いちずな雲へ
見上げれば星も月も見えなかった夜空
漆黒の空も滴り落ちる星も冬が来るまでおあずけ
けれど薄紫の大空を彩りたいと輝くものたちが沢山息を吐いている
一番背伸びしている電波塔はここからは朧気に蛍火のように
間近なものたちは赤色に滲んだ目で真っ直ぐ宙を見つめている
低いアパートが誇示するように青白い光を熱く強く漏らす
静かに轟くのは飛行機がどこかで密やかに光の粒を撒いている
遠くの橋が肌色のやさしさに惹かれあたたかい光りは街を照らす
微小な家々が健気に薄い明かりを灯すから空は月を連れてきた
大きな月は掠れて寂しい橙色で弱く発光しながらも
私が夜の主だからとそこに端然と居る
長くたゆたう雲が空に張り付いてそれらをじっと見ていたけれど
いつの間にか空に同化したのか消えてしまった
きっと雲はこの空の街の輝きを少しだけ吸い込んで空を巡り流れゆく
私はいちずな雲に願う
輝きよ遠い空へ届けて欲しい
見上げる彼方に届けて欲しい
優しい貴方に届けて欲しい
愛しい貴方に届けて欲しい
私は大丈夫だと
空は遠いけれど必ず繋がっていることを知ったから
いつか貴方と手を繋ぎ一緒の空を眺めていたい




