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―――104―――

「それでは、ここで解散にしましょうか」

 

 もうログイン時間が無いからね!

 

「町まで送りますよ?」

 

「いえ、そうして頂きたいのはやまやまなのですが、残りログイン時間が20分を切っていまして……」

 

 言ってから気づいたけど、彼女はまだまだ時間が残っている可能性もあったよ。

 失言だよ……。

 

「どうやら私もログイン時間が残り少ないようです。わかりました、それではここで解散しましょうか。この後は死に戻りされるのですか?」

 

 良かった、彼女も同じで残り時間は少なかったみた……。

 

「え?」

 

「え?」

 

「私はそこの神殿でログアウトしようと思っているのですが」

 

 死に戻り?

 なぜそんなことを……。

 あ、そうか。

 

「もしかして、東の試練で解放された内容をご存じないですか?」

 

「はい」

 

 やっぱりそうだったよ。

 まあ、私も今日知ったばかりだけどね!

 

「その内容の中に、安全地帯でのログアウトが可能になった旨がありまして。さらに友達から聞いたところによると、試練をクリアした際に、近くに出現する神殿は安全地帯の様なのです」

 

 出発前に友達に色々と聞いておいて良かったよ!

 

「そうだったのですか、教えて頂きありがとうございます。それでは、私も神殿でログアウトしたいと思います」

 

「いえいえ、私も教えてもらったことですからね。それに、こちらが手伝ってもらった訳ですので」

 

 少し役に立てて嬉しいよ!

 

「失礼だとは思いますが、明日は何時ログインされますか? よく考えてみたら、ドロップアイテムの配分をしていなかったですね。完全に忘れていました。申し訳ありません」

 

 え?

 ああ、そうか。

 アイテムを一杯ドロップしていたね。

 

「確かにそうですね。こちらも忘れていました。そうですね、今日最初にフレンドチャットをした時間にログインしようと思います。大丈夫でしょうか?」

 

 いつもこの時間なのだけど、大丈夫かな?

 ダメなようならある程度は時間は変えられるけど、どうしても無理な時間も……。

 

「はい、大丈夫です。それではまた明日会いましょう。おやすみなさい」

 

 良かった大丈夫みたい。

 

「はい、おやすみなさい」

 

 また明日も一緒に旅ができるよ!

 楽しみだよ!

 

 

 

 あれ?

 よく考えてみたら、私は配分を貰っていいのかな?

 よくあるRPGだと、パーティで得たアイテムはパーティ全体のものになってたから、疑問に思わなかった。

 だけど、あれはパーティ全員がそれだけの働きをしているからだよね。

 試練の中で得たものはまだ良い。

 でも、道中で得たものは?

 私は道中で何か役に立っていた?

 あれ?

 どうしよう……。

 うん、相談しよう!

 

 

 

 友達に相談したら、相手側が配分すると言っているなら貰っておけばいいと意見を貰えた。

 それは相手が貴方が配分するだけの働きをしたと思っているからだからだって。

 確かにその通りだ。

 でも、私は何をしたのかな?

 分からないよ!

 うん、明日聞いてみよう。

 

 

 

「おはようございます」

 

「あ、おはようございます。もしかしてお待たせしましたか?」

 

 驚いたよ!

 

「いえ、今来たところですよ。それでは配分しましょうか」

 

 良かった。

 待たせてしまっていたら申し訳ないからね!

 

「はい」

 

 

 

 彼女が床に取り出したアイテムは、かなりの量がある。

 私の護衛をしながら1日でこれだけのアイテムを得ていたなんて。

 

「さて、どうしましょうか? 何か希望はありますか?」

 

 え?

 いや、大丈夫だよ!

 これは彼女が私の働きに対して、配分してもいいと思っているから。

 

「え~と……できればこの金属が欲しいですね。ゴーレムの物とは違い物理適性が高いようなので、剣等を作ってみたいですね」

 

 それならば、やはり鍛冶に使える金属が欲しいかな。

 

「……少し考えさせてください」

 

 ……あ。

 よく考えてみたら、ゴーレムの体に使う金属が足りないって言ってたね。

 失敗した……。

 今から取り消した方が良いのかな?

 いや、あくまで希望だ。

 彼女が欲しいようならば私は止めておこう。

 

「お待たせいしました。私はこの金属は必要ないので大丈夫ですよ」

 

「そうですか? ありがとうございます! そうすると、ユウさんは何を希望されるのですか?」

 

 どうやら必要なかったみたい。

 ゴーレムの体には合わないのかな?

 

「私は……やはり魔石が欲しいです」

 

 魔石。

 そうだよね、従魔魔法に必要だもんね。

 

「では、魔石は全てユウさんが取ってください。今の私には魔石はあまり必要ありませんので」

 

 うん、今の私には魔石を使う機会はあまり無いからね。

 それに、彼女が欲しい物は彼女が得るべきだと思う。

 

「ありがとうございます!」

 

 なぜお礼を言われたのだろう?

 しかも、かなり嬉しそうだったよ!

 

「それでは、魔石は私が、残りはレンさんが受け取ってください。それでどうでしょうか?」

 

 え?

 ええ!?

 

「私の配分が少し多くないですか?」

 

 いや、少しどころじゃないよ!

 流石に私がそこまでいい働きをしたとは思えないよ!

 

「私には使用できないものばかりですので問題ありません。それに、私が素材を貰っても売却するだけですから」

 

 分からない。

 いや、あれだけの量の木材を手土産で持ってくる人だ。

 これくらいの量を売却しても誤差程度なのかな?

 

 ……断ろうか?

 いや、彼女が私に配分すると言っているのだ。

 ここは貰っておくべきかな。

 

「そうですか? それでは頂きます。ありがとうございます」

 

「それでは、これで配分は終わりますね」

 

 本当にこれだけの量を私が貰ってしまってよかったのだろうか?

 

 

 

 うう、答えが出ない。

 

「さあ、町まで帰りましょうか?」

 

「はい。町まで護衛、お願いしますね」

 

 ……うん、彼女に直接聞いてみよう。

 

 

 

「レンさん、魔法銃に関して少しお聞きしてもいいですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

 何だろう?

 私に聞くと言うことは、生産系の事かな?

 

「ありがとうございます。それでは、この魔法銃の名前と特殊効果についてお聞きしたいのですが、判明しているのでしょうか? 私は鑑定のレベルが足りないのか、その2か所が見えないのです」 

 

 あれ?

 ああ、鑑定のレベルの差かな?

 いや、鍛冶スキルで少し上のものまで見えるようになっているのだった。

 

「判明しています。魔法銃の名前は複合金属の魔法銃です。そして、特殊効果は修復と消費MP軽減の2つです」

 

「そうでしたか、ありがとうございます。どちらもいい特殊効果ですね。やはり貴方に依頼して良かったです」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 嬉しい!

 生産職として、私に依頼して良かったと言われるのがこんなにも嬉しいとは!

 うん、やっぱり私は生産職向きだよ!

 

 

 

 うん、見た感じは試練前と比べて魔法銃が使い難くなったということは無さそうかな。

 まあ、私が気づかないだけで使い難くなっている可能性もあるけど、そうであれば言ってくれるだろうから大丈夫かな?

 

 

 

「ユウさん、少しお聞きしていいでしょうか?」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

「ユウさんは私にアイテムを多く配分してくれましたが、はっきり言って私はそこまでの働きをしていないと思うのですが」

 

 そう、私はそこまでの働きはしていない。

 

「いいえ、貴方がいなければ北の試練を突破することはできなかったと思いますが? それを考えれば当然の量だと考えています」

 

「北の試練以外の道中では私は何の働きもしていないと思います。いえ、逆に足を引っ張っていただけだと思うのですが……」

 

 そう、私は道中は足手まといだったはずだ。

 

「道中と試練、両方で今回の旅です。その為、両方を考慮して配分は行いました。さらに私が依頼した魔法銃で長い時間拘束してしまっています。あのタイミングで魔法銃を渡されたということは、あの試練は魔法銃の作成に必要だったのでしょう? なので、あなたは配分に見合う働きをしています。少なくとも、私はそう思っています」

 

「い、いえ、そんなことは……」

 

「それとも、貴方は私の魔法銃に手を抜いたというのですか?」

 

「そんなことするはずないですよ! 全力で作成しました!」

 

 そうよ!

 恩人からの依頼に手を抜くなんてありえない!

 

「そうでしょう。ならば私は貴方にあれだけ配分するべきだと考えました。もし配分量が多いと感じたのならば追加の依頼報酬と考えてください」

 

 そう、なのかな?

 いや、彼女は私に依頼してからの働きに対しての報酬と考えているのだろうか?

 それならば、納得かな?

 それだけ彼女が喜んでくれたということなのだから!

 うん、きっとそうだ!

 良かった、これで一つ疑問が消えたよ!

 

 

 

 あと、もう一つ。

 これも聞いておきたい。

 

 「も、もう1ついいでしょうか?」

 

 「はい、大丈夫ですよ」

 

 「何故、最初に会った時に私を助けてくれたのですか?」

 

 露店に寄ってくれたまでは分かるよ。

 でも、その後にギルドのポーションの値段を教えてくれたり、店番をしてくれたり、私に手を差し伸べてくれたりする意味は無かったと思うの。

 

 「あの時ですか? あれは成り行きです。たまたまポーションを売っている珍しい露店を見つけ、店番ついでに掲示板を見ていたら解決方法を見つけたのでお教えしただけです。特に助けたつもりはありませんよ」

 

 「そうだったのですか。ですが、私はあの時にすごく助けられました。あの時、ユウさんが助けてくださらなければ今も売れないポーションを露店に並べ、無駄な時間を過ごしていたでしょう。ですが、ユウさんに助けて頂いたおかげで、今は貴方に依頼して良かったと言われるレベルの魔法銃を作成することができました。本当にありがとうございました」

 

 本当に、本当に。

 それに、助けられたのは何もゲーム内だけではないのです。

 友達にさらに一歩近づけたのは貴方のおかげ。

 

 「いえいえ、あれで貴方が助かったのであれば私としても嬉しいですよ。それに、そのおかげでこんなに良い魔法銃も作成して頂けましたからね」

 

 その曇りの無い微笑みに心が揺れます。

 もう、泣いてしまいそうです。

 本当に、ありがとう……。

 

 「あ、牛ですね。倒してきます」

 

 ……感動のシーンだったはずです。

 ですが、これで心置きなく泣くことができます。

 戦闘中の彼女には悪いとは思いますが、少し泣かせてください。

 すぐに元の私に戻りますので。

 

 

 

「試し撃ちをしていましたが、良い調子です。本当にありがとうございました」

 

 良かった!

 使い難くは無かったみたい。

 これで安心だよ!

 

「いえいえ、こちらこそ経験を積めて良かったです。それに、そこまで喜んでいただけるとこちらも嬉しいです」

 

 初依頼は無事成功です!

 まあ、良い依頼主だったからだけどね!

 

「それでは、これで護衛の依頼は完了ですね。北の神殿から町までの道中で取得した素材は試練の後の分配と同じでいいですか?」

 

「はい、大丈夫です。護衛をして頂き、ありがとうございました。これで修業の続きができます」

 

 工房へ帰ったらすぐに修行の続きだよ!

 頑張ろう!

 

 

 

「こちらこそありがとうございました。それでは修業、頑張ってくださいね」

 

「はい!」

 

 別れ際に彼女に手を振ったら手を振り返してくれたよ!

 少し仲良くなれたみたいで嬉しい!

2.5章はこれで終了です。

明日からは3章を開始します。

お待たせして申し訳ありませんでした。


20141031:修正

誤字を修正しました。


20141029:追加

一つ話を入れ忘れていた為、追加させていただきます。

申し訳ありませんでした。

・追加箇所

"あと、もう一つ。" から "すぐに元の私に戻りますので。" までです。



20141026:修正

申し訳ありませんでした。

間違えて書いている途中のものを投稿していたようです。

その為、書き終わっているものに修正させていただきました。

修正個所は

"「ユウさん、少しお聞きしていいでしょうか?」"

から

"良かった、これで疑問が消えたよ!"

までとなります。


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