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173/202

173―ダンジョン-13―

 森を抜け、草原へと出た。

 ここまでくればもう少しで壁の無い神殿のような場所に戻る事が出来る。

 帰ったら何をしようかな。

 僕は調薬できないからね。

 ……いや、少し教えて貰えばできるのかな?

 材料は沢山あるのだし、少しくらいは練習してもいいかもしれない。

 それで上手くできる様であれば手伝えばいい。

 

 ――突然、視界が変わった。

 すぐに周囲を確認したが、従魔達以外は何もいない。

 しかし、ログレスは警戒している。

 

 一呼吸置き、軽く集中して周囲を再度確認する。

 その空間は闇に包まれていた。

 どこまで遠くを見ても闇が広がっているだけだ。

 だが、従魔達は見える。

 これは何も物が無いだけなのだろうか?

 

 右方へ向かって魔法銃を1発撃つ。

 その弾はかなり進んだところで消滅した。

 あの時間であれば射程限界だろう。

 そうなると、ここはそれなりに広い空間ということになる。

 

「強き者よ」

 

 突然、前方から声が聞こえてきた。

 すぐにそちらを向いてみると、黒い鎧騎士が何もない空間から姿を現した。

 黒い鎧騎士と言ってもゴーレム2型2式改とは違う。

 身長は鎧騎士よりも少し高い程度で全身は光沢の無い黒一色。

 体を構成しているパーツは鎧より装甲と言った方がしっくりくる。

 その為、全体のイメージとしては鎧騎士と言うよりも未武装で細身の戦闘用ロボット。

 カッコいいです。

 

「我は汝との勝負を求める。受けてもらえるか?」

 

 とりあえず識別をしておこう。

 ……まあ出来ないよね。

 これは仕方ない。

 

 それにしても少し言葉が気になるな。

 

「汝、と言うのは誰を指しているのですか?」

 

「今、発言した汝であるが……そうか、申し訳ない。従魔を含めて汝である。気分を害したようならば汝等と訂正させてもらおう」

 

 相手は魔物では無い?

 それとも魔物が会話し、従魔魔法の事を知っている?

 まあ戦う相手である事に変わりはないか。

 

 さて、どうする。

 相手は強敵の可能性が高く、負けて死に戻りし、ペナルティーを受ける可能性も高い。

 僕としては挑みたいが、負ければダンジョン攻略は遅れるだろう。

 まあこの勝負自体がダンジョン攻略に必要な可能性もあるのだけどね。

 うん、とりあえず皆の意見を聞いてみよう。

 

「皆、戦う?」

 

 3人の方を見てそう言うと、全員がすぐに頷いた。

 それならば戦おう。

 ダンジョン攻略が遅くなろうが構わない。

 死に戻りがどこになるかもわからない。

 それでも、この状況で皆が戦うと言うのなら戦いたい。

 それに僕も戦いたい。

 なんだ、最初から戦うと決まっていたのではないか。

 

「受けます」

 

「ありがとう。それでは準備が済み次第、声を掛けてくれ。我は最高の汝等と戦いたい」

 

 流石。

 まあ、それならば布陣を考えようか。

 イナバはいいとして、ルビーはどうだろうか?

 

「ここの広さは教えてもらえますか?」

 

「汝の現在位置を中心とした1辺100メートルの立方体だ」

 

「ありがとうございます」

 

 それならばルビーはアクセラレーションホーク・ウィンドでいい。

 ログレスはどうするか?

 ゴーレム系だとは思うが、動きは速そうだ。

 そうなると鎧騎士が最適だろう。

 剣が通らない可能性もあるが、攻撃が当たらず的になるよりは良い。

 

 ルビーをアクセラレーションホーク・ウィンド、ログレスを鎧騎士で再召喚する。

 そしてイナバにお願いし、支援魔法を掛けなおしておいたが特に何も言われない。

 

「支援魔法までかけさせてもらってもよかったのですか?」

 

「問題無い。突然連れてきたのはこちらなのでな」

 

「ありがとうございます。それでは準備完了です」

 

「位置はそこからでいいのか?」

 

 位置まで決めさせてくれるのか。

 それならばもう少し離れておこう。

 近づくまでの間に相手の動きを観察したい。

 

 

 

 黒騎士から少し離れた位置まで移動した。

 ここならば少しは動きを観察できるだろう。

 

「準備完了です!」

 

「分かった。それでは開始させてもらう!」

 

 その言葉が終わると同時に黒騎士の右手に青い光を纏った剣が出現し、それは握られた。

 さらに背中からは半透明で青い菱形の何かが2対、出現した。

 その何かの長さは背中の中央から出現していれば身長の約3分の2程で、まるで翼の様に存在している為、飛行能力がある可能性は高いと見ていいだろう。

 

「イナバは支援優先、ルビーは隙を見て攻撃、ログレスは接近して相手をお願い。チャージ」

 

 初撃はチャージを使おう。

 それ以降は初撃次第だ。

 ダメージが無ければ魔法銃での攻撃を止めて、ダメージが高ければ通常攻撃を試す。

 ダメージが微妙であれば通常攻撃を足止めに使い、隙があれば魔歌を試す。

 

「参る」

 

 黒騎士は少しだけ地面から浮かび浮かび、こちらに高速で接近してきた。

 ログレスは前に出て、それを受ける体勢を取った。

 イナバは僕のすぐ横に移動し、ルビーは空へ飛び上がった。

 

 数秒後、黒騎士の剣を盾で受けたログレスが後ろへ吹き飛んだ。

 横に飛ぶことで吹き飛んだログレスを避け、同じく横に避けたであろうイナバの前方へとチャージ攻撃を放つ。

 その弾はイナバに切りかかろうとしていた黒騎士の前方へと向かい、直前で停止されて当たる事は無かった。

 

 支援を見せたイナバから狙うとは思っていたけど、あれを避けるのか。

 それにログレスを一撃で吹き飛ばす攻撃力。

 間違いなく今までで一番の強敵だ。

 

「一番の強敵が従魔使いなのはどこも同じなのか? まあいい」

 

 その言葉が終わる前に一歩前へと踏み出し、黒騎士の左胸へ魔法銃を撃つ。

 黒騎士は言葉を言い終えると同時に、こちらに高速で近づいてきた。

 黒騎士の左側へ足から滑り込むように飛ぶ。

 頭上を横振りの剣が通り過ぎるが何とか当たらずに、相手の後方へ移動できた。

 

「ログレス!」

 

 黒騎士がこちらを振り向くと同時に叫ぶ。

 黒騎士は左に避けつつ振り返る。

 そこへルビーが風切羽で黒騎士の腕を切る。

 それと同時に黒騎士の右側へ魔法銃を撃ち、すぐに左側へ魔法銃を向ける。

 そして黒騎士を挟んで反対側から盾を構えたログレスが黒騎士へと体当たりを行ったと同時に左側へ魔法銃を撃つ。

 黒騎士はそれを空中に飛び上る事で回避した。

 体さえ間に合えば黒騎士の上にも撃っておきたかったが、まあ出来ない事は仕方ない。

 

 どうやら何かしらの感知能力を持っているらしい。

 それに飛行か浮遊、あるいはそれと同等の能力。

 それにしても、魔法銃の弾を避ける理由が分からない。

 もしかして防御力が相当低いのか?

 

「チャージ」

 

 この状況、通常攻撃メインで余裕があるならばチャージはしておくべきだ。

 

「これならば次の段階にいってもいいだろう。剣よ、わが敵を貫け」

 

 黒騎士の周囲、何もない空間から2本の小さな何かが飛び出し、片方は上空へと、片方はこちらへと向かって飛んできた。

 これは危ない気がする。

 

 右に少し移動し、何かがさらに近づいたところで魔法銃を構え、後ろへと大きく飛ぶ。

 その何かは空中で1度軌道を変え、僕の目の前を通過して地面に刺さった。

 そこにチャージ攻撃を放つ。

 チャージ攻撃は青い何かを纏った小さな剣へと当たり、その剣は吹き飛んでいった。

 

 どうせまた動くだろうからね。

 それにしても、空中での軌道変更は厳しい。

 予想は出来たが何度も避けられるものでは無い。

 それに黒騎士が同時に攻撃してくるか、2本同時に攻撃されたらまず勝ち目はない。

 

 体勢を整えつつ上を向き、黒騎士を確認する。

 その時、視界の端でルビーが小さな剣を撃ち落としたのが見えた。

 流石ルビーだ。

 

「流石と言ったところだが、この程度ではな。見込み違いであったか? まあ時間を取らせた代わりにこれを見せよう」

 

 やはり全力は出してもらえないよね。

 それ程にこの相手は強い。

 黒騎士が少しの間、停止したので魔法銃を撃つが、それは難なく避けられた。

 動けない訳では無いんだね。

 

「グラビティ・フィールド」

 

「送還、ルビー!」

 

 次の瞬間、体が重くなり、地面へと倒れてしまった。

 そして視界の隅でルビーが落下しているのが見えた。

 やはり重力。

 一定範囲内の重力を増す技であればルビーには致命的だ。

 落下しただけで大ダメージを受ける。

 何とか体を動かして少し移動し、ルビーの方向へ手をのばす。

 そして地面へルビーが落下する直前、ルビーが消えた。

 ギリギリであったが送還できたようだ。

 

 首を少しだけ動かし、周囲を確認する。

 この動作ですら辛い。

 イナバの位置は近いが動けていない。

 ログレスは何とか動けているが動きが鈍い。

 

「送還、イナバ」

 

 少し経過し、イナバが送還されたのを確認した。

 そしてログレスは黒騎士へと向かっている。

 ……ゴメンね、ログレス。

 

「送還、ログレス」

 

 これ以上離れると送還できない。

 そして今勝ち目はない。

 それならば君達がHPバーを減らすよりも、この後に備えて温存しておいてほしい。

 それに、君達が倒れるところはあまり見たくない。

 

 視界の先でログレスが送還された。

 

「強いですね。完敗ですよ」

 

「何、及第点だ。だが我は満足できなかった。次は期待している」

 

 黒騎士はそう言い終えると、その手に持つ剣を構え、急降下してきた。

 そして何かが腹を貫通する感触とともに視界が闇に包まれた。

 久しぶりに負けたね。

 でも、次は勝とうか。

 そうだよね、皆。

20150402:修正

脱字を修正しました。

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