169―ダンジョン-09―
食べ終わりました。
そう言えば僕の部屋でマイさんも食べたね。
これからもそうなるのかな?
まあいいのだけどね。
「そう言えばユウは料理できるのかな?」
「少しは出来るよ」
甘く見ないでほしい。
条件さえ満たしていればかなり美味しい一品を用意できる自信はある。
「それは是非とも食べてみたいな」
「それなら明日の朝作るね。料理は交代でいいかな?」
「いや、明日の朝以外は私が作るよ。料理は嫌いじゃないからね」
僕も嫌いではないけどね。
まあここ拒否する理由が無いので甘えておこう。
「それならお願いするよ。ありがとう」
「いえいえ」
微笑を浮かべてこちらを見るマイさん。
そう言えば風呂の準備を終えた事を伝えていなかったか。
「そう言えば、風呂の準備をしておいたよ。お先にどうぞ」
僕は後でいい。
丁度確認したい事もあるからね。
「ありがとう。覗いてもいいよ?」
「マイさん。それが許可となってシステム上、覗きが可能となる可能性が……」
「ふふっ。可能であっても君は覗かないだろう?」
その通り。
まあそれも状況次第で絶対とは言えないが、それはこの場合の覗きにはあたらないので問題無い。
「あ、そうだ。お風呂に行く前にイナバ達に清潔魔法を掛けて貰えないかな? 送還すれば問題無い気もするけど、一応ね」
「そうだね。私も寝る前にミーとタマに掛けておこう」
「ありがとう。あ、ゴメンね。僕も召喚するのは2人にしておくよ」
そうだった。
ここは安全なのだから召喚するのは2人にしておくべきだ。
「別に良いよ、ユウ。ここにいる時は基本的に送還しておくつもりだからね」
……マイさんは1人になりたいのだろう。
それならば無理には言わない。
これは僕にとってはありがたい事だからね。
多分だけど、召喚時間というか触れ合っている時間は成長にも関係していると思うのだ。
それに従魔達をよく知れば戦闘面でも連携がとりやすくなるからね。
「分かった。それでも2人召喚したい時は僕に構わず言ってね?」
「うん、そうするよ」
従魔達に清潔魔法を掛けて貰いました!
何か変わったかというと、別に変わっていないです。
まあ見えない汚れとかが落ちたのかもしれないからね。
それ以前にこの空間に入った時に掛かっているのかもしれない。
外を歩き回ったはずのイナバ達が歩いても汚れが床に付かなかったからね。
それに全体的に綺麗に見える。
……いや、送還時に汚れは記憶されないのかな?
まあそれが分からない今は掛けておくべきだろう。
「ありがとう、マイさん」
「お安い御用だよ。それでは入ってくるね」
「行ってらっしゃい」
マイさんが風呂に行って数分。
現在イナバを撫でています。
幸運の白兎になってから撫で心地が増した気がするよ!
さて、そろそろ確認しておこうかな。
「イナバ、少し確認したいことがあるんだ。もし何か問題があったら教えてね」
その言葉に頷くイナバ。
とりあえずマイナス系は止めておこう。
あれは味方に使うものでは無いからね。
……歌の技能にあった高揚と鎮静、安眠で行こうかな。
まずは高揚の歌から始めよう。
1度深呼吸し、集中する。
そしてイナバに合わせ、音を紡ぐ。
「~~~~~」
イナバの表情や動きを見て、音を微調整していく。
「~~~」
……まだ違う。
「~~~~~~」
……あと少し。
「~~~」
うん、この音だ。
ベースは分かったので後はこれに合わせていけば良い。
ベースさえ見つかれば他の全てを実行できる。
まあ最適を目指すならその時の状態によって多少変える必要はあるが、その調整は効果を与えながら可能なので問題無い。
それに直前の一定時間、観察さえできれば調整もほぼ不要だ。
「~~~~~~~~~」
イナバがとてもそわそわしている。
うん、これは成功でいいだろう。
念の為ルビーとログレスを見てみるが、2人はじっと聞いているだけだ。
それにしても、このゲームの従魔達のAIは現実の生物に近い。
そして町の住人のAIは人そのものに感じられた。
姉さんの反応から、他のVRMMOではここまでの技術はないはずなのでこのゲーム独自の技術だろう。
一応国が保証しているが、これは日本の技術なのだろうか?
まあ僕としては仮想のこの体でこの世界を楽しめるだけでも嬉しいのだけどね。
さて、ここで高揚の歌は止めよう。
次は鎮静の歌だ。
「~~~~~~~~~」
数秒すると、そわそわしていたイナバがその動きを止めた。
「~~~」
動きを止めたイナバは休憩中と同じ様子だ。
うん、これも大丈夫。
最後に安眠の歌だ。
「~~~~~」
歌い始めて数秒でイナバはその場に蹲り、瞼を閉じた。
「~~~~~~」
そして体が小さく上下し始めた。
うん、寝るの早いね!
流石に驚きだよ!
まあ、この状況でならば安心できるのだろう。
周囲に魔物の気配は無い。
そして周りには僕達だけ。
僕もこの状況ならすぐに眠れそうだ。
「~~~~~」
「~~~~~」
10分程経過した。
このまま続けていてもいいけど、最後に1つだけ試しておこう。
技能には無かったのだけど、一応目覚めの歌がある。
イナバには少し悪いと思うけど、これが使えるか使えないかは重要なのでゴメンね。
「~~~~~」
これは一応、睡眠不足状態では効果が出ない。
「~~~」
イナバはゆっくりと瞼を開け、立ち上がった。
「~~~~~」
一応もう少し。
まだ意識がはっきりしていないだろうから。
……もういいかな。
「イナバ、何か問題はあったかな?」
そうイナバに問いかけると、イナバは首を横に振った。
うんうん、問題無いね。
まあ僕の歌が原因と分かっているからこそ問題は無いのだろう。
これが他の人や魔物であれば問題として認識してくれるはずだ。
さて、他の2人も試させてもらおうか。
2人ともイナバと同じく問題は無かった。
この様子であれば他の歌も十分に効果を発揮するだろう。
それにしても、技能に無かった目覚めの歌も効果を発揮するとは思わなかったよ。
まあ名前は先ほど適当に考えたものだけどね!
プレイヤーにはもう実行したので後は魔物相手に試さないといけないかな。
コンコン。
「ユウ、お風呂が空いたよ」
「それでは僕も入ってくるよ」
何ていいタイミング。
入ってこよう。
本当はイナバ達と入る事も考えたんだけど、イナバとルビーは女性型なのだ。
そしてログレスは入ると錆びそうで怖い。
なので清潔魔法をお願いしたのだ。
まあこれは仕方無いね。
脱衣所です。
……白の浴衣が普通に脱げました。
そしてその下には……さらに別の服が。
まあ装備無しの場合に装備される服なのだろうね。
そしてこの服は脱げない。
風呂場に入れば勝手に消えてくれる事を祈ろう。
白の浴衣を籠の中に入れる。
「清潔魔法」
……何も変わらない。
まあイナバ達に掛けられた時も分からなかったからね。
脱衣所のドアを開け、風呂場へと入る。
その瞬間、服が消えました。
やったね!
服を着たまま入るとか嫌だからね!
改めて風呂場を見渡す。
必要そうなものは大体揃っているようだ。
何故かシャンプーやボディーソープ、さらには石鹸まである。
この辺は清潔魔法でいいのではないかな?
まあ、あるのならば使っておこう。
自分の部屋です。
風呂は良いものです。
そして風呂場から出た時、自然と髪が渇いたよ!
便利だね。
さて、この後はどうしようか。
流石にまだ寝るには早い気がする。
イナバとルビーを撫でるか?
ログレスにロボの情報を教えようか?
……そうだ。
ルビーに少しお願いをしよう。
「ルビー、この空間ではキャタピラーで過ごしてもらえないかな? ルビーにはあの魔物カードに慣れてほしい。バタフライ系は君が一番上手く扱えると思うから」
ルビーは少し考える素振りを見せた後、頷いてくれた。
「ありがとう、ルビー。他のカードがいい時は教えてね。すぐに再召喚するからね」
そう言いルビーを撫でる。
ルビーが一番上手く扱えるはず。
それは以前から思っていた事だ。
ルビーは多くの魔物カードで平均以上の実力を発揮しているからね。
イナバとログレスの場合、得意カードであればルビーよりも上なのだけど、それ以外はルビーの方が上手いのだ。
得意カードはイナバであればラビット系、ログレスであればパペット、ゴーレム系。
これは強いでは無く、扱うのが上手い。
まあ全てのパターンを試したわけではないのだけどね。
ルビーを一旦送還し、キャタピラーで召喚する。
一応目標はバタフライになるまでかな。
あれは魔物カードの成長とは違う気がするので召喚時間が関係しているとは思っているのだけど、数日でバタフライにならなければ戦闘も考えないといけないな。
まあとりあえずは慣れてもらおう。
お願いね、ルビー。
「排泄物処理魔法、ユウ」
このタイミングなのだね。
トイレはもうあるのでマイさんに確認するのは止めよう。
そして明日は2時間おきほどに掛けてみようかな。
それで蓄積を減らす効果か、一定以上の場合だけ減少する効果か判明する。
イナバとルビーを撫でながら、ログレスにロボの情報を刷り込……教えていたけど、そろそろ寝ようかな。
そう言えば押入れの確認を忘れていたよ。
どれどれ。
……布団が2セットと座布団が4枚入っていたよ。
布団を1セット敷き、その中に入る。
暖かい良い布団です。
それでは寝よう。
「おやすみ、皆」
20150211:修正
一部おかしな箇所を修正しました。