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161/202

161―ダンジョン-01―

 僕が入って来た入り口から町の外へと出た。

 この方向に深い意味は無い。

 

 隣には槍を手に持つマイさんがいる。

 服装はいつものワンピースと違い、紺色の浴衣だ。

 落ち着いた色合いでマイさんに似合っていると思う。

 

 さて、まずはダンジョンの入り口を探そうか。

 ルビーをアクセラレーションホーク・ウィンドで再召喚する。

 ……メニューからは使えないのだったね。

 

「送還、ルビー」

 

 そう唱えると目の前にいたルビーが光の粒子の様になり、空気中に溶け込むように消えた。

 この方法は久しぶりかな。

 

「召喚、ルビー、アクセラレーションホーク・ウィンド」

 

 そう唱えると詠唱が開始される。

 基本的に魔法の音声発動はメニューすら開けない程の接戦でしか使用するつもりは無かったのだけどね。

 ……あれ、今の状態だと魔法系が不利な気がするな。

 何か方法がある?

 まあ後で考えよう。

 

 詠唱が終わり、ルビーがアクセラレーションホーク・ウィンドで召喚された。

 

「ルビー、空からダンジョンの入り口を探してほしい」

 

 ルビーは一鳴きして了承を示すと、空高くへ飛んでいった。

 

「さて、僕達は地上から探そうか。空中からだと見えない可能性もあるからね」

 

 一定以上の距離からは他の景色が映る特殊な結界など等、空中対策はしてありそうだからね。

 

「そうだね。とりあえず私も従魔を召喚するよ」

 

 まさかの従魔使い仲間でした。

 いや、生産職こそ従魔魔法を取得するべきなのかもしれない。

 

 マイさんが召喚したのは兎型の魔物だ。

 多分ラビットだとは思うが、どうだろうか?

 

 <従魔>ミー Lv9

 種族:ラビット

 召喚主:マイ

 状態:通常

 

 ラビットでした。

 それにしても、生産職でレベル9は凄い気がする。

 いや、これが普通なのだろうか?

 

 

 

 <従魔>タマ Lv7

 種族:ウルフ

 召喚主:マイ

 状態:通常

 

 次に召喚されたのはウルフだ。

 レベル7なのでこちらが2人目なのだろう。

 

 3人目は何かな。

 ……あれ?

 詠唱が開始されない。

 ああ、レベル的に3人目はまだいないのか。

 そう言えば、イナバとルビーがレベル9の時点ではログレスはいなかった気がする。

 

「マイさんが従魔魔法を使えるとは知らなかったよ」

 

「生産系で取得しているプレイヤーは多いよ?」

 

 やはりそうだったか。

 

「そうなんだね。確かに相性は良さそうだ」

 

「それでは行こうか、ユウ」

 

「うん」

 

 

 

 少し歩いたところで上空を飛んでいたルビーが近くへと降りてきた。

 そして再度飛び上がる。

 しかしその高度は低い。

 これは見つけたのだろう。

 

「ルビーが見つけたみたい。行こうか」

 

「分かった」

 

 

 

 ルビーに案内されて移動した先には石の足場があり、その上には小さな魔方陣が存在していた。

 その魔方陣は描かれていると言ってもいいかもしれないが、少し浮いている気がする。

 まあそんなことはどうでもいい。

 ワクワクするね!

 

「未開の地にワクワクしてるのかい?、やっぱりユウも男の子なんだね」

 

「女の子に見える?」

 

「……私には男の子にしか見えないね」

 

「そうだろう?」

 

 そう、今のマイさんであれば男の子に見えるはずだ。

 最初に会った時は女の子だと思っていた様だけどね。

 

「さあ、入ろうか。上に乗ればいいのかな?」

 

「多分そうだろうね。そこの説明くらいはしてほしかったよ」

 

 まあ何か理由があるのだろう。

 例えば少ない情報でも対応できるように訓練しているとかね。

 どうせ真実を明かしてはくれないのだろうけど。

 

 それにしても、移動は転移型かな?

 そうなると、ルビーをウルフで再召喚、ログレスを送還しておこうかな。

 

「少し待ってね。従魔のカードを変更するから」

 

「ん? 分かったよ」

 

 

 

 準備完了!

 

「お待たせ、さあ行こうか」

 

 そう言い、マイさんに左手を差し出す。

 

「ユ、ユウ? この手は何かな?」

 

「転移型だからね。手を繋いでおけば別々の場所に転移させられる可能性が減るかと思って」

 

 マイさんなら予想していると思ったのだけどな。

 

「……確かにそうだね」

 

 そう言うマイさんの手はこちらに近づき、そして離れるを繰り返している。

 マイさんは変なところで乙女を出すね。

 ……ええい、面倒だ。

 

 こちらからマイさんの手を掴む。

 

「ユ、ユウ!?」

 

「マイさん、一度深呼吸をしてみない? 大丈夫、手は離さない」

 

「う、うん」

 

 僕と手をつないだまま、マイさんは深く息を吸い込み、吐き出した。

 いらない思考を一旦止めさえすれば、いつものマイさんだ。

 

「マイさんは意外と急展開に弱いんだね。今の状態は何か問題があるかな?」

 

「……無いね。君は必要だから手を繋いだ、それだけだ」

 

 残念、少し違います。

 手を繋ぐ必要ではありません。

 まあ落ち着いたようなので移動しようか。

 

 マイさんの手を握ったまま、魔方陣の上に乗る。

 

 <ユウ、マイをリーダーとした2パーティの転移を開始します>

 

 頭に声が響き、視界が一変した。

 ――前に魔物は存在しない。

 すぐに握っている手を離して周囲を見渡したが、魔物もおらず特におかしなところは無い。

 隣には先程まで手を握っていたマイさんがおり、イナバ、ルビー、マイさんの従魔達も同じ場所に転移されたようで、近くにいる。

 そして少ししか見えなかったが、マイさんも冷静に周囲を見ていたので大丈夫。

 

 

 

「さて、どちらに進むかな?」

 

 ログレスをパペットで召喚し、その間に改めて周囲を見渡した。

 その感想は人工的に整えられた石造りの通路だ。

 床と壁は薄らと青い灰色で、硬い石の様な材質をしている様に感じる。

 通路の形状は、1辺が5メートル以上の正方形、あるいは長方形の様な形状をしている。

 そしてそれが2方向、前後に長く続いて……まあ一本道で直線に見える。

 

「どちらもあまり変わらなく見えるね」

 

 どうしたものか。

 イナバ達も何も感知できないようだから選ぶ要素が無い。

 

「ここで止まっているよりは進んだ方が良いかな。直感で決めていい?」

 

 選ぶ要素が無い以上、直感が一番だ。

 

「いいよ。私もどちらを選んでいいか分からないからね」

 

「それではこちらに行こうか」

 

 握っているマイさんの手を引いて、直感に従い進む。

 さて、マイさんはいつ手を離すかな?

 戦闘になれば当然離すのだけど、それまではマイさんが離すまで握っていようと思う。

 こちらから離すと少し不味いかもしれないからね。

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