164―ダンジョン-04―
やはり歌は僕が行えるものばかりだ。
高揚の歌、鎮静の歌、安眠の歌、悪夢の歌などなど。
まあ従魔達や魔物に効くかは知らないけどね。
うん、まずはイナバ達に試させてもらおう。
勿論安全なものだけね。
そして気になる魔歌!
初期技能は2つで1つ目は選択方式。
2つ目も空項目だったので選択方式の可能性は高い。
選択肢は5つで病み歌、射止め歌、子守唄、魅惑の歌、幻想の歌。
まあ子守唄が睡眠、魅惑の歌が魅了系の可能性が高い。
幻想の歌が幻覚系として、病み歌は毒だろうか?
病み歌だけで見ると相手を憂鬱な気分にする効果にも思えるが、他の技能が状態異常を与えるものに見えるからね。
そして病み歌がランダム状態異常か複数の状態異常を低確率で与え、他が1つの状態異常を高確率で与えるという考えもあるけど僕は毒が欲しいので毒と考えよう。
仮に毒でなく複数だった場合でも十分使えるので問題無い。
一番分からないのが射止め歌だけど、名前的には魅了系に思える。
しかし魅惑の歌が魅了系だと考えると、魅了系が2つあるのは不思議だ。
そして毒さんと眠りさんがいるのだから、同じく有名な麻痺さんがいないとは思えない。
それに射止めというくらいだから止める効果はあるだろう。
なので射止め歌は麻痺か行動停止と予想しておこう。
と敵に与える状態異常系で考えてみたけど味方に効果を及ぼすものの可能性もある。
幻想の歌なんて能力上昇系としても見れそうだからね。
それでも、それ以外は敵に何かを及ぼすタイプだと思うので、ここは全て敵に何かを及ぼすタイプと考えよう。
そうなると欲しいのは何か。
僕としては毒か麻痺が欲しい。
毒はまあ継続ダメージを狙って。
麻痺は敵の行動を阻害する狙いで欲しい。
睡眠でもこれは満たせるのだけど、何かのダメージや衝撃で起きる可能性が有る睡眠よりも短時間でも完全に動けなくなる麻痺の方が好みです。
そしてどちらから選択するか。
2つ目も同じ選択肢とは限らないからね。
それどころか1つ目の選択によってもう片方が埋まる方式かもしれない。
……麻痺かな。
継続ダメージも魅力的だけど、現状ルビーとログレスの攻撃力は高い。
それならば攻撃機会を増やした方がダメージ量は上がり、さらに安全性も上がるだろう。
問題は射止め歌が麻痺ではない可能性だが、まあその時は諦めよう。
よし、射止め歌を選択だ。
麻痺を選択しても2つ目の項目は空のまま。
そして2つ目を選択すると、同じ選択肢が現れた。
うん、病み歌で。
さて、ここで一つ問題が。
魔歌は味方にも効果を及ぼしてしまうのだろうか?
まあ歌の方は僕ならば一致していないと効果自体を発揮できないので、それでレベルXXになっているという事は技能で使用するならば何らかの方法で相手を選択して実行となるのだと思うけどね。
まあ安全を確保してから確かめさせてもらおう。
それまでは使わなければ問題は無い。
「ユウ、パーティを組まないかい?」
マイさんが終わるまで適当にメニューを見ていたのだけど、パーティか。
マイさんの従魔が2人だったのでレギオンを考えていたのだけど、確かにその方がいいかもしれない。
レギオンよりもパーティの方が転移先がバラバラになる可能性が低いだろうからね。
「うん、組もうか。マイさん、リーダーをお願いね」
「え? ユウがリーダーだろう?」
「僕よりもマイさんの方がリーダーに向いていると思う」
指揮は苦手なのです。
「私も向いているとは思えないけど、ユウがそう言ってくれるのならばリーダーをするよ」
「ありがとう」
新たなウィンドウが表示され、パーティ参加申請が表示されている。
周囲を見渡すと、マイさんのタマがいない。
パーティ限界人数を超えるので送還したのだろう。
「マイさん、従魔は2人ずつにしない?」
「ダメだよ。ユウの従魔の方が強いのだからそちらを召喚しておくべきだ」
確かにその通りなのだけどね。
まあ魔物の強さを確認するまではその方が良いか。
「分かった。ありがとう」
ウィンドウから参加を選択する。
「よろしくね、マイさん」
「よろしくね、ユウ」
「ユウ、メニュー操作は完了したよ」
「丁度僕も完了したから、マジックポーチにアイテムをしまおうか」
台の上にあるマジックポーチを2個取り、その中に黒のローブと寝袋をしまう。
1個でもいいとは思うが、どうせ1人あたり2個以上あるのならば予備はほしい。
流石に3個以上は邪魔になるので要らないけどね。
マイさんの方を見ると、僕と同じくマジックポーチを3個、身につけていた。
アイテムは既にしまったのだろう。
「準備完了だよ、ユウ」
「僕も完了だ。それでは出発しようか」
奥の扉へと近づくと扉は自動的に開いていく。
出来れば入り口もそうしてほしかったよ。
そして扉の先は真っ暗だ。
多分親方の工房と同じく、違う空間に続いているのだろう。
「冒険者たち、汝らの健闘を期待する」
扉を潜る瞬間、そんな声が聞こえた。
扉を完全に抜けると、目の前には草原が広がっていた。
すぐに周囲を確認するが魔物の姿は無く、後ろには先程潜ったはずの扉が無い。
完全に抜けるまでは視界は闇に包まれたままだったので、覗いて確認することはできないのだろう。
それにしても、草原か。
よくあるダンジョンを期待していたのだけどな。
まあこれはこれで楽しそうなのでいいのだけどね。
おや、イナバが何か感知したようだ。
魔物だろうか?
「マイさん、イナバが何か感知したからそちらに行ってみたいのだけど、いいかな?」
「いいよ。それにしても、私には何も見えないんだけどね」
「僕にも何も見えないよ」
イナバの感知範囲はかなり広い。
それはクラゲ探しで既に分かっていた事だ。
「イナバ、感知した場所へ案内をお願いできる?」
イナバは頷く事で了承を示し、いつもよりゆっくりと駆け始めた。
ゆっくりなのはマイさんとその従魔であるミーを気遣っての事だろう。
休憩が可能な場所が分からない現状、これは良い判断だと思う。
少しの間イナバの案内で移動していたところ、少し先にウルフの集団が見えた。
数は分からない。
もう少し近づこうか。
マイさんに手振りで進む事を伝えたところ、頷いてくれたのでさらに進む。
<魔物>ウルフ Lv1
状態:通常
レベルが低いね。
まるでゲーム開始時の草原のようだ。
そうなると魔物が強い方向に進めば、先に進めるのかな?
まあとりあえず、倒してしまおうか。
マイさんに手振りで攻撃を仕掛ける事を伝え、頷いたのを確認した。
次にイナバを見てからウルフを指差す。
イナバは頷いて、移動を開始した。
さあ、これで他の2人も動き始めたはずだ。
イナバが感知されたタイミングで攻撃しようかと思っていたのだけど、ルビーの風切羽で終わりました。
まあルビーの移動速度を考えたらこうなるよね。
ウルフに近づき、剥ぎ取りナイフを突き立てる。
……ドロップなしです。
少し悲しいです。
マイさんの方を見るとどうやら牙をドロップしたようだ。
鑑定が無いのでアイテムの詳細は分からないが、どうやらこのエリアでもドロップアイテムは変わらないみたいだ。
そして最後の1体を僕が剥ぎ取ったが、ドロップは無し。
まあこんな時もある。
「アクセラレーションホーク・ウィンドの戦闘は初めて見るけど、強いね~」
「まあウルフが相手だからね。流石にメタルゴーレムは一撃じゃないはず」
もしかして、メタルゴーレムでも低レベルだったら一撃で行けたりするのだろうか?
いや、流石にそれは難しいか。
「……可能性があるの?」
「流石に難しいはず」
「難しい、ね。それ程に攻撃力があるのだね。私のホークも成長したらあれができるのかな?」
「どうかな。従魔が成長先を選んでいる気がするから違うかもね」
選択肢はあるのだろうけど、その中から従魔が成長先を選んでいる気がする。
イナバが進化した際、その可能性が思い浮かんだ。
「え、そうなのかい?」
「あくまで予想だよ。イナバが進化した時、ちょっと特殊なことがあってね」
「それは聞いてもいいのかな?」
「マイさんなら構わないよ」
進化、合成進化と成長、進化拒否については掲示板に書こうとは思わないけど、マイさんにならば教えても問題無い。