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う~ん……魔法系攻撃は効き目が薄いのかな?
傘と触手に弾を当てているのだが、ダメージがあまり与えられていない。
エイやムレウオには十分ダメージを与えられていたので水中では魔法銃のダメージが下がるということは無いと思う。
なので、クラゲの魔法防御力が高いのだろう。
あるいは羊と同じく一定部位の魔法防御力がとても高いのかな?
まあこれも検証してみよう。
少し離れた位置にクラゲはいる。
そして離れた位置から大きな触手を振り回し、攻撃してきている。
触手の攻撃速度は遅いので余裕で避けられるのだけど、これはもしかして叩き付け攻撃ではなくて捕獲行動なのだろうか?
そうだとすれば捕まるわけにはいかない。
そして、触手に触れるわけにもいかない。
クラゲと言えば麻痺毒のイメージが強いのです。
触れただけで麻痺する可能性が有る以上、全力で回避です。
まあ、そもそも捕まってしまったら脱出は不可能だと思うけどね。
さあ、もう少し観察しよう。
イナバ、もう少し待っていてね。
上へ!
すぐに真下を何かが通り過ぎ、押し出されるような強い衝撃を受けて吹き飛んでしまった。
これは不味い!
痛みがあるので、ダメージも入っているだろう。
それよりも、衝撃で体勢が崩れてしまっている。
頭がどちらを向いているかもわからない。
体勢を立て直す為に行動を始めるが、相手も見ていてくれる訳では無い。
体勢を立て直すより早く目の前に触手が映る。
そして、視界を覆う透明な触手。
次の瞬間、体が痺れた。
手足を動かそうとするが動いてくれない。
さらにそのまま締め付けられていく体。
頭を、体を、足を……。
鋭い痛みは無いものの、このままでは死に戻りしてしまうだろう。
本当に良かった。
備えをしておいて。
次の瞬間触手から力が抜け、体が解放される。
そして数十秒後に体が動くようになったところですぐに水上へと顔をだし、呼吸する。
「あ、危なかった……ありがとう、イナバ、ルビー。助かったよ。」
本当に危なかった。
クラゲを水面付近に誘導しておいて本当に良かった。
そして何よりもルビーが待機してくれていて本当に良かった。
勿論、近くにいたイナバも助けようとしてくれていたが、ムレウオの攻撃はどうやらクラゲに相性が悪いらしきダメージが殆ど無かったようだ。
それでもがんばって助けてくれようとしていたことに変わりはない。
2人とも本当にありがとう。
落ち着いたところでとりあえず剥ぎ取ろうか。
あれだけ苦しめられたのだ、良いドロップをお願いね?
……半透明で白く細長い何か。
これは触手かな?
どうせなら大きい方が良かったな。
まあ、今回の苦戦は僕が原因。
安全な倒し方も分かっていたのに観察の為に攻撃もせず、危険な位置取りをしていたのだ。
クラゲの弱点はあの傘の内部だと思い、当てるチャンスを待っていた。
そして丁度クラゲが海面に対して横を向いたので、迫る4本の触手を避けながら大きな触手の中央にある穴へ攻撃を行い、その攻撃は何にも阻まれることなく体の内部へと吸い込まれていった。
その直後、あの攻撃だ。
横や安全な上に位置していれば完全に避けられていたはずの攻撃。
だが、安全な場所で攻撃していては狙えない弱点であったのも事実。
1度しか攻撃は行えていないが、ダメージは大きかった。
これは確実に狙うべき場所だ。
つまり問題はタイミング。
一撃で決めるか、撃った瞬間にもう逃げ始めていれば十分間に合うだろう。
この情報は例え死に戻っていたとしても十分な成果だと思う。
それに、苦戦はしたが負けていないのだ。
僕は1人では無い。
心強い仲間がいる。
HPを減らしていたのもイナバとルビーの攻撃ですぐに倒せるようにだ。
そして、2人ならば僕が危険になれば自発的に攻撃を開始してくれると分かっていた。
なので拘束された後も死に戻りはしないと思っていたよ。
それでも、迂闊すぎたのは事実。
死んでしまっても復活できるという利点は活かすべきだけど、ペナルティを受けるという欠点は避けるべき。
活かすべきタイミングは気を付けないといけないな。
そうなると、今回の場合は僕の攻撃のすぐ後にルビーの攻撃が来るようにすべきだったのかな?
減らし過ぎては倒してしまってダメージが確認できない。
HPが多すぎては倒しきれず、今回の用に反撃を受ける。
なのでダメージを確認した後すぐに高威力の攻撃で倒してしまうのが最善だったのかな?
うん、もう少し頑張らないとね。
さて、陸に戻りながら先程の攻撃についても考えておこう。
突然触手攻撃が止み、クラゲが下部をよりこちらに向けてきた。
それに違和感を感じ、急いで上へと避けたところ真下を何かが通り過ぎた。
明らかに何かの攻撃だろう。
そして衝撃だけであの威力。
直撃を受ければ死に戻りは確実だ。
さらに体が衝撃で回転していた時には何も見えなかったので、透明な攻撃の可能性が有る。
……もしかして、水の塊だろうか?
よく思い出してみれば触手攻撃が止んだ際、小さな触手で何かを包むようにしていた気がする。
それが溜めだとしたら、アクセラレーションホーク・ウィンドと同じように強力な属性攻撃の可能性が有る。
そして、水の中で透明、かつ高威力が出るものと言えば現状の5属性では水しか当てはまらない。
勿論アジの様に特殊な攻撃方法の可能性もあるだろう。
ただ、思いつく中で一番確率が高いのが水の塊を発射する攻撃というだけだ。
う~ん……掲示板、見ようかな。
それともクラゲのレア種から魔石を集めて確認した方がいいだろうか?
クラゲの魔物カードについては、少なくとも一昨日の時点では従魔スレには上がっていなかったので自分で作成するしか方法は無い。
どちらにするべきか……。
うん、クラゲのレア種を倒しに行こう。
掲示板を見るのは勿論良い手段だけど、これから先掲示板にすら情報が載っていない状況はあると思う。
その時に対応できるように魔物が弱い今、訓練しておきたいのだ。
そもそも掲示板の情報を名前以外見ていない理由の1つはそれだ。
ならば今掲示板を見るのは良くないだろう。
そうと決まれば陸へ戻り次第、レア種に挑戦だ!
<魔物>トビエイ Lv16
どうやって飛んでいるのだろうか。
エイが空中をゆっくりと移動している。
姿はエイと同じに見えるのだけどね。
さて、どうしようか。
水中に潜ってこれるかどうかが問題だ。
水中に来れないのならば水中から安全に攻撃ができる。
ただ、アジの様に衣が濡れるから等の理由は無い。
ここは普通のエイが飛べるようになったと考えておこう。
うん、いつもの奇襲でいいかな。
死角から近づき、チャージ魔法銃とルビーの加速攻撃で同時攻撃。
それでもHPが残るようならば観察しながら戦えばいい。
そしてイナバは空中に攻撃ができないので水中にエイが潜ってきた際に攻撃をしてもらおう。
ところで、死角はどこかな?
下に顔があるので死角が分からないよ!