170―ダンジョン-10―
朝!かどうかは分からない。
窓が欲しいです。
さて、とりあえず顔を洗って朝ご飯を作ろう。
台所に行き、顔を洗った。
そして冷蔵庫を開けてみると、それなりに食材が入っていました。
いつ補充されているのかな?
まあわざわざ確認しようとは思わないけどね。
さてと……パンに卵、野菜にラビットのお肉でいいかな。
あとは調味料を適当に出しておこう。
多分ここ以外にもあるはずだ。
調味料は大体ありました。
そして包丁、まな板、鍋にフライパンと色々揃っています。
さらに保温箱なるものもありました。
ここは本当にダンジョンなのだろうか?
まあ初心者用で攻略までにかなりの時間が掛かるのだろう。
それならば不思議では無い。
さて、調理開始です。
完成!
ハンバーガーモドキです。
パンが丁度いい形だったからね。
2つに切ったパンに目玉焼き、薄く切って焼いたラビットの肉を複数層に重ねたもの、焼いた野菜を挟んで完成です。
野菜を焼いたのは念の為。
とりあえず保温箱に入れておこう。
さて、皆が起きてくるまでは何をしていようか?
……特に思いつかないな。
まあ適当に過ごしていよう。
「~~~~~」
暇なのでちょっと歌の練習をしていたところ、台所のドアが開いた。
大丈夫、危ない方じゃない。
「ユウ?」
「おはよう、マイさん」
「おはよう、ユウ。さっきの歌はユウが歌っていたのかい?」
「ちょっとスキルの練習をね」
うん、間違いないな。
ちゃんとスキルも取得しているからね。
「良い声だね。ちなみになんてスキルかな?」
「歌、だよ」
「初めて聞くスキルだね。レアスキルかな?」
レアスキルなのだろうか?
まあマイさんが知らないのならレアなのかもしれない。
少なくとも取得数は多くないのだろう。
「このダンジョンに入った時のメニューで初めて取得可能な事に気づいたんだ」
「そうだったんだね。ちなみにどんなスキルか聞いても良いかな?」
「そうだね……その前に朝食を食べない? その後説明でどうかな?」
一応保温箱に入れてはあるけど、早く食べた方が良い事に変わりは無いからね。
「おっと、そうだったね。今日はユウお手製の朝食。楽しみだよ」
「あまり期待しないでね」
「これは美味しいね。味付けが私好みだよ」
う~ん……もう少し甘めがいいのかな。
あとは……まあ最初はこの程度かな。
「それは良かった。まあこの通り、簡単なものなら作れるよ」
「これはそこまで簡単ではないと思うけどね」
まあ味付けは特殊かもね。
さて、食べてしまおうか。
「ご馳走様」
さて、説明をしておこうかな。
マイさんに効果があるのは分かっているけど、一度体験してもらった方が良いだろう。
これから先のエリアで使用する事もあるかもしれないからね。
「それでは歌スキルの説明をするね」
「おお、そうだったね。お願いするよ」
「とりあえず確認したのが高揚の歌、鎮静の歌、安眠の歌の3つ。プレイヤーとパーティ内の従魔に効果がある事は確認したよ。そして効果対象は今のところ単体かな」
「それらは名前通りの効果でいいのかな?」
「そう考えてもらって問題無いよ。ただ、相手の状態によっては効果が無かったりもするから気を付けてね」
「そうなると支援系のスキルになるのかな。これからは状態異常も増えてきそうだから便利そうだね」
確かにそうかもしれない。
ただ、このダンジョンでは役に立たないかもね。
このダンジョンはプレートに書かれていたエリア名称と草原エリアの出現魔物から、最初の町周辺のエリアと出現する魔物が同じ気がするんだ。
まあまだ草原エリアしか確認していないから可能性が高いだけだけどね。
「そうだね。まあこのダンジョンではあまり役に立たないだろうけど」
「確かにそうかもね。多分、ツグ・マナロの周囲と同じ魔物しか出現しないだろうね」
そう言えば安眠の歌はHPやMP回復速度上昇とかの効果は無いのかな?
安眠と言うくらいだから少しは上昇してもよさそうだからね。
後で確認しておこう。
「そうだ、マイさん。少しだけ確認させてもらってもいいかな? 実は他にもスキルを確認したいのだけど、パーティメンバーのプレイヤーに効果があるかどうかを確認しておきたい」
こちらは昨日の夜の方が良かったかな?
まあ早めに確認しておきたい。
「構わないけど……そちらはマイナス効果が掛かるのかな?」
「多分ね。そしてこちらは効果対象が単体かどうかも分からないんだ。だから掛かってしまったら探索に出るのが遅くなるけど、それでも構わないかな?」
そう、ここで状態異常に掛かってしまえば探索に出るのが遅れてしまう。
それは少し勿体ない。
「大丈夫だよ。そうなったらユウが看病してね?」
「うん、勿論だよ」
中央の部屋です。
ルビーをウルフで再召喚し、イナバとログレスは昨日のままだ。
もしかしたら召喚している魔物で違いがあるかもしれないので、一応数パターンは試しておこう。
そしてマイさんにもミーを召喚してもらった。
パーティーメンバーの従魔に効果があるかも確認しておきたいからね。
「それでは行くね。病み歌」
そう言えばこのスキル発動システムは凄いな。
先程の様に会話の途中でスキル名が出ても発動しないのに、このように明確に発動させる意思があれば発動できる。
まあこのゲームの開発者ならばこの程度は余裕なのかもしれない。
「~~~~~~」
う~ん……これは汎用系の音かな?
でもこの音だけで効果が発揮するとは思えない。
そうなると、魔法系?
「~~~~~」
そして技能発動中は動けないのか。
不便だよ!
「~~~~~~~」
幸い視界内に全員捉えられている為、効果は確認できる。
今のところ変化は無い。
数分が経過した。
技能は止めようと思ったら止められたので、多分無限に続けることもできるのだろう。
そして歌とは違い、少しずつだがMPを消費していた。
この辺りは歌の方が特殊なんだろうね。
いや、あれは僕自身が行っているから例え技能であってもMPを消費しないだけかな?
まあ今のところ確認の手段は無いので置いておこう。
それよりも病み歌の効果だ。
「皆、どうかな? 何か違和感や変化はある?」
その言葉に従魔達4人は首を横に振った。
「私も何ともないね。パーティメンバーには効果が無いんじゃないかな?」
「そうだと嬉しいな。次を試すね」
「大丈夫だよ」
「射止め歌」
「え?」
「~~~~~~」
何に驚いたのだろうか?
……またマイさんの乙女部分が出てきたのかな?
いや、違う気がするな。
まあいいか。
「~~~~~~」
やはりこちらも動けない。
不便である。
「~~~~~~~」
こちらも数分程試したが、全員違和感も変化も無かった。
これはパーティメンバーには効果が無いと見ていいかもしれない。
「ゴメン、あと1パターン試させてほしい」
「いいよ。存分に試して」
ルビーをアクセラレーションホーク・ウィンド、ログレスを鎧騎士で再召喚し、マイさんの従魔もたまに変更してもらって試したが結果は同じく、違和感も変化も無し。
これは少なくともパーティメンバーには効果が無いと見ていいだろう。
「皆、ありがとう。これで安心して実戦で試せるよ」
まあ弱い相手に試すけどね。
「ユウ、それも歌の技能かい?」
「これは魔歌だよ。新しく2つ取得したんだ」
「う~ん、そちらも知らないな。もしかして両方とも取得可能条件が同じなのかな?」
どうなのかな?
まあ予想は伝えておこう。
「予想だけど、歌はゲーム内で歌う事か歌スキルの技能と同等効果を発揮する事だと思う」
魔歌はちょっと言えないかな。
多分、歌スキルが一定以上のレベルに達したら取得可能になるタイプだと思うんだ。
スキルレベルXXはまだ明かしたくないからね。
「前者は違うかな。そうなると後者の可能性が高いけど、あれを自力で……あれ? ユウはアレを普通に行えるのかな?」
「マイさん、もしかしてゲーム内で歌ったことあるの?」
質問に答えるべきだろうけど、その前に少し気になったよ!
「そこはいいじゃないか。それよりもユウはアレのどれかを普通に行えるのかな?」
「よし、交換条件だね。マイさんが目の前で歌ってくれたらそれに答えるよ。それでどうかな?」
「……少し考えさせてほしい」
マイさんは音痴では無いはずなので大丈夫。
それよりも少し確認しておきたい事がある。
そして可能であれば試してみよう。