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―――154―――

20150104(02:00):追記

※皆さまはご理解いただけていると思いますが、念の為に注意文を載せておきます。

今回、ゲーム中で住所を聞いて方が良いとする会話がありますが、現実のMMOゲームで相手の住所を聞く行為はマナー違反にあたります。

 そして規約でも禁止されているとは思いますので現実のMMOゲームでは行わないようにしてください。

「ユウ君、今いいかな?」

 

 ログイン後すぐ、姉さんが僕の部屋へとやって来た。

 

「大丈夫だよ、姉さん」

 

「もうログインするな、っていったらログインしない?」

 

「姉さんは?」

 

 理由次第ではこれ以降ログインしなくても良い。

 その場は整えてきた。

 

「私はするんだけどね」

 

「珍しいね、弱気?」

 

「今回はちょっと難しいね。いや、多分無理かな。あはは」

 

 姉さんが無理?

 珍しい。

 

「それ程?」

 

「まあ、ログインしないでくれると嬉しいな~、なんて」

 

「姉さんがしないならね」

 

 そう、姉さんがしないなら。

 僕にログインをしてほしくないと言うことは、ある程度の危険があるのだろう。

 そしてそれは、命を失う程の危険ではないのだろう。

 いや、どちらでも変わらないがログインしていた方が良くない?

 

「無理だよね~。でも、私はログインしなきゃいけないから」

 

「まあ一応ログインしなくても問題無い状況は出来てるけど、何かしておいた方が良い事はある?」

 

「そうだね。早めに大切な人の大まかな住所は聞いておいた方が良いかな?」

 

 大まかな住所?

 何故、住所だけ?

 それも大まかな?

 

「言えるのはここまで、かな。まあ、切迫はしていないみたいだから急がなくてもいいよ」

 

「うん、ありがとう」

 

「いいよいいよ」

 

 その表情は笑っているのに、とても悲しそうだ。

 普通は終わり。

 つまりはそういう事なのだろう。

 

「そうだ、姉さん。服をありがとう」

 

「マイちゃんのだね。気に入ってくれたかな?」

 

「姉さんの趣味じゃないかな?」

 

「優君分が不足してるんだよ~」

 

「まあ今度パーティを組む時にでも着るよ」

 

 姉さんが望むのなら。

 自分の容姿は理解している。

 それでも、それを進んで着るのは姉さん相手だけ。

 それで姉さんが癒されるのならば喜んで着よう。

 

「ありがとう、優君」

 

 

 

 姉さんは話し終わると自分の部屋へと戻っていった。

 まだログインしていないのだろうから、これからログインするのだろう。

 それはいいとして、僕は寝るまでに考えておかないといけない事がある。

 あちらで深く考えるのは難しいからね。

 

 まず、アリサさんの事だ。

 誰なんだろうね、あれは。

 リンカさんの知り合いみたいだけど、リンカさんは知らない。

 それでも、リンカさんが避けられると知っていてあの攻撃を行った。

 見えてはいないけど、多分掠っている。

 そして、かなり手加減をされていた。

 そうでなければリンカさんが落ち込む理由は薄い。

 あの世界では強くありたいリンカさんだからこそ、あれは厳しいかもしれない。

 アリサさんのあのアバターが強い訳では無いのだろうから。

 

 それに、あれ程の動きができるのに、最初出会った時に尻餅をついていた。

 リンカさんと同じように、現実の体との違いが大きいのだろう。

 それもリンカさんとは別方向に。

 ……情報が足りないな。

 まあ、リンカさんはアリサさんにまた会う機会があるみたいなので僕が考える事では無いかな。

 どうしてもダメならば姉さんが何とかするはずだ。

 その時手伝えることがあれば手伝えばいい。

 

 

 

 次にマイさんだ。

 失敗したと思っている。

 自分が万能でないなんて知っている。

 それでも、あれは見過ごせなかったのだろう。

 あの時は無意識に助けてしまった。

 

 そして友達となってしまった以上、最後まで助けたい。

 それでも、優先されるのは姉さんだ。

 だからこそ今回は制限を破ってまでアレを行った。

 あの、思考が読まれているかもしれない空間で。

 まったく、意味が無いよね。

 折角浅い思考を制限し、別の思考で上書きしているのに。

 最初は練習のつもりで行っていたが、今日それで良かったのだと判明したその行為。

 もう無駄かもしれないから、イベントでは解禁しようかな。

 まあその時考えよう。

 

 それよりも、マイさんの事だ。

 今日確信した。

 恋ならばまだ良かった。

 しかし、現実は依存させてしまった。

 あれでは僕が消えてしまうと、元に戻ってしまう。

 いや、以前よりも悪化してしまうだろう。

 

 だからこそ今日、1つ手を打っておいた。

 浮遊核である必要は無かったが、僕が1つしか持っていない貴重なアイテムである必要があった。

 表向きはマイさんが浮遊核を加工できる事を期待している。

 裏向きは僕がいなくなっても、トラウマを乗り越えてくれる事を期待している。

 依存対象を少し変えるだけ。

 僕から、僕がプレゼントしたお守りへ。

 

 だからこそ今気づいては意味が無い。

 今気づけば、それは僕が消えてしまう可能性がある事を意味していると理解されてしまう。

 気付くのは僕がいなくなって、心が折れそうな時が良い。

 まあ、姉さんからの言葉で一時的にその心配は無くなった。

 普通が終わるその時までは。

 

 

 

 最後に姉さんの言葉だ。

 情報が足りないので、詳しくは分からない。

 確定しているのは普通が終わった事。

 どう終わったかは分からないが、僕達の普通が終わった。

 いや、正確には僕の普通が終わったのだろう。

 姉さんの普通はあの時から無いのだから。

 

 それは諦めるとして、住所が気になる。

 それも詳細では無く大まかな住所だ。

 姉さんの事だから、聞く相手がマイさん以外にいない事を知っているのはず。

 その上で教える、ではなく聞く。

 僕から向かう必要があるのだろうか?

 まあ大まかであれば、マイさんから聞き出すのは簡単だろう。

 そうなると問題は、僕も教えた方が良いかどうか。

 姉さんがマイさんの事をどこまで把握しているかは分からない。

 それでも、それなりに知っているはずだ。

 壁を作り、友達すらも作らないようにしていた事には気づいていたはず。

 そして僕が友達になった事は当然知っているだろう。

 ならば、教えるべきではないのか。

 姉さんは聞いた方が良い、としか言っていないのだから。

 ……そうしようか。

 情報が少ない僕よりも、情報が多い姉さんの意見を取り入れよう。

 

 よし、これで考え事は終わりだ。

 寝よう。

 

 

 

 *****

 

 

 

 左にいるウルフをファイアボールで、右にいるウルフをウィンドボールで撃つ。

 後ろにいるウルフに備え、ウォーターボールとアースボールの詠唱を開始する。

 まだ足りない。

 あの子を守る為に力を。

 

 たかがゲームと侮らなくて良かった。

 あの子とともに楽しんでいて良かった。

 

 あの人達からもらった普通は守れなかったが、あの子の命は必ず守る。

 

 

 

 ******

 

 

 

 <プレイヤーネーム:メルに称号:プレイヤー最強を付与します……成功しました>

 <隠し称号を含め、称号を5個獲得したプレイヤーを確認。これによりメインストーリー進行条件の1つが満たされました>

 <メインストーリー進行条件が全て満たされました。次の段階へ移行可能です>

 <マスター代理、承認をお願いします>

 

「おや、もう達成とは。場所は……やはり日本か。あそこだけ少し有利過ぎたかな? とりあえず承認っと」

 

 <マスター代理による承認を確認しました。メインストーリーは次の段階へ移行します>

 

「それにしても、あの子か。あの人達が正解ね。凛さんだと思っていたのだけど、私もまだまだね」

 

 <イベントデータを書き換えます>

 

「ほとんど称号持ちがいない中で5個。次に多いプレイヤーでさえ2個なのにね」

 

 <イベントデータ書き換え完了。プレイヤーへイベント変更の通知を行います>

 

「これは明後日のイベントが楽しみね。誰が気に入られるのかしら。まあ3人は既に確定済みだから他が気になるわね。いや、4人か。あの人達はまったく。仕方ないとは思うけど、日本だけ有利になるじゃない」

 

 <プレイヤーへのイベント変更の通知を完了しました>

 

「終わったわね。それじゃあ明後日のイベントを待つとしましょうか。5000人は到達して欲しいな」

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