真那華のガチファン現る
聖蘭は一層を楽に進めているので最初の攻略隊が気の毒になっていた。
『マナ様じゃなく、セイラちゃんまで煽りだしたぞ』
『確かに今と昔は違うけど、実際のところどっかの研究局のせいでスキルに関してはほとんど変わってないんだよな』
『間違いなく。セイラちゃんの【錬成鍛治】が革命を起こしてんだよな』
『実際、その影響はあるだろうな。俺の知人がセイラちゃんの武器を作ってもらって自慢してたし』
『確かに攻略しやすくはなった』
『それとマナ様によって間違いが正された事も大きい。それによってダンジョン攻略は一気に進歩した』
『でも、劣等竜の口腔内を狙う奴は今のところマナ様とセイラちゃん以外で見たことないな』
『誰があんな危険な真似出来んだよ』
例え劣等竜といえどそのブレスの威力は竜種とほとんど遜色ないのであり、その予備動作を狙うという危険な真似は誰もしないのである。
聖蘭の問題発言の少し前、東城寺厳蔵は自宅で『深淵の樹海』の攻略配信を見ていた。
「A級になったのは知っとったが、ここまで強くなっていたとは・・・・・・アレは最早、当時のワシよりも強いな」
聖蘭の実力は既に疑うまでもなく、当時の厳蔵を軽く超えていた。
「それで、どういう風の吹き回しだ?政治活動ばかりで愚息の葬儀すら、まったく顔を出さないお前がワシの元を訪れるとは」
「私はただ、後継と聖蘭、そして龍次の件で用があっただけです」
「一応、話しだけ聞こうか・・・・・・龍壱」
厳蔵は長男の龍壱と話していた。
「以前も話しましたが、後継に関しては私はなる気はないし、龍次以外ならどちらがなっても文句はないと言いました」
「確かに言ったな」
「父さんは知ってると思いますが、私や龍未にはダンジョンで戦えるスキルがありません。あるのは生産系のスキルのみです」
東城寺家は次男を除くと戦闘系のスキルを持ち合わせてなく、ダンジョンに入った経験すらないのだ。
「東城寺家は大災害の時に起源ダンジョン『深淵の樹海』から溢れた怪物を退けたことで成り上がった家系です。だから、私にとって『深淵の樹海』の怪物共を退ける力がある者こそ、後継者になるべきだとずっと考えてました」
「それは初耳だぞ」
厳蔵は龍壱からはそんな話を一度も聞いたことがなかった。
「言えるわけありませんよ。『深淵の樹海』に挑めるのなんてほんの一握り、そんな戯言誰が言えましょうか?」
「だから、お前は後継者を辞退したのか」
厳蔵は龍壱が後継者を辞退した理由を理解する。
その辞退は龍次の死後に手紙にて行われた。
「龍次には継がせたくないからずっと黙っていたのか」
「ええ、アイツは考え方も実力にしても東城寺当主には相応しくありませんでした。だから、私が後継をチラつかせることでアイツを牽制していましたが、まさかスキル研究局と手を組んで来るのは想定外でしたね」
「それに関しては頭の痛い話しだ。ワシはまんまとあの愚息に利用されていたようだからな」
厳蔵は聖蘭のスキルを調べるために龍次の口車に乗り、スキル研究局に研究費を投資したことを後悔している。
「まったく、父さんの愛人のことを知ってるのは私と母さんぐらいなんですからね。聖蘭は実際、父さんと愛人の子で実際には血が繋がっています。私からしてみれば腹違いの妹といったところでしょうか」
聖蘭は実のところ厳蔵と厳蔵の愛人の娘で義理ではなく実際に血が繋がっており、義理にしてるのは不倫がバレるのが怖いからである。
「えっ?龍華はそのことを知ってたのか!」
「知ってたも何も私にそれを最初に教えたのは母さんですよ。英雄色を好むというからこそ出来た誤ちでかつての仲間なら尚更そういう関係になっても仕方ないって半ば諦めてましたね」
厳蔵は妻である龍華にバレていた上で必死に愛人のことを隠していたのである。
「それにバレないと思ったんですか?書斎に手紙残ってますよね。父さんが未練がましい人間なのは分かってますが、アレは流石にバレますって」
厳蔵の妻は書斎を片付けてる時に偶々、愛人とのやり取りをしてる手紙を見つけていたのだ。
「まさか、そこからバレていたとはな。その話はもういい、話を戻せ」
これ以上話すと更に墓穴を掘りそうなので、厳蔵は話を戻す。
「そうでしたね。単刀直入に言います。後継者は聖蘭が相応しいので聖蘭がなるべきです」
「それで|龍未は納得してるのか?」
厳蔵はもう一人の後継者候補のことも気になった。
「既に同意済みです。そもそも、アイツは仕事でのキャリアアップと推し活にしか興味ありません」
「そうか、それなら後継者は決まったようなものだな。確かにこの力なら東城寺家は安泰だ」
厳蔵は配信を見ながらそう答える。
「それならば良かったです。私も何故か最近は調子がいいんですよね」
「・・・・・・それはおそらく、聖蘭が原因だな」
「それはどういうことですか?」
厳蔵は聖蘭が銃を扱う潜行者から神様扱いされてることを知っており、聖蘭はそれを龍壱からの指示でやった事にして龍壱の評価にする事により神様扱いを回避しようとしたのである。
「まったく、我が妹ながらやってくれますね。それなら、私もありがたくその評価使わせていただきますよ」
「怒らないのか?」
「怒る要素がどこにあるんですか?龍次の妨害工作ならまだしも、これは言わば支援、怒る要素などどこにもありません」
龍壱は龍次の妨害工作には頭を悩ませていたが、これに関しては利用できるので利用する事にしたのである。
「そうか、お前がそれでいいならワシからはもう何も言うまい」
「次に龍次の件ですが、アイツを殺したのは、権能教会教祖直轄チーム『黒十字』です」
「そうか、あの愚息・・・・・・奴等とも接触していたのか」
厳蔵はその事に頭を抱える。
「映像に映ったエムブレムを調べたら、そのチーム名が出て来ました。何かまずかったですか?」
「・・・・・・ああ、これ以上この件には関わるな。奴等に関わった人間は一人として生きて帰って来なかった。穣治の父、穣三はS級だった。それですら無惨な死体で見つかった。だからこれ以上関わるな」
厳蔵にとってそれはショックな出来事だったのである。
「それは確かに私の手にはあまりそうな相手ですね。そもそも、龍次の死は私としては興味がありませんでしたが、殺した相手くらいは父さんに知らせるべきだと勝手に調べただけですのでこれ以上深入りするつもりはありません」
龍壱は龍次の死には興味はなかったが、その原因は父にとっては知る権利があると思い、独自で調べこれ以上は深入りするつもりは毛頭なかった。
「それを聞いて安心したぞ」
厳蔵はこれ以上身内を失いたくはなかった。
「分かってますよ。それはそうと久しく会ってない間にお身体が良くなったみたいですね。血相が良くなって見違えましたよ」
「ああ、最近は聖蘭からもらった龍の肉によってD級ではあるがダンジョン攻略が出来るまでは復帰して今ではダンジョン配信者だ」
厳蔵は龍壱にダンジョン配信出来るまでには復帰したことを告げる。
「ん?今、龍の肉とおっしゃいましたか?」
「そう言ったが?どうかしたか?」
「龍と言うのはマナ様が倒したというあの龍ですか?」
「確かにその龍だが、どうした?様子がおかしいぞ」
厳蔵が龍の話をした辺りから、龍壱の様子がおかしいのだ。
「すいません、マナ様のことを考えるとつい取り乱してしまうんです。なんせ、私はマナ様ファンクラブ『お猿さんの会』会長なんですよ」
「そ、それは初耳だぞ」
厳蔵はその龍壱の言動にドン引きしている。
「それは私の裏の顔ですからね。マナ様程の逸材はなかなかいないんですよ。それにマナ様の影響力もあり、スキル研究局は思ったよりスムーズに解体できました。そこは感謝しなくてはなりません」
「まさか、アソコまで抵抗していたスキル研究局が呆気なく解体されたのは、そういうことだったのか」
厳蔵はスキル研究局の解体は四大家の力を持ってしても時間がかかると思っていたが、呆気なく解体されたのである。
「それと同時にあそこに癒着していた政治家を一掃出来たので私にとっては良い追い風となりました。マナ様は私にとっての救世主でもあるのです。そして、聖蘭の価値を見出したことで結果的に私の利となりました。私はマナ様によって支えられたと言っても過言ではないんです」
「それとワシが龍の肉を食べた事と何が関係あるんだ?」
厳蔵はまさか実の息子が聖蘭の友人のガチのファンだとは知らなかったのである。
「私はマナ様が食した怪物は全て潜行者に依頼を出して全て食しました。そして、その全てが正に絶品、その中でも『ボルテックロブスタ』は正に至高と言わざるを得ないエビでした。だからこそ、許せないのです。そのマナ様が食したという龍を食べられないことが・・・・・・」
「食べたのか!ダンジョンの怪物を!」
まさか、厳蔵は実の息子がそこまでするとは思わなかった。
「怪物の見た目は確かに食欲が失せる見た目をしています。しかし、マナ様はそんな私の目を覚ましたのです。我々の持つ常識とは既にあの大災害の時に壊れていました。だからこそ、その常識を破る一歩として私はマナ様が食した怪物を食しました。モスボア、ジビエの割に臭みもなく脂もしつこくなく爽やかで肉も柔らかい。そして、私にあった謎スキル【グルメ】その正体も分かりました」
東城寺龍壱も【グルメ】という謎のスキルを持っていたが元々、潜行者になることを諦めていたので気にも留めなかったのである。
「まさか、分かったのか!」
「ええ、聖蘭程ではありませんが、中々凄い能力です。一つが魔力の活性による疲労の回復、滋養強壮、もう一つが戦闘スキルがない私が持っても意味はありませんが、最後に食べた怪物のスキルを一時的に使えるというものです」
龍壱は幼いころにこの固有スキルを龍次によく「怪物でも食えば良いんじゃねえか?食えればの話しだがな」と弄られていたが、今思うと納得出来るところがあった。
それは生産スキルに共通することがダンジョン素材にのみ有効なことである。
そのルールに従うならば【グルメ】もまたダンジョン産の食べ物じゃなければならないのである。
「一時的ではあるが、食べたもので能力が変化するのか、確かに上手く使えば強力だな。だが、お前が使ってるのは疲労回復と滋養強壮の効果の方だろう?」
「ええ、これのおかげでいつも頑張って政治家としての仕事を真っ当に出来ています。全てはマナ様のおかげです」
龍壱は日々、政治家としての仕事で疲れていたが、【グルメ】の力に気付いてからは疲れてた日々が嘘のように充実してるのである。
「だからこそ、龍を食した父さんを恨むことにしました」
「いや、その理屈はおかしいではないか?聖蘭も食べていたぞ」
厳蔵は龍壱のおかしな理屈に当然意義を唱える。
「聖蘭は龍を倒した功労者の一人、当然食べる権利はあります。だから、私の恨みの対象外です」
龍壱にとって聖蘭は龍を倒した一人なので食べる権利はあると考えているのである。
「分かった、こうしよう。次があるかは分からないがまた、龍の肉が手に入ったらお前を呼ぼう、それで許してくれないか?」
「仕方ないですね。マナ様と妹に免じて許してあげましょう」
厳蔵は許されたので安心する。
そして、配信内で聖蘭の問題発言が発せられる。
「ところで、聖蘭は当時の父さん達が気の毒だといってますが?」
「・・・・・・考えたくなかったがワシの若い頃に似て来たな。ワシも当時はこんなクソガキだった」
「やっぱり、父さんに一番似てるのは聖蘭だったんですね。あの揺るがない闘志と不屈は私や龍次、龍未には持ち得ませんからね。あの狂犬がよくもまぁ、こんなに立派になったものです」
龍壱ですら、聖蘭が諦めが悪く触れるもの全てに噛み付く狂犬なのを知っている。
そして、その内に揺るがない闘志と不屈があることを見抜いていたのである。
「猟犬の型という戦闘の型なのは最近知ったが本人以外は再現不可能らしいな」
厳蔵は最近になって聖蘭の戦闘の型を知ったのである。
「猟犬ですか、それは確かに聖蘭にぴったりな型ですね。これなら確かに東城寺家は安泰です」
龍壱は聖蘭の型に納得すると同時に東城寺の後継者を聖蘭に任せる気満々である。




