168―ダンジョン-08―
最初の部屋に戻ってきました。
次は左に位置するドアだ。
慎重に開け、中を覗くと右と同じく一本道の廊下であった。
しかし、廊下はあちらよりも短くドアの配置も違う。
廊下の奥と右側のドアは変わらないが、左側のドアが中央に位置している。
まあその部屋に適したドアの位置に移動しただけだと思うけどね。
そして廊下が短いという事は、部屋が小さいという事。
つまり個人部屋の可能性が高い。
まず左側のドアから確認する。
ドアにはプレートが掛かっており、可愛い文字でユウの部屋とある。
……。
そっと中を覗いてみると、そこは和風の部屋であった。
畳敷きの床にちゃぶ台、そして押入れが2つ存在していた。
多分あの片方には布団が入っている気がするよ。
それにしても、レンさんの部屋の様な窓がほしいです。
「ユ、ユウ。私も見ていいかな?」
「どうぞどうぞ」
位置を変わり、マイさんが部屋の中を覗いた。
「これは和風のいい部屋だね。物が少ないのが気になるけど、一時的な部屋ならこれで満足だよ」
一時的な部屋ならいいね。
ここでこれを出してきたという事は、このダンジョンの報酬は自分の部屋の可能性が高い。
まあその場合、自分で揃えろという事なのだろう。
さて、押入れの確認はどうしようか?
……まあ後にしよう。
流石にここまでくれば、ここは安全地帯で確定していいと思うからね。
それならば早く他の部屋の確認を終えて食事にした方が良い。
うん、お腹が空いてきたんだ。
ステータスペナルティが発生しそうな今確認するよりも、食事をしてから確認したほうがまだ良いはずだ。
「マイさん、押入れの確認は食事の後でいいかな? お腹が空いてきたからステータスペナルティが心配だ」
「そうだね、ここまでくればここは安全地帯だと思うよ。それに私もお腹が空いてきたよ」
おっと、同時か。
そうなるとあちらも同時の可能性が高いね。
まあ確認はしておくけど。
次に右側のドアを確認する。
ドアにはプレートが掛かっており、マイちゃんの部屋と書かれている。
……おかしいな、先程はマイの部屋となっていたと思ったのだけどね。
まあ、あの進行役なのでこれくらいしてもおかしくない。
それを個人レベルでするのはどうかと思うけどね!
「とりあえず中を確認してみよう?」
「そ、そうだね……」
これで中が可愛い部屋だったらどう反応しようか。
まあ流石にそれは無いだろう。
「……良かった。ユウ、中を見るかい?」
「いや、流石に女の子の部屋を覗くのは止めておくよ」
という建前で、部屋の中にマイさんが気づいてない何かがあったら困るからです。
あの進行役ならそれくらいはする可能性があるからね。
「そ、そうかい? 私は別に構わないのだけど?」
「まあ今度お邪魔させてもらうよ。今の部屋はマイさんが整えた部屋では無く、用意された部屋だからね」
「それは挑戦と受け取ってもいいのかな?」
「いや、木張りの床にベット、それと小さなテーブルが1つあるのだよね?」
「……何故わかるのかな? 透視かな?」
マイさんは同じや似た、和風では無く普通と言った。
それならば和風では無い普通の部屋である洋風の可能性が高い。
そして配置されている家具は同等程度と考えるとそうなるんだ。
まあ外れていても良かったのだけどね!
「たまたまだよ。それよりもくまさんのぬいぐるみは無かったんだね」
「欲しかったのかい?」
「マイさんが夜な夜なクマのぬいぐるみに語りかけるのを見てみたかったんだ」
「……君の中で私はどうなっているのかな?」
「想像して見てほしい。マイさんがベットの上に寝転がり、くまさんに悩み事を相談している姿を。どうだい?」
「……って何を想像させているのかな?」
違和感は無いはず。
僕としてもあり得ないとは思っていないから言ったのだから。
「まあそれよりも、最後のドアを確認に行こう。そろそろお腹が空いてきそうだ」
「……まあ食事ペナルティーを受けてもいけないからね。あとでじっくり聞かせてくれればそれでいいよ」
夜は早く寝よう。
廊下の奥、最後のドア。
プレートには"トイレ"と書かれている。
僕は洋式がいいです。
ドアを慎重に開けてみると、そこには洋式トイレがあった。
そして奥の壁に紙が貼ってある。
そこには"座れば自動で排泄物処理魔法が起動します"と書いてある。
うん、よく分かる説明だ。
「便利だね」
「そうだね」
台所です。
そう言えば食事によるペナルティーってどこまであるんだろうか?
ステータス減少はあると思うけど、体力減少もあるのかな?
まあ食事を忘れないようにすれば問題は無いか。
「ユウは部屋で待っていてくれ。適当に作って持っていくよ。何故かここには椅子が無いからね」
そう、テーブルがあるのに何故か椅子が無い。
まあテーブルがあるだけマシなのかもしれない。
「うん、お願いするよ。それでは部屋で待っているね」
そう言い、自分の部屋へと向かう。
ここで心配なのが、実はマイさんの料理が壊滅的な可能性だ。
確かに本人は作れると言っている。
だが、それが美味しいとは限らない。
部屋に戻る前にお風呂場です。
お湯を溜めておこう。
お風呂場に入り、湯船近くの蛇口を捻る。
……何という圧倒的水量。
お湯が凄い勢いで溜まっていきます。
十数秒後、お湯が適量まで溜まりました。
便利です。
手を付けてみると、僕にとっては適温に感じる温度だ。
これは現実にもほしい。
部屋です。
途中でイナバ達も呼んだよ!
流石にイナバを台所に連れて行くわけにはいかなかったから中央の部屋にいてもらったのだけど、僕の部屋ならば問題は無い。
イナバ達にも部屋があればよかったのだけど、まあ送還できる従魔の部屋は用意されないか。
なので僕の部屋で我慢してほしい。
とりあえず中央の部屋と僕の部屋は自由に使っていいとは言ってあるので遊び部屋には困らないはずだ。
……ここではイナバ達も食事が必要なのだろうか?
うん、確認しておこう。
「ユウ~。開けてほしいな」
どうやらマイさんの料理ができた様だ。
立ち上がり、ドアを開けたところ、マイさんがおぼんを2つ持って立っていた。
「お待たせ、ユウ」
「ありがとう、マイさん」
マイさんは部屋へ入り、おぼんの上の料理とコップ、箸をちゃぶ台に並べていく。
その料理の内容は茶碗に盛られたご飯に皿に乗せられたお肉入り野菜炒めです。
お肉はラビットのものだとして、ご飯と野菜は冷蔵庫にあったのだろうか?
マイさんが特に何も言わず、初日からこれだけの量を使用しているのなら結構入っていたのかな?
まあ後で確認しておこう。
「美味しそうだね」
「ありがとう。早速食べてみてほしいな」
「うん、頂きます」
まずは野菜炒めを1口。
……良かったよ。
美味しいよ!
「美味しいよ」
「それは良かった」
そう言うマイさんは嬉しそうに微笑んでいる。
さて、確認しておこうかな。
「マイさん、そこの予備のお箸を借りていいかな?」
「大丈夫だけど……ああ、従魔達だね。私も試しておかないといけないね。召喚、ミー、ラビット」
おぼんの上に残っていた予備の箸を受け取り、それで野菜炒めを掴む。
同じ箸でいいかとも思ったけど、一応菌とかの問題があるかもしれないからね。
「イナバ、食べられる?」
そう言いイナバに野菜炒めを差し出すが、イナバは首を横に振る。
「ルビーとログレスはどうかな?」
2人とも首を横に振る。
どうやら従魔はここでも食事が必要ないらしい。
「分かった。何か欲しいものがあったら教えてね」
そう言い、箸で掴んでいた野菜炒めを食べる。
ああ、美味しいよ!
本当に良かったよ!
「ユウ、こちらも必要ないみたい」
2人ともがそうであるのならば必要ないと確定していいだろう。
1人の場合は何か特殊な条件を満たしている可能性もあるからね。
まあそれは2人の場合にも言える事だが、2人とも問題無いのであれば別にそれでもいい。
「それならば大丈夫かな。食事の続けよう」
「うん」