160―イベント開始-04―
5分程、周囲の会話を聞いていたところEXスキル取得の書の鑑定結果が判明した。
内容は2つのスキルから1つを選択して取得できると言うもの。
それ以外は記載が無いらしい。
そして万能寝袋はどこでも快適に眠れそうな良い寝袋らしい。
つまり、普通の良い寝袋である。
まあそちらは後でいいか。
とりあえず、EXスキル取得の書を使ってみよう。
マジックポーチからEXスキル取得の書を取り出す。
カードサイズのそれには清潔魔法、排泄物処理魔法と記載がある。
やはりあの2か所は必要だったのですね。
まあこの2択ならば排泄物処理魔法かな。
流石にあれなので、一定時間この魔法と同等効果を使用しなければステータス低下があるとかだろうか?
まあその時になれば分かる。
さて……どうやって使うのかな?
<ごめんごめん、EXスキル取得の書の使い方を伝え忘れていたよ。そのアイテムに記載してある中で取得したいスキル名の後に、が欲しいにゃん、と言えば取得できるよ。それでは頑張ってね~>
村の外で使おう。
一応僕にも恥ずかしさは存在しているからね!
いや、その前に少しだけマイさんを待ってみようか。
先程見渡した限りはいなかったので家の中を探索しているのだろう。
まあこのイベントエリアにいない可能性もあるので、少し待って家から出てこないようであれば外に行こう。
……いや、待て。
面白そうな機会を逃す可能性がある。
家の中を探そう。
先程とは別の家の廊下です。
そこには3個の閉じられたドアと1個の開けられたドアが存在している。
そして開けられたドアの先には床に正座し、手に持ったカードを眺めている少女が見える。
当たりだよ!
運が良かったね!
すぐにあちらから見えない位置へと隠れる。
隠れられる位置は少ないが、従魔達には外で待ってもらっているので問題はない。
「よし、誰もいないね?」
確認のつもりだろうけど、迂闊だ。
それは相手に自分は気づいていないとばらしているようなもの。
さあ、さあ。
「清潔―」
―今だ!
「魔法が欲しいにゃん」
僕が部屋の中へ入った瞬間、目の前の少女はこちらを向いてその言葉を発していた。
イベントは楽しまないとね!
そしてそっと部屋を出る。
楽しみは終わらない。
SSが取れなかったのが残念だ。
一度家を出て、少し時間を置き再度家へと入る。
そして先程の大広間へと向かう。
大広間のドアは開いたままだった。
そしてその先には正座をしてこちらを向いている少女が見える。
その目は虚空を見ているかのようだ。
「ユウ、同じイベントエリアだったのだね」
そう言い目の前の少女は立ち上がった。
先程の事は気のせい、そうしたいのだろう。
そして同じイベントエリアだった事を偶然と言っている。
これはマイさんもクリアしたがそれを隠している、あるいはクリアできなかったのどちらかだろう。
表情に安心が混ざったので後者の可能性が高い。
「そのようだね。それは置いておいて、こんなところでどうしたの?」
「家の中を確認していたんだ。それに初めに入ったプレイヤーだけに何か与えられる可能性もあったからね」
やはりマイさんであればその可能性は考えるよね。
姉さんも同じく家から調べたはずだ。
神殿も怪しいが、あちらは目立ちすぎている。
目立つ神殿よりも家の方が何か隠されている可能性は高いからね。
「そうだったんだね。そういえば、マイさんは先程の魔法取得の書はどちらにするの?」
「そうだね。私は……君は女の子にあの言葉を言わせるのかな?」
そんな鬼畜の所業……必要であればするね。
まあ問題無い方だと知っているから聞いたのだけどね。
「必要であればね。まあ僕は排泄物処理魔法にしようかと思っているよ」
「それは丁度良かった。私は清潔魔法にするつもりだよ」
うん、知ってる!
まあこれで一緒にダンジョンを攻略機会があれば2つとも揃うね。
「それじゃあ今取得してしまおうかな。マイさんはどうする?」
「わ、私の前で取得するのかな? あの呪文恥ずかしくないの?」
「マイさんの前であれば構わないと思っているよ」
既に見せてもらったからね。
一応お相子にしておくよ。
「……そうなんだ。ふふっ」
嬉しそうに微笑むマイさん。
いつ気づく、いや、認めるだろうか?
マジックポーチからEXスキル取得の書を取り出す。
さて、気になる事を少し試してみようかな。
「排泄物処理魔法が欲しい」
その瞬間、手に持っていた取得の書が消えた。
<これは排泄物処理魔法取得者への特別メッセージです。この魔法は魔法名、人物名の順番で声に出して頂ければ使用可能です>
おお、使い方はこう伝えられるのか。
これはスキルのレベル上昇で新たな要素が加わった場合も……いや、そちらは期待しないでおこう。
特別と言っているからね。
そして成功だ。
「……ユウ、何故それで使用できるのかな?」
あの声は取得したいスキル名の後に、が欲しいにゃんと言えば取得できるとしか言っていない。
それはその中に必要な要素が全て含まれているとは言っているが、余分な要素が無いとは言っていない。
それに、あの声からは期待と楽しさが感じられたからね。
そこからこの可能性に思い至った。
まあにゃんが必要であってもマイさんの前で取得するつもりではいたけどね。
「にゃんと言わなければいけないとは言っていなかったよね?」
あそこで可愛くにゃんと言えば、と言ってくれれば気づけた人は多かっただろうに。
まあ姉さんは気づいた上でにゃんと言っているだろうが。
「……ありがとう、参考にさせてもらうよ」
その言うマイさんの目は虚空を見ているかの様だ。
家の外です!
EXスキルの取得も終わったので外に行こうと思う。
「ユウ、今からダンジョンに行くのかな?」
「気になるからね」
そう、ダンジョンとは心惹かれる場所なのだ。
「……ユウ、頑張って――」
「一緒に行かない?」
別に1人でもいいのだが、少し理由がある。
先程見て回った家に加工ができる場所は無かった。
なので生産職は携帯用だけで加工しなければならない。
しかし、1日や2日であればまだしも60日間も携帯用だけで加工させるとは思えない。
そこでダンジョンクリアの報酬だ。
素敵な何かはここの設備や部屋ではないだろうか?
マイさんもそれは気づいているだろう。
それでも、僕に手伝ってほしいとは言い難い。
嫌われたくないから。
嫌われないのを知っていて、それでも僅かな可能性に恐怖しているのだろう。
「僕は結構うっかりしているからね。しっかりしたマイさんが一緒に来てくれると安心できるんだ」
それにマイさんは戦闘もできるはずだ。
確か浮きクラゲを狩りに行ったと言っていた。
負けたとはいえ、戦闘能力は低くないだろう。
そうであれば開いているパーティ枠を遊ばせておく必要は無い。
そして本当に僕はうっかりが多い。
「ユ、ユウがそう言うなら一緒に行きたいな。足手纏いになるかもしれないけど、大丈夫かな?」
「僕が既に足手纏いだからね。そうだとしても問題無いよ」
そう、従魔達は強いのである。
「それならご一緒させてもらうおうかな。よろしくね、ユウ」
「うん、よろしく」
20150130:修正
誤字を修正しました。