現場は
「じゃあ行って来るニャー」
そう言って琴花は家を出て行った。
「…………」
「……とりあえず茶でも飲むか」
美月は黙ったまま頷いた。
◇ 商店街
「匂いが薄いニャ」
琴花は鼻を動かして
「……そこニャー!!」
匂いの出処を完全に捉えた琴花は走り出した。
商店街の出店に向かって。
○ リビング
俺は茶菓子と紅茶を用意した。
茶菓子もそろそろ無くなるかと
いうところで俺は口を開いた。
「……最近どうなんだ?」
「…………」
美月は冷めた紅茶を一口飲んで
「なんかよく話しかけて来るようになった」
そう、俺が聞いたのは美月と親との関係だ。
「でも私の事をまだわかって無い」
俺が口を開こうとしたが美月は更に重ねた。
「でも……ちょっと嬉しい」
そう言いながら美月は少しだけ笑みを浮かべた。
「……やっぱり笑ってた方が可愛いのに」
俺は小さく呟いた。
「手洗ってくる」
そう言って美月が洗面所に行った
後一人になってふと思った。
「琴花……遅いな」
◇ 商店街 屋台
多助が呟いた頃、琴花はイカ焼きを口いっぱいにふくんでいた。
屋台のおっさんが可愛いから、とかなんとかで店の前で食べていてくれと頼まれた物だ。
屋台のおっさんが注目したのはやはり猫耳だろう、琴花は帽子を邪魔だからとはずしてしまったのだ。
幸い商店街の人にはそれが本物だとばれず、むしろ看板娘と気に入られて今に至る。
「次はこっちよろしくねー」
たこ焼き屋のおっさんが言った。
「ここは天国だニャー!」
琴花の頭にドッペルゲンガーの事など残って無かった。