D-アニマルズ始動
『深淵の樹海』の前で奏の配信が開始され、既に視聴者の数が十万を超えていた。
「さぁ、今回こんなイカれた企画に挑戦するイカしたメンバーの紹介をするよー。まずはカナカナの商売敵であり、『天才魔法剣士マナの攻略部屋』の配信主、猿さん担当のマナ」
「やっほー、お猿さん達ー。天才魔法剣士のマナだよー、今回は管理局公認であるカナカナちゃんのチャンネルにお邪魔して攻略していくよー。猿兼アタッカー担当のマナ、よっろしっくねー♪」
真那華は勢いよく元気に自己紹介をする。
『待ってたぜェ!!この瞬間をよォ!!』
『商売敵と言われてるのはスルーなのな』
『実際にカナカナちゃんのリスナーの一部はマナ様に流れたからな。間違いではない』
『ヒーラーやサポーターは攻略配信には向かないからな』
真那華のファンはそれぞれ好き勝手コメントで語っている。
「その眼光はまるで狂犬、狙った獲物は逃がさない、吠える相手は力によって黙らせる。犬さん担当のセイラ!」
「その紹介は気に入らないけど、やる事はしっかりとやるわ。犬兼アタッカーのセイラよ」
聖蘭は奏の紹介に文句を言いたかったが、我慢して挨拶をする。
『やっぱり、他の三人と違って装備の破壊力がやば過ぎる』
『アレのおかげでセイラちゃんのファンが一気に増えたらしいぞ』
『クールアンドセクシーで最高だろ』
『分かってはいたけどやっぱり犬担当なんだ』
『既に陸上でも人間の動きをやめたらしいな』
聖蘭はライダースーツのようなピッチリしたスーツの装備なのでその影響で男性ファンとそのクールな仕草から何故か女性ファンが増えている。
「その防御はまるで要塞、全てを阻み味方を守る、黒鉄姉妹の妹であり、亀さん担当のジュン」
「こういう挨拶、僕苦手なんだけど、とりあえず精一杯頑張るよ。亀兼タンク担当のジュンだよ」
『四人並ぶとやっぱりデカいな』
『凄く大きいです』
『身長の話しだよな?』
『両方だが?』
『姉も身長は高いけど胸は人並みだからな』
『そういえば、ジュンちゃんの頭の上に何かいないか?』
『アレがマナ様が言ってた生きてる盾か!』
『生きてる盾?意味が分からないんだが』
リスナーの一人が禍津玄龍の存在に気付くとコメント欄はその話題で溢れる。
「これはもう見せた方が早いわ」
聖蘭は潤に禍津玄龍を盾にする事を勧める。
「それもそうだね。禍津玄龍いくよ。変身!」
その時、潤は黒いもやに包まれ出て来ると暗緑色と漆黒の重装備が装備され緑鬼、そして漆黒と暗緑色の大盾が潤の手元に現れる。
「なんの装備もして来ないと思ったらこういう事だったのね」
「禍津玄龍が、僕の防具一式と緑鬼を取り込んじゃってね。そしたら、盾だけじゃなく防具一式と緑鬼まで出せるようになっちゃった。でも、真那華には言ってあるよ」
聖蘭は普段なら防具を装備して来る潤がして来なかったので違和感を感じて、質問したら、禍津玄龍の力により潤が望めば着脱可能となった。
『マジかよ。カッケー』
『盾だけじゃなく、装備一式に変化したぞ。そんなのアリかよ!』
『コレがマナ様が言ってた生きてる盾?話しと違う気が・・・・・・』
「ごめんね。その気持ち痛いほど分かるよ。ウチもまさかこんな事になってるとは思わなかったんだよね。禍津玄龍がジュンちゃんの装備一式取り込んだらああなったんだよ」
真那華もリスナー同様に話が違うという気持ちである。
『もう、なんでもありかよ』
『禍津の持つ権能の力で盾がああなったらしいぞ』
『無機物を生物に変えるってとんでもないな』
リスナー達は禍津玄龍への興味が尽きなかった。
「とりあえず、紹介が途中だからみんな落ち着こうね」
真那華はまだ紹介が終わってないのでリスナーを落ち着かせる。
「この展開はカナカナも予想出来てたかな。流石にカナカナでもそれは無視できないからね」
奏もリスナーと同じ立場なら無視できないことを告げる。
「それじゃあ、気を取り直して。このカナカナチャンネルの主にして、バフ系アイドルである鳥兼ヒーラー兼サポーターのカナカナだよー」
奏はやってなかった自分の紹介を済ませる。
「そして、四人揃って、ダンジョン・アニマルズ、略してD-アニマルズだよ!」
奏は四人のチーム名も紹介する。
『まさか、このタイミングでチーム結成したのか』
『ダンジョンを攻略していく動物だからダンジョン・アニマルズか、分かりやすいな』
『だから、担当の動物があるのか』
『あれ、でもここにいるのって全員A級だよね。S級いないと入れないんじゃなかったの?』
『そういや、そうだ。黒鉄燐がいるから入れるんじゃないのか?』
リスナーの一部がS級の存在がいない事に気付く。
「カナカナはその反応を待ってたんだよねー」
奏はリスナー達がS級の存在がいない事に気付くのを待っていた。
『え?そんな、まさか!』
『発表同時にいきなり投入するの!』
『流石に起源ダンジョンがS級初のダンジョンってなかなかヤバいな』
『そういえば、マナ様の兄という噂があるが』
『え?あの、神対応の管理局員がマナ様の兄?あり得ないって全然性格違うよ。俺対応されたことあるけど、あの人噂通りマジで対応が神だった。他の管理局員が相手してくれなかった雑事を短時間かつ丁寧にやってくれたからね』
『僕も話した事あるけど、あの聖人みたいな人がマナ様の兄とは想像出来ないんだよね』
真那華と承がネット上で兄妹だと話題に上がっているが、性格に天と地の差があるという理由で否定派が多いのである。
「言われてるわよ。マナ」
「それ、もう知ってる。本当にウチのこと散々言ってくれちゃって」
聖蘭も実際に言われなければ兄妹とは思えない程に性格の差がある。
「今回、奏達をサポートしてくれる。管理局員、宗像承さんだよー」
「既に知ってる人も多いと思うが、今回サポートを務める宗像承だ。あくまでサポートだから出しゃ張る真似はしない。故に俺への質問は受け付けてはいないことは理解して欲しい。質問があるなら直接、管理局の雑務課にメールをして頂ければ答えられる範囲で答えよう。メールアドレスは管理局のホームページの雑務課のページから確認できるようになっている。配信楽しんでいってくれ」
承はこの配信の主役は真那華達なので緊急時以外は出しゃ張らないようにしようと決めている。
『これ、絶対マナ様の兄じゃないだろ』
『対応が丁寧過ぎる』
『この人かなり弁えてるな。主役が誰なのか分かっている』
『でも、S級なら何が出来るかくらいは教えて欲しい』
「たぶん、それは配信中に嫌でも分かるんじゃないかな」
真那華はリスナーが余計なことを言わないように釘を刺す。
それは承なら、本当に実演しかねないからである。
「それじゃあ、気を取り直して、ダンジョン攻略やっていくよ。みんなダンジョンに突っ込めー♪」
真那華の合図で他のメンバー達もダンジョンに突入する。
ダンジョンに入りしばらく進むとモスボアの群れが見えて来ると聖蘭が先陣を切り突っ込む。
『速っ!?』
『一瞬だが、ヤバい目つきしてたぞ』
『獲物を見つけた目だ』
『カッコ良過ぎるわ。お姉様』
『セイラちゃんは何故か女性ファンが多いらしいぞ』
『分からなくはない。逞し過ぎるからな』
『ワイルドなのもあるな』
『いや、セイラちゃんの周りをよく見てみろ。』
『マナ様の【従魔剣】が追従してる!?』
聖蘭に追従させてる【従魔剣】は手近なモスボアを切り裂き、聖蘭は離れたモスボアを撃ち抜き、近付いて来るモスボアは【獣気】のオーラによる爪によって切り裂いている。
「うわぁ。即興とはいえよく合わせられるよね」
奏は聖蘭に合わせて真那華が【従魔剣】を操りながら取りこぼしを始末していっている。
『アレって本来、戦闘を回避するのが正解なんだよね』
『俺はそう聞いてるが』
『二人、特にセイラちゃんが強過ぎる。この子こんなに強かったのか!』
『真っ先に突っ込んで行ったからな。というか、素手でモスボア切り裂いてなかったか?』
「ちなみに聖蘭ちゃん、こいつは貴重な我が家の食糧だからね。あげないからね」
「別にいらないわよ。こんな気持ち悪いの」
「そう言って、セイラちゃんはちゃっかりしてるからなんだかんだ味を占めるとこっそり食べるんでしょ。龍の時にそれは知ってるんだからね」
「いくら、美味しいからって、この数は多過ぎ・・・・・・あ」
聖蘭は一人で特訓してる時に実はモスボアの肉を持ち帰って食べており、美味しいことを知っているのである。
「食べてるじゃん、しっかりと食べてるじゃん!」
「仕方ないじゃない、少し魔が刺したのよ!龍がアレだけ美味しいから、少し気になっただけよ。ジビエにしては獣臭くもなくて美味しかったわよ」
「それで、いらないと言っても説得力ないよ。欲しいなら欲しいと言った方がいいんじゃないかな」
「じゃあ、少しだけいただくわ。まずはこのジビエ共を倒してからね」
「そうだね。サッサとこのジビエの群れを片付けてやらないとね」
聖蘭と真那華は更に勢いを増して攻撃していく。
『この子ら、モスボアをジビエ料理扱いし始めたぞ』
『マナ様は知ってた。でも、セイラちゃんも怪物を食べるようになってしまったのか』
『龍を食べた事はスルーなのな』
『倒しただけじゃなく食ったのかアレを!?』
「うん、僕とマナとセイラで美味しくいただいたよ」
『ジュンちゃんも!?』
「カナカナも気付かずに食べてたんだよね。口の中に入れると蕩けるんだよ」
『龍を倒した三人は分かるけど、なんでカナカナちゃんも食べてるの?』
「ん?承さんと東京で一緒の任務に就いた時に食べさせてもらったんだよー。マナから龍の肉をもらったみたいでさ」
この奏の発言は有耶無耶になっていた真那華と承が兄妹だという動かぬ証拠になってしまった。
『これ完全にマナ様と今回S級の発表があった宗像承が兄妹だという決定的な証拠になってないか?』
『そもそも、東京から杜乃宮市って結構かかると思うが頻繁に帰れる任務だったのか?』
「承さんは空間移動するから物理的な距離なんて関係ないんだよねー」
「カナカナちゃん、ストップ、ストップ!!」
潤は喋り過ぎる奏を止める。
『空間移動って【空間操作】のスキルか?でも、あのスキルって失敗すると身体がバラバラになるリスクがあるから進んで使う奴なんて聞いたことないが』
『だが、それが出来そうなスキルはそれしかないんだよな』
『よく考えろ。相手はS級だ。俺達の常識の外にいる存在だぞ。むしろそれが出来るから、S級と言うべきだ』
『いや、同じS級でも燐さんや須藤管理官でもそれは出来ないでしょ』
奏が承の話しをした事により、一気に話題が承の話題となった。
それだけS級とは話題になる話しなのである。




