体で来る事が出来ます。そして海には以前の様に強力な魔物も出現するでしょう」
浮きクラゲですね。
ありがたいです。
「最後になりますが、お礼にそちらのドアから元の場所とここを行き来できるようにしました」
そう言い突然動いた石像が示した先には、先程までは無かったドアが存在していた。
どうやらこれでクリアと考えて良いのかな?
まあ帰るまでは安心できないか。
「これで安心してこの地から去る事が出来ます。本当にありがとうございました。冒険者達に祝福あれ」
その言葉を言い終えた瞬間、台座と奥にあった石像が光の粒子の様になり、空中へと消えていった。
「ユウ、どうする? あのドアを潜ってみるかい?」
「そうしよう。油断する気は無いけど、イベントはもう終わりだと思うから」
石像が示したドアをゆっくりと開け、中を覗いてみたがその先はやはり暗闇であった。
慎重にその中へと足を踏み入れ、完全に潜るとそこはドアが複数ある部屋であり、その配置から安全地帯の中央部屋と考えて良いだろう。
どうやらあのエリアは無事にクリアできた様だ。
そして服装も元の白の浴衣に戻っているのを確認した。
「マイさん、クリアだね。とりあえずお疲れ様」
「うん、ユウもお疲れ様」
「この後はどうする?」
「少し休憩を取ってから昼食を食べ、そのあとは昼食後に話し合う、でどうかな?」
確かにあと1時間程で昼食に良い時間になるだろう。
まあ海エリア基準だけどね。
それに焦って他のエリアに行ったところで今日中にクリアするのは難しいだろう。
それならばしっかり休憩して、午後か明日の朝から挑むべきだ。
「僕もそれに賛成だ」
「じゃあ少し休憩した後、昼食を作ってユウの部屋に行くね」
「うん、ありがとう」
マイさんとドアの前で分かれ、自分の部屋へと入った。
さて、まずは従魔達に大切なお話だ。
とりあえずログレスをパペットで召喚する。
「ログレス、召喚したばかりで悪いけど大事な話があるんだ」
そう言うとログレスは座布団を僕の前に移動させ、ゆっくりと正座で座った。
僕もそれに合わせて座布団を移動させ、ログレスの前に正座で座る。
「ログレス、一昨日の夜に君が合成進化に失敗した話をイナバとルビーに話したいと思う。これから皆が安心して合成進化などを行う為に」
しっかりとログレスの顔を見つめてそう言う。
聞き終わったログレスは迷う事無く、即座に首を縦に振ってくれた。
うん、ログレスなら許可してくれると思っていた。
何せ、ともに戦うイナバとルビーの為だ。
自分が失敗した事を話す程度、何の問題も無いのだろう。
「ありがとう、ログレス」
次にイナバを幸運の白兎、ルビーをウルフで召喚した。
そして、一昨日の夜に起こった合成進化失敗の話しを詳細に話す。
2人はそれを集中した様子でしっかりと聞いてくれた。
「さて、ここからだ。皆、今の話を聞いて合成進化は怖くなった?」
3人とも動かない。
「怖いなら無理にする必要は無いよ。ただ、僕はそれが原因で攻撃されても、死んでしまっても構わない。それは僕が君達の召喚者として弱かった、それだけなのだから」
3人ともを見渡し、言葉を紡ぐ。
「だから僕に攻撃する事が原因で合成進化をしないのは止めて欲しい。それを言いたかったんだ」
ここでルビーとログレスが頷いてくれた。
だが、やはりこれではイナバは頷いてくれないか。
「それに君達の努力の結果と戦えるんだ。それは僕の新たな経験となり、知識となる。だから僕はどちらの結果であってもそれを実行してくれたことを嬉しく思う」
ここでイナバが頷いてくれた。
うん、良かった。
「皆、ありがとう」
合成進化などを行う行わないは別として、僕が原因で躊躇したり、実行中に精神的な悪影響を与えたくない。
それらは出来る限り、最高の状況で望むべきだと思うからね。
その結果失敗したとしても、今の力量と足りない点が見えてくるはずなのでそれを次に活かしてまた挑戦すればいい。