―――101―――
羊さんです!
モフモフしたいです!
でも、世の中は非情なのです。
モフモフであろうと敵は敵。
「何をしているのですか?早く剥ぎ取りに行きましょう!」
何か考え事かな?
こんなにすぐに倒せたのに、何か疑問があったのだろうか?
まあ、私にはわからないけどね!
おお!
毛玉……羊毛かな?
これは友達のあの子が欲しそうな物だよ!
町に外はこんなに素材の宝庫だったんだね!
まあ、1人で来ても勝てないけどね!
「少しお聞きしてもいいですか?」
ん?
何だろう?
「いいですよ」
「その毛玉を使用したら、このローブ以上の防具はできるでしょうか?」
繊維系……。
友達のあの子なら分かるのかな?
でも、私には分からない。
「すいません、私では分からないです。繊維加工を持っていたら分かったかもしれませんが、そこまで取る余裕が無くて……。友達に防具と素材を見せられれば教えてもらえると思いますが」
「いえ、そこまでご迷惑は掛けられません。ありがとうございます」
そんなに遠慮しなくてもいいのに。
このくらいの年の子はもう少し遠慮が無くていいと思うのだけど……。
まあ、それがこの少女の性格なのかな?
「森に到着ですね!」
ゲームで初の森です!
「到着しましたね。そういえば、虫は大丈夫ですか? 森では虫の魔物が出る可能性がありますが」
「一部ダメなのもいますが、大抵は大丈夫だと思います」
そう、私は虫には強いのだ!
明らかに危険な感じの虫以外は大体行ける自信がある。
アレ以外はね!
「それでは、入る前に少し休憩をしていきましょうか」
休憩?
そういえば、少し疲れているかもしれない。
でも、彼女の方が戦ってばかりで疲れているんじゃないのかな?
それとも、普通の戦闘職はこの程度では疲れないのだろうか?
……もしかして、私が急いでいたから、疲れてるのを隠して……。
「分かりました。そういえば、町を出てから休憩をしていませんでしたね。戦ってもらってばかりだったのに、気付けなくて申し訳ないです」
「いえいえ、これ位は日常的に行っていますので問題ないですよ。それよりも、初めての町の外で疲れていませんか?」
やはり戦闘職はこれくらいでは疲れないのだろうか?
私を気遣ってくれる余裕まであるみたい!
でも、戦っていないからそこまで疲れてないよ!
「流石に戦っていないので、大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」
休憩時間中もイナバちゃんを撫でさせてもらったり、色々と話したりしたよ!
従魔魔法、面白そう!
だけど、魔物カードに条件がいるなんて……。
チュートリアルのラビットさえ、普通には倒せない私には荷が重い……。
まあ、それは後で考えるとして……。
「さあ、行きましょうか! 待っていてください、素材達!」
「止まって警戒してください。イナバが何かを感知しました」
「わ、分かりました」
森での初の敵だよ!
やっぱり、虫なのかな?
でも、大丈夫だよ!
虫は怖くない!
大きい蝶が飛んできたよ!
蝶だと糸が取れそう?
「糸ですね」
糸だったよ!
「はい、糸ですね」
でも……。
「私としては、そろそろ金属的なものが欲しいですね」
そう、私のメインは鍛冶だからね!
「金属を纏った虫は勘弁願いたいですけどね」
それは私も勘弁願いたいです。
「まあ、金属は西で入手できるのでこちらでは難しいかもしれませんね」
どうやら、金属は西で入手できるみたい。
工房ではそれは教えてくれなかったよ。
でも、確かに西で入手できるなら他の場所では出ない可能性の方が高い気がする。
「うう……確かにそうですね」
うう、残念。
「どうしたの? イナバちゃん」
突然走って行っちゃったよ。
「どうやら薬草を見つけたようです。追いかけましょう」
「はい? 分かりました」
薬草?
イナバちゃんはそんなこともできるの?
「おお! こんなに沢山! 採取していいですか!?」
着いた先には沢山の薬草だよ!
「ど、どうぞ」
嬉しいよ!
ギルドの練習用の依頼って、実は回数制限があったりするんだよ!
だから、練習ができなくて困ってたんだよ!
でも、これで調薬の練習が沢山出来るよ!
それに、自分用のポーションとかも作成できそうだよ!
「十分採取できました。満足です! さあ、行きましょう!」
満足だよ!
「はい、行きましょうか」
イナバちゃんが立ち止ったけど、魔物が来ない?
「……来ませんね」
「少し先で待ち伏せの可能性が高いですね。ただ、警戒は怠らないでくださいね」
え?
「待ち伏せ!?そんなことをする魔物もいるのですか?」
魔物って色々してくるんだね!
やっぱり私には戦闘職は無理そうだよ!
「西でウッドパペットが木の上から奇襲してきましたから、可能性は十分にあると思います」
「そんなことまで……。よく無事でしたね」
やっぱり戦闘職はそれくらい余裕で退けるのだろうか?
「そこはウルフで召喚していたルビーが感知してくれていたので、逆に木の上から落としました」
「優秀ですね。ルビーちゃん」
そうなると、普通の戦闘職でも発見できないこともあるのか。
うん、よく分からない!
「さて、待っているわけにも行きませんから進んでもいいでしょうか?」
「はい、進みましょう」
大きい蜘蛛さんでした!
虫が嫌いな人はここは無理だろうな~。
まあ、木に隠れてる私は多分普通に負けるのだけどね!
「倒せたようので、行きましょうか」
「もう大丈夫です?」
「はい、大丈夫ですよ」
どうやらもう倒せたようです。
早い!
そして、今回は何が剥ぎ取れるのだろう?
楽しみだよ!
「あ、待ってください。剥ぎ取るのは蝶からにしてください」
危なかったよ!
もう少しで剥ぎ取るところだったよ!
でも、どうしてだろう?
「どうしてですか?」
「西の森で、ウッドパペットを倒した際に持っていた武器から剥ぎ取ると特殊ドロップを得られるのですよ。その際に、先に本体を剥ぎ取ってしまうと、武器は消えてしまうので、武器から剥ぎ取る必要がありました。その事から、今回も蝶や巣から剥ぎ取った方が良いと思いまして」
そうなんだ。
剥ぎ取り1つにしても大変なんだね!
「そうだったのですか。分かりました。蝶、巣、蜘蛛の順番でいいですか?」
「はい、それでお願いします」
巣から……どうやって剥ぎ取ればいいのだろうか?
切りつける?
「巣は切りつければ大丈夫でしょうか?」
「多分それで大丈夫だと思いますよ。僕も初めてなので、失敗したら次は他の方法を試せばいいだけですよ」
……失敗したら次は他の方法を試せばいい。
うん、そうだよね!
「分かりました。では、いきます」
蜘蛛が落ちてきて少し怖かったよ!
そして、これは蜘蛛の糸?
鑑定してみたけど、どうも蝶の糸とはまた別の糸みたい。
「これは糸ですね。蝶とはまた違う糸の様ですが」
まあ、後でゆっくり見てみよう。
よし、次へ行こう!
「最後に蜘蛛いきますね」
……まあ、蜘蛛の糸があるからね!
「さあ、先に進みましょうか」
「はい」
それにしても、本当に北の方面は初めてなのだよね?
全然初めてに見えないよ!
出てくる魔物は最初からすぐに倒ししてしまうし、集団で出てきても余裕で倒しているように見えるよ!
しかも、私を守りながらだよ!
普通の戦闘職はこれが普通なのかな?
本当に分からないことだらけだよ!
あれ、先が黒い空間になってて、草木が無くなってる?
「あれが黒い壁ですか?」
「多分そうだと思います。南や西の森と同じに見えるので」
あれがそうなのか。
黒いね!
「そうですか。なら、あれに触れば試練に挑戦できるわけですね!」
「そうなりますね」
ついに、ついに試練に挑戦だよ!
「それでは休憩にしましょうか
おっと、そうだよね!
試練には万全の状態で挑まないとね!
「はい。もうすぐ試練だと思うとワクワクしますね」
「そうですね。私も西の試練前は楽しみでしたよ」
そうだよね!
ワクワクするよね!
「そういえば、試練の内容は調べましたか?」
「はい、調べましたよ!」
試練の内容はバッチリです!
「そうでしたか、失礼しました。内容的にクリアできそうでしたか?」
「いえいえ。そうですね……たぶん可能だとは考えていますが、最後の試練のクリア基準が分からないので、確実とは言えませんね。勿論最高の作品を仕上げるつもりですが、それでも届かない可能性もありますからね。実際に、掲示板に書き込んでいた人はかなりの物を作成していたのですが、最終試練を突破できなかったようですからね」
でも、私はクリアしてみせるよ!
期待しててね!
それはさておき……。
「ところで、イナバちゃんとルビーちゃんに触ってもいいですか?」
「はい、大丈夫だと思います」
「さあ、試練へと挑戦しましょう!」
「頑張ってきてくださいね」
「え?」
え、え、え?
なぜ!?
「一緒に受けてくれないのですか? 試練中も含めて護衛をお願いしたつもりだったのですが……伝え方が悪かったのですね。すいません」
そうか、あの言い方では試練の場所まで連れて行ってほしいと捉えられても不思議では無いよね。
うう、1人じゃあ絶対クリアできないよ……。
「そうでしたか。勘違いをしていて申し訳ありません。ただ、私は試練の条件を満たしていないと思うのですが、そこは大丈夫でしょうか?」
え!?
試練も一緒に受けてくれるの?
「それは大丈夫です。試した方がいますが、どうやらパーティ内で1人以上条件を満たしている人がいれば大丈夫の様です」
「分かりました。試練クリアまでお供させていただきます」
やった!
これで安心だよ!
あとは、私がクリアできる作品を作り上げるだけだよ!
「ありがとうございます! 正直なところ、私一人では絶対に無理ですので」
さあ、そうと決まれば早速挑戦だよ!
「それでは出発しましょう!」
「あ、危ないですよ」
え?
「痛い! な、何ですかこれは!?」
痛い!
痛いよ!
<試練への資格を満たすものよ、汝は試練への挑戦を望むか?>
あれ?
もしかして、ぶつかることで試練を受けられるのだかな?
まあ、そこはいいか!
試練に挑戦するかどうかなんて、決まっているよ!
「当然です!」