―――106―――
町に着いたけど、人が多いな。
装備から見ると、多くは新規参加者かな?
武器は剣や槍、刀に杖と様々だ。
防具も金属鎧、皮革鎧、ローブ系にたまに盾と大体バランスよくいる気がする。
うん、僕も1か月くらい前はあんな感じだったのかな?
3日目は何をしてたかな……。
まあ、いいか。
それよりも、今日の予定を進めていこう!
『レンさん、今から少し会いたいのですが、可能でしょうか?』
『工房に来ていただけるなら大丈夫です。ただ、申し訳ありませんがその他の場所は少し難しいです』
うん、分かってる。
忙しい原因を作ったのは僕だろう。
なので、その件で会いたいのだ。
『それでは、工房に行きますので、お願いします。到着したら再度フレンドチャットでお呼びすればいいですか?』
『はい、それで大丈夫です。ではお待ちしていますね』
うん、そうなんだ。
実は祝勝会で装備を見せ合った時に、魔法銃が絶賛で誰に作成してもらったか聞かれて、つい答えてしまったんだ。
その時はレンさんに依頼が増えていいかと思ったのだけど、数までは考えていなかった。
話しが広がってしまったのだ。
多分30人近くは知っているはずだ。
そして、その30人の内数人が仲間に話しているのは見た。
そうなると、全員が依頼を出さなくても、依頼者は多い気がするのだ。
さらに、先程のフレンドチャットの言葉から、忙しいのは分かった。
他の原因で忙しいのかもしれないけど、このことが原因の可能性が高い。
なので、謝りに行こうと思ったのだ。
手土産持参で。
『工房に到着しました。暇ができましたら店舗側へお願いします』
『はい、今すぐ出ますね!』
暇が出来てからで良かったのだけど、もしかしてちょうど休憩中だったのだろうか?
休憩時間を削ってしまって申し訳ないが、多分休憩時間しか会えないだろうなとも思うので仕方が無い。
手土産で許してもらおう。
「お忙しいところ申し訳ありません」
「いえいえ、ちょうど休憩時間に入りましたので大丈夫ですよ。あれ? ああ、アバター変更チケットを使われたのですね。似合っていますよ」
そう言い、微笑むレンさん。
さて、どうやらどこか変化していたようだ。
自分で見える位置は変更が無かったので、背中か顔かな。
「すいません、実はアバター変更チケットでの変化では無いのですよ。自分でもどこかが変わっているかまだ確認できていない状態でして。どこが変化しているか教えてもらってもいいですか?」
「大丈夫ですよ。と言っても、髪が少し伸びている程度ですが」
そう言われ、自分の髪を触ってみると、確かに少し伸びている。
まあ、この程度の長さならば戦闘に支障は無いのでいいかな。
戦闘に邪魔になる程の長さならばアバター変更チケットを使う必要があったけど、これならば使う必要は無い。
「そうでしたか、ありがとうございました。これで疑問が1つ解決できました」
「それは良かったです。ところで、今回はどのようなご用件で来られたのですか?」
おっと、アバターの事に気を取られていた。
今日の本題を伝えないとね。
「まず、申し訳ありませんでした。人が多いところで貴方がこの武器を作ったと言ってしまい、そのせいで多くの人が依頼に来ていませんか?」
「それが原因だったのですか。今日ログインしたら、工房を通じてかなりの数の依頼が来ていまして、現在はその依頼を順次こなしているところです。ですが、謝って頂く必要はありませんよ。生産職として、依頼が多く来るのは嬉しい事です。なので、逆にこちらがお礼を言いたいです。ありがとうございました」
なぜかお礼を言われてしまった。
相変わらず優しいな。
でもまあ、迷惑をかけたことに変わりはないので手土産は渡しておこう。
「そうでしたか、それは良かったです。ですが、迷惑をかけてしまったことには変わりはないので、お詫びに素材を受け取ってください」
「え? いえいえ、本当にいいですよ。私としても修行が積めて嬉しいですし」
渡すのに失敗しそうだ。
魔法銃の作成でもかなり時間を使わせてしまったし、そのことも含めて受け取っておいてほしいのだけどな。
どうしようか?
「そうですか、分かりました。今回は申し訳ありませんでした」
「いえいえ、前回の試練も手伝っていただきましたし、本当はこちらから何かを差し上げるべき何ですから、これ以上は受け取れませんよ」
そうだ!
「それと、別件なのですが繊維加工ができる方をご存じないでしょうか?」
「知っていますよ。試練に行く道中でお話しした友達が繊維加工をメインで行っています。作成依頼ですか?」
「はい。ちょっと防具が心許ないかと感じまして、ローブを新調しようかと思っています。素材もこれから集めるのですが、それ以前に作成を頼める相手がおらず困っていたところなのです」
「分かりました。友達の方には私から伝えておきます。素材が集まって依頼する段階になりましたらご連絡ください」
「ありがとうございます。ですが、突然頼んでしまって申し訳ありませんので、少しアイテムを渡しておいていただけませんか? 勿論作成依頼時の依頼料は別にお支払いします」
「そんなことしなくても大丈夫ですよ。ですが、多分友達も喜んでくれると思うので渡しておきますね」
よし!
「すいません、繊維系だけで良いと思うのですが」
「確かにその通りですね。では、繊維以外はご自由にお使いください」
これで良い。
マジックポーチの中の素材が魔石だけになったけど、これでお詫びは渡せた。
まあ、元々魔石以外はすべて渡すつもりだったのだけどね。
「え?」
「あ、親方が出てこられましたね。こちらに向かってきているみたいですが、何かご用でしょうか?」
親方、ナイスだ!
「え!? あ、休憩時間が終わってる……。すいません、それではこれで失礼しますね」
「はい、頑張ってください。お友達の件、よろしくお願いします」
「はい、任せてください!」
よし、これで良い。
さて、この後は北へ行こうかな。
咄嗟の思い付きだったけど、元々防具も強化したいと思っていたんだ。
素材は何にしようか?
羊、蝶、蜘蛛。
あと、できればレア種の素材が良いな。
うん、北の神殿で3種類全ての素材を集めよう。
できればイベントまでには間に合わせたいから、早めがいいだろう。
なので2日間以内で素材集めを完了して、連絡をしよう。
作成期間は分からないけど、一週間くらいでできるだろうか?
まあ、間に合わなかったら間に合わなかったでもいいのだけどね。
基本は回避なので、防具は念の為だから。
いや、もしかしたら特殊効果が付く可能性もあるのか。
そう考えると途端に新調したくなってきた。
急ごう!
20141026:修正
会話文を字下げしていた為、修正しました。