初めての敗北
聖蘭と潤は巨龍の弱点を発見し、対等とはいかなくとも戦えるようにはなっていた。
そして、瞑想に入ってる真那華は昔の事を思い出していた。
真那華と承が囚われた難易度不明の名称不明のダンジョンで真那華に敵う怪物がいなくなって来た頃だった。
「ねぇ、兄ぃ。もう、ウチらに敵う怪物なんていないからここで天下取ってもよくないかなー。だって、元の世界に戻れる見込みは今の所無いんだよ!」
「お前はそうかもしれないが、俺は諦めるつもりはないんだがな」
「もちろん、ウチも諦めるつもりはないけどさ。どうせなら一時でも天下とっても良くない!」
真那華と承は既にダンジョン内で争っている六種族すら容易に倒せるようになってしまった。
「既にそれは何度も六種族の族長みたいな奴倒してるから取ってるようなもんだと思うが?」
「そうだけどさー、もうこれで何周目のループかもう分からないけど強い怪物は倒せるようになったのはいいんだけどさ。でも、もっと強い奴と戦いたいよ!」
当時の真那華は負けなしなので天狗になっていた。
「そうは言うが、ここで何度もループしているその度にどんな変化が起きるか予想が付かないんだ。軽々しくそういう事は考えない方がいい。何処で足元を掬われるか分かったもんじゃないからな」
承は真那華と違い、凡人の自覚があるので基本的には勝てる見込みのある相手としか戦わない。
「兄ぃはつまらなくないのー」
「お前がいるだけで毎日が刺激的だからな。つまらない訳ないだろ」
承は毎回の事であるが真那華の厄介事に巻き込まれ大変なのである。
「え?そうなの?ウチが一緒で良かったねー」
「・・・・・・そうだな」
承は真那華の面倒事には巻き込まれるが、本人も口には出さないがこのダンジョンに飽き飽きしてるので悪くないくらいには思っている。
「・・・・・・それで、次はどんな素材が欲しいんだ?」
「兄ぃはただ見てるだけで良いからね。兄ぃがやると素材が残らないんだから」
当時の承は今以上に手加減が出来ない為、軽いデコピン一発だけで怪物を問答無用で素粒子まで分解してしまう。
「それは分かってるが、本当に何もしなくて良いのか?」
「いいから!兄ぃは手に入れた素材をしまってくれさえすればそれだけでウチは満足だから!」
「真那華がそれで良いなら俺は構わないが何の素材が欲しいんだ?」
「やっぱり、竜かなー。アイツらって身体全てが素材になるし、肉は劣等竜に比べて調理しやすい上に劣等龍より美味しいからね」
真那華にとって竜は滅多に食べられないご馳走である。
「竜か・・・・・・最後に食べたのは何ループ前だったか・・・・・・しばらく食べてないな」
「そうだねー、竜は中々出てこないレアエネミーだからねぇ」
「今回のループで出るとは限らないけどな」
「その時は一番簡単な条件クリアして戻ればいいよ」
このダンジョン内はある一定の期間を過ごすか特定の条件を満たすと初期位置である自宅に戻されるのである。
「その条件すら変化するから簡単かは分からないけどな」
そして、このダンジョンは怪物の種類、数、フィールドの構成がループの度に変化するのだ。
その度に特定条件も一部を除き変更されるので、真那華と承はループから簡単には出られないのである。
「でも、六種族の族長を全て倒すという条件だけは共通してたよね」
「その族長を探すのが面倒なんだが?特に鳥人と魚人と天使の族長なんて運要素が強過ぎる」
この三種族の族長は地上には滅多に来ないので運要素の意味合いが強い。
「それもそうなんだよね。ウチって天才だけど運要素だけは弱いからさー」
「いや、お前は運要素がないんじゃなく、すぐ顔に出るから分かりやすいだけだ」
真那華はカードゲームやボードゲームで勝った試しがあまりないのである。
「あー、それ言っちゃう?もういいよ。今日は勝手に探索進めてるから」
「まったく、困ったもんだ。特訓終わったら合流する。あまり、無茶はするなよ」
真那華と承はここで二手に分かれ別々の行動を開始した。
(今回はどんな相手がいるのかなー♪)
真那華は【感知】を利用し、周囲を探る。
(!?!?)
真那華は少し先に何かを捉えた。
(劣等竜が五匹・・・・・・こんな事ってあったっけ?そもそも集団行動してるとこなんて見た事ないけどね)
真那華はこの先にいる劣等竜の群れに違和感を感じた。
(まぁ、最近退屈してたし劣等竜五匹ならそれなりに楽しめそうかな)
真那華は|劣等竜の目の前まで辿り着くと真那華の存在に気付いた劣等竜達は真那華を威嚇する。
(うんうん、大歓迎されてるね。それならウチも期待に応えないとねぇ)
真那華は【従魔剣】を四本出現させる。
真那華は一匹の劣等竜との距離を詰め剣を突き刺す。
「【ウィンドスピア】」
剣先から放たれた風の杭は劣等竜の胴体を貫くと劣等竜はその場に倒れる。
(まずは一匹)
真那華は【従魔剣】二本を迫り来る二匹の劣等竜に突き刺す。
「そんな、慌てなくてもすぐに狩ってあげるよ。【ウィンドスピア】」
真那華は劣等竜を刺してる二本の【従魔剣】から風の杭が放たれ劣等竜の胴体を貫通し絶命する。
(これで三匹)
仲間達がやられた事で怒り出したのか劣等竜がブレスの予備動作に入る。
「へぇ、面白いじゃん。当ててみなよ。当てられるもんならだけどー」
劣等竜は真那華目掛けてブレスを放つ。
「予備動作の時点でどこ狙ってるかは丸分かりなんだけどね」
真那華は劣等竜のブレスをあっさりと避けてしまう。
「はい、ざんねーん【タービュランス】」
真那華は劣等竜に剣を突き刺し、刺した剣先から烈風の乱気流を発生させるとほぼ同時にもう一匹の劣等竜がブレスを吐こうとしていた。
「それ見えてるから」
真那華の操る四本の【従魔剣】がブレスを吐こうとする劣等竜に突き刺さる。
「それじゃ、バイバーイ【ウィンドカッター】」
劣等竜に突き刺さったそれぞれの【従魔剣】から風の刃が放たれ、劣等竜のブレスは不発に終わりそのまま絶命する。
(やっぱり、五匹いたところで竜と比べてしまうと大した事ないんだよね)
真那華は竜と劣等竜を比較して落胆する。
(今日も収穫なし・・・・・・か・・・・・・な・・・・・・!?)
真那華は【感知】を使うと今までに感じた事の無い魔力と気配を感じた。
(何これ!?何これ!何これ!!)
真那華の頭の中は新しい出会いにワクワクしている。
(この魔力、ウチが感じた事のある魔力で一番強いかも・・・・・・まだ、こんな奴がいたんだ!!)
真那華は魔力を感じる場所へ駆け抜ける。
(何・・・・・・アレ・・・・・・)
見た目はゲームでよく見るワイバーンタイプの竜だが、ワイバーンとの違いは全身が虹色に輝く鱗に覆われ首の周りは白金のタテガミのような毛で覆われ顔には目が四つ、よく見ると翼の翼膜が半透明でミラー加工が施されたように光が反射し、尻尾の付け根から長い尻尾が二股に分かれており、片方は先が三叉の槍のように尖っており、もう片方は手のような形をしている。
そして、竜と比べると一回り半くらい大きい。
その異形とも言える姿は明らかに真那華の知ってる竜ではなかった。
(それにこの魔力・・・・・・竜の倍どころじゃないよ)
真那華は魔力を【感知】するとその異形な龍は竜を遥かに凌ぐ魔力を持っていた。
その瞬間、その異形の龍と目が合った。
(・・・・・・! 目が合ったけど、襲ってこない?)
真那華の知る限り、ここの怪物は自分達の姿を認識すると基本的に襲いかかって来る。
例外は竜で、竜は縄張りに入らない限り襲う事はない事を承が確認している。
(竜の縄張りなら、既に襲って来てもおかしくない範囲には入ってるはずなんだけどなー)
この目の前の怪物は真那華を認識しながらも襲っては来ないのだ。
それはまるで敵意を向ける価値すら無いといった様子である。
(流石にここまで無視されると腹が立つかな)
真那華は既に異形の龍の前に姿を晒しているが、それでも相手にされて無いのであった。
(それなら、先制するしかないよねー。無視する方が悪いんだからねー)
真那華は相手にされない事をいい事に極級魔法を放とうとしている。
「【トールハンマー】」
真那華は雷の強大な鉄槌を異形の龍に放ち直撃する。
しかし、異形の龍には傷一つ無いどころかそれをくらってもなお、真那華を敵として見ていない。
「極級魔法が効かないのは想定外だったけど、まだまだウチには攻撃方法があるからね」
真那華は【従魔剣】を出現させ、異形の龍に何度も攻撃するが、異形の龍には傷一つ付かず、敵意すら向けない。
(ウチの攻撃が効いてないよぅ。だからってここまで相手にされないのは流石にムカつくかなー)
真那華は異形の龍が真那華に敵意すら向けないのは真那華が異形の龍にとって取るに足らない存在というより、龍にとって全ての生物が取るに足らない存在なのである。
何故なら、龍は自分の存在を脅やかす存在にしか敵意を向けないからだ。
「いい加減、こっちを見なさい!【穿突】」
真那華は異形の龍の鱗と鱗の間を狙い、全力で剣を突き刺す。
「【ダイヤモンドランス】」
真那華は、魔法の中で最も硬度が高い土属性の上級魔法を剣先から放つ。
その魔法が放たれた瞬間、異形の龍は真那華に敵意を見せた。
異形の龍の手のような尻尾に魔力で出来た巨大な刃が握られている。
これが後に真那華の使う【魔剣】の元となっている。
(あ、これヤバいかも!)
異形の龍はその刃を真那華目掛けて振るうと真那華は剣では防げないと判断し、回避に専念する。
(え?そんなのあり!?)
異形の龍は翼を広げ天へ登ると翼から光を乱反射したような複数の光線を放つ。
「いった!」
真那華は何とかギリギリ避けるがそれでもいくつかかすっている。
(流石にこれじゃジリ貧だね。あそこからなんとしても引き摺り下ろさないと)
真那華は【従魔剣】を操り何とか攻めに転じようとしていた。
その時、異形の龍はもう片方の尻尾にある三叉の槍が【従魔剣】に触れると【従魔剣】を吸収したのだ。
異形の龍が持つ三叉の槍には魔力を吸収する効果がある。
(ウチの自慢のスキルが通用しない!)
真那華にとって【従魔剣】はここまで生き抜いて来た自慢のスキルである。
真那華が異形の龍の攻撃をしばらく回避してると異形の龍は地面に降りる。
そして、次は刃と槍の波状攻撃を仕掛けて来たのである。
こればかりは真那華も避けきれず、槍が脇腹をかすめる。
「力が抜ける!?」
異形の龍の槍には傷付ける力が無い代わりに触れた相手の魔力と体力を吸収してしまう。
(・・・そういう事・・・あの刃もヤバいけどこっちも別の意味でヤバいじゃん。でも、アレなら剣で受け流すくらいならできそうかなー)
真那華は槍に関しては剣で防げないわけでは無いと判断する。
そして、その考えが甘かったと後悔する。
(やっぱり、防げない訳じゃ・・・・・・えっ!?)
真那華は膝からそのまま崩れ落ちるように倒れる。
真那華は意味が分からなかった。
ただ、何度も尻尾の槍を防いだり受け流しただけだったのである。
そして、真那華は気付く。
(武器ごしからでも吸収出来るって反則でしょ)
大きな外傷という外傷はないが、体力が尽き倒れたのである。
既に真那華は立ち上がる体力すら残っていない。
異形の龍は真那華の魔力を吸い尽くすべく槍の方を真那華に突き刺す。
(・・・痛みはないけど・・・・・・意識が・・・・・・遠のいてく・・・・・・このまま、死ぬのかな。・・・・・・ごめん、兄ぃ・・・・・・言う事・・・聞かなくて・・・・・・マジで・・・・・・)
真那華の意識はここで途絶え、目が覚めるとそこは自宅の布団の中だった。
「ああ、やっと起きたか。このまま起きないんじゃないかと心配したぞ」
真那華はアレから約三日ほど目を覚まさなかったと承に聞かされた。
「まったく、無茶はするなと言ってるだろ」
「うぅ、マジでごめん兄ぃ。ごめんね。兄ぃ」
真那華は承に抱き付き泣いている。
それに対し承はどうすればいいか分からず困った表情をした。
「真那華、これやるよ」
承は真那華に骨のような素材を渡す。
「え?何これ?」
「お前が死にかけた相手からの戦利品だ。俺が持ってても仕方ないからな」
「・・・・・・兄ぃにしては珍しいね」
真那華にとって承が素材を残して敵を倒すのは最早、奇跡とも言えるのである。
「やはり加減は難しかったが、少々敵も強かったからギリギリその素材だけは残った」
「ハハ、兄ぃからするとアレで少々なんだ・・・・・・やっぱり、理不尽だよぅ」
真那華ですら倒せないほど強い相手を少々と語る承がいかに理不尽な力を持っているか真那華は改めて思しらされた。
「これに懲りたらもう無茶はするなよ」
「うん、分かった。でもね、次こそは負けないから!いや、もう絶対に負けないから!」
「・・・・・・そうか、頑張るのはいいが無茶だけは絶対にするなよ」
「うん!」
真那華はこの龍との戦いを機に誰にも何者にも負けない事を誓った。
そして、絶対に負けない為の力【戦乙女魔装】を【技能研究】で生み出し、最終戦闘形態【戦乙女形態】へ変身出来るようになった。




