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悪役令嬢の弟ですが、姉の婚約者の執着王子様に甘いお菓子で餌付けされています。  作者: 藤海さや


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12/24

12 悪役令嬢に問い詰められる。1



 アリシアによれば、ゲームには『イベント』と呼ばれる出来事があり、それをこなすことで攻略者の好感度が上がり、ハッピーエンドに進めるのだそうだ。

 そして、僕に関する『イベント』は基本的には学園の中庭であるこの場所で起こるらしい。鍵となるのは、薔薇の花だとか。


「双子の姉である悪役令嬢と家族から虐待され続け、学園の庭園に逃げ込んで傷ついたカミルと偶然会った主人公。

 主人公はカミルを癒やすために、手作りのお菓子を持参し、この薔薇の花が咲き誇る庭園で一緒にお茶をして過ごす。そこで、一緒の時間を過ごすうちに主人公の優しさにふれて、カミルの心は癒され芽生える恋心。

 カミルの好感度がある程度上がると、口元にお菓子を持っていけば、照れながらも『あーん』で食べてくれるようになるんだ。そのスチルのカミルが小動物みたいで、もう可愛くて可愛くて。そのシーンだけ何度もリピート再生して見てたよ。

 いやでもやっぱり生カミルたんの破壊力の方がすごかった~。とにかく、カミルたんは究極の癒しキャラで、こっちの精神状態もその笑顔で回復させてしまう力があって……」


 フランツがうっとりとした表情で説明してくれているが、途中から何を言っているのか理解できなくなり、僕は首を捻った。

 とりあえず、『ゲーム』の世界の僕は、攻撃魔法も回復魔法も使えるハイスペック魔法使いだということは分かった。


「気持ち悪いわね。あんた、さては『カミル』信者ね? カミル推しの奴らってストーカーじみた変態ばかりなのよね。キモすぎるのよ」


 フランツの説明を遮り、アリシアがドン引きした様子で言う。


「なんかそれ、すげー偏見じゃね? 俺は単純にファン心理なんだけど……」


 フランツが不満気に呟く。


「……他の攻略対象のファンは、イケメンアピールしたファンアートとかで、キャピキャピした交流して応援してんのに、カミル信者は、調教方法として有効な餌付けのやり方情報交換したり、『カミルたん性奴隷化計画』なんていう痛い妄想まで垂れ流すオタク集団でしょ。

 そもそも、第一王子ルートでカミルが男娼にさせられるのは、やっぱり腐女子連中も含めて一定数そういう需要があんのよ。虐待されて可哀想なのに、健気な美少年をさらに貶めて愛でたいって願望があるわけ。

 それを公式設定にするあたり、製作陣も業が深いわ」


 アリシアが鼻息荒く力説しているが、内容が難しすぎて僕はますます困惑した。知らない単語ばかりが飛び交っていて全く意味が分からない。

 フランツは胸を押さえて呻いている。アリシアの言葉にダメージを負ったようだ。


「……いや、俺は基本的に女の子好きだし、カミルをそんな目で見てはない……」 


 フランツがボソボソ自分に言い聞かせるように呟くと、アリシアが冷たい視線を投げかける。


「はあ? カミルを膝の上に乗せて興奮してたくせに、何言ってんのよ」

「すみません! カミルなら余裕で抱けます!!」

「開き直ってんじゃないわよっっ!!」


 アリシアがフランツの脛を思いっきり蹴飛ばした。


「痛ってぇ!! 姉さん、ひどいっ?! 暴力はんたーい!」


「とりあえず、『ゲーム』の世界ではカミルは確かに虐待されてたけど、今のこの世界じゃうちの家族にカミルは激愛されてるからね? あんたカミルに無理矢理手出すのやめてよ!? うちの父親、心臓発作おこして倒れるわ」


 僕はアリシアの言葉に胸が痛くなった。家族に愛されてるのに、僕はアリシアを裏切っていることになるんだ。


「まぁ、今この世界でカミルが幸せに暮らしてるんなら、俺としては別にいいんだけど。それより、さっきのレオの話……」

「それね、カミル!」


 アリシアから名前を呼ばれ、僕はビクッと身体を震わせた。


「あんた、レオンハルト殿下とここで何してたか、全部吐きなさい」



***


 アリシアが眉を吊り上げて詰め寄ってきた。

 ここで王子にされていることはアリシアには秘密にするよう王子に口止めされている。それはつまり、婚約者には言えない行為を僕たちはイロイロしているということだ。僕は冷や汗をかいた。


「何って、お菓子食べたり、お話したり……してました」

 僕は慎重に言葉を選んだ。嘘はついていない。


 僕の返答を聞いてフランツが「コレ何……? 正妻と愛人の戦い? 双子で1人の男取り合うってもしかして昼ドラ? 古くない!? しかしレオの奴、マジか。下道だな。こっそり何やってやがんだ。やっぱりカミル餌付けしてんのか。うらやま……」と小声でブツブツ呟いていたが、アリシアが睨むと黙った。


「殿下はあんたからの好感度上げるために、意図的にここに呼び出してたと思うのよね。殿下を締め上げたけど、抵抗されて全部吐かなかったわ。この間も聞いたけど、カミル、あんたほんとにそれ以上殿下に何もされてない? されてるでしょ?」


 アリシアが王子を締め上げたとか、怖いことをサラッと言ったが空耳だろうか。何かされている前提でアリシアの質問が続く。


「お菓子くれるからってノコノコついて行って、変な命令に従ってたりしないでしょうね?」


 アリシアが腕組みをしたまま、ギロリと僕を睨みつける。僕は思わず後ずさり、視線を逸らした。


「そ、そんなことしてない」


 王子からは毎回甘いお菓子を与えられるが、そのために会っている訳じゃない。お菓子を貰えるから、彼の命令に従っている訳じゃない。

  

 でも、もしかしたら王子はそう思ってないかもしれない。僕を従わせるために、甘いものをくれるのかもしれない。そう考えると胸が苦しくなり、涙が出そうになる。

 

 アリシアは僕の態度を見て、額に手を当て、ため息をつく。


「分かったわ。とりあえず、先にこの男を問い詰めるわ」


 そう言うとアリシアは、脛を撫でながら地面に座りこんでいたフランツの襟首を掴み上げ、彼を無理矢理立たせた。

 

「ぐえっ」

 フランツが苦しげな声を上げる。


「なんで、あんたは『シャルロッテ』としてこの学園に編入してきたのよ」

 フランツは、アリシアの詰問に溜息をついた。

 







 

「……それこそ、レオに聞いてくれよ。俺はレオに命じられただけだ。……『シャルロッテ』に成り代わって、この学園に編入しろって」

   


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