幼馴染と猫と俺
「それでいいって……どういう事だよ」
「ぺんたちころおやしが生命の危機に陥った時、どうすると思うニャ」
「…………!?」
「気づいたかニャ、生気を一気に奪うはずニャ、人間じゃあまず耐えれないだろうニャ」
「じゃあどうすんだよ! 美月はこのまま……」
琴花は少し笑って
「一撃で倒すのニャ」
「ならあいつを俺に化けさせてくれ、俺なら躊躇なく出来る」
「ならなくていい、私がやる」
バットを構えようとした美月を琴花が止める。
「妖怪の生命力を舐めるなニャ、人間は本能で力を弱めるニャ」
「出来る、俺なら……」
「甘く見るなニャ」
琴花が少し声を荒げた。
「琴花……」
美月が心配そうに琴花の方を向く
「人間じゃぺんたちころおやしは倒せないニャ」
そう言って琴花は偽美月の頭を掴んだ。
「何……してんだ?」
「今からうちの生気をぺんたちころおやしに送るニャ」
琴花の手が光る、その光が偽美月に移動する。
「……カァ」
偽美月が始めて声を出した。
琴花と偽美月が光に包まれた。
「多助……何?」
「生気を送ってるらしい」
光が消え、琴花と……
「琴花が二人!?」
「うちが本物ニャ」
一人の琴花がこっちに来た。
「さて、勝負するかニャー、ぺんたちころおやし」
偽琴花は本物の琴花を少し見つめて
「カァ!!」
どこからか羽を広げて飛んでいった。
「逃げた……のか」
「さて、鬼ごっこの始まりニャ」
「だな」
琴花は不思議そうに俺を見て
「人間がついてこれる速さと思うかニャ?」
少しの沈黙を破ったのは美月だった
「いつ、帰ってくるの?」
「うーん、気合を入れたら約一週間ってとこかニャ」
「そう……」
琴花は美月に近づいて
「この事件は終わったニャ、でも一応気をつけておくんだニャ、それと」
琴花は俺に近づいて来て
「頑張ったからご褒美が欲しいニャー」
……そういえばそういう話もあった気がする。
「何だ? 魚かなんか?」
琴花は美月をイタズラな目で見て
から俺に視線を戻す。
「お前が欲しいってのは……ダメだよニャー」
「なっ!?」
美月が獲物を狩る様な目になった。
琴花は少し笑って
「じゃあこれぐらいならギリギリかニャー」
目を閉じて顔を近づけてきた。
「き……琴花?」
俺は固まった、驚いたのと美月の鋭い目に睨まれて。
少し間が空いた後琴花が目を開けて
「うちは待つのは嫌いニャ」
頬に柔らかくて暖かい感触を感じた。
「これぐらいで許してやるニャー」
笑いながら琴花は偽琴花の飛んでいった場所に走っていった。
「多助」
後ろから美月の声がした
「話したいことがあるの、この事件が終わったら話そうと思ってたこと……こっち向いて」
来たか、そう思いながら美月の方を見ると
「……何してんだ?」
美月は目を閉じていた。
美月は目を閉じたまま
「私も頑張った……だから」
まさかの変化球!?
「え……と」
俺が戸惑っていると美月が口を開いた
「私も琴花と同じ気持ち、ずっと前から多助を気に入ってる」
気に入ってるにしたのは恥ずかしさからだろう。
「や……でも」
「私は琴花と違って待てるよ……ダメ?」
美月が目を開けて上目遣いで更に近づいて来た、覚悟を決める時のようだ
「……仕方ないな、目閉じろ」
目を閉じた美月に俺は顔を近づける。
唇が一瞬触れあった。




