第一話 さよならとこんにちわ
満月に照らされた闇の中、二人の少女が空を舞っていた。
『お前だけは、絶対に殺す!』
黒髪の少女は黒炎の槍を無数に出し白髪の少女に投げつける。喉元を狙うその槍に白髪の少女はコウモリの悪魔をぶつけた。コウモリにより多くの槍が止められるが、そのうち一本がそのままの勢いで飛んでいく。白髪少女は横に飛び回避しようとするが槍の軌道は避けきれない。そして空に赤が舞う。
『ヴァルテ様、ご無事でよかったです。』
『ヴァルテ、お前味方まで!』
その白髪の少女、ヴァルテへの一手は、彼女に届く前に青い髪の黒いねこみみパーカー少女で止められた。肉の焼ける痛みに桃色の瞳をガンバラきながら必死に無理やり耐える。
『よくやったわね、バルバドス。』
ヴァルテの一言に安堵してバルバドスは薄れゆく意識と共に大地へと惹かれ、そのまま還っていった。
『そんな死に方、ないだろ。』
愚痴に近い言葉を吐きながら、天見充は漫画を膝の上に軽く叩きつける。気が抜けてそのままでいると、ポケットに振動を感じた。
[えっと、大丈夫?]
見ると友達からのメールだった。
[大丈夫だと思う?大切な人が死んだんだよ?]
[まぁだよね。まさかあまみんの推しが死ぬなんて思わなかったし。』
[前回仲間になるフラグ立てといてこれだからもう何をする気にもならない。エリス様がバルバドスの力使うところがもう見れないのが辛い。]
[あまり出番のないキャラにここまで思い入れてるのあまみんぐらいだよねー。そんなに辛いなら推しとの生活生存イフでも描いてみたら?]
[錦江湾の底は綺麗だよ]
[なんで急に殺そうとしてくるの!?]
[まず好きになったんだからしょうがない。次に推しが自分と絡むのは解釈違い。あくまでその世界で幸せになって欲しい。最後に推しの物語を自分で作るのは失礼な気がする。]
[・・・そんだけ好きなんだということがわかったよ。推しが死んだから飛び降りるとかはしないでよ?]
[しないよ。なんとか受け入れていくように努力するよ。]
そう打ったところで、降りる駅に電車が止まったことに気づき、慌ててカバンを持って電車から出た。
(と言っても、しばらくは受け入れられないや。)
歩きながら思う。僕にとってエリス様が最近の生きる希望だった。彼女がいなくなった羅針盤世界を読んでも、他の作品を見てもその穴は埋められないだろう。
(あの頃から変わんないな。推しがいなくてもいいようにしなくちゃ。)
ふとその時。天から何か冷たいものが降って気がした。
『雨かよ。』
まるで今の気持ちだと吐き捨てながらこれ以上濡れないように夕暮れの世界をかけた。
・
・
・
・
マンションの部屋の前に着いた頃にはもう乾いてるところを探す方が難しいほど濡れていた。
(今日は最悪な日だ。)
そう思い鍵を刺そうとした時。
ガタッ!!
『え?』
まず僕は一人暮らし。そして誰も家には呼んでないし家の場所を知ってる人もいない。まさか泥棒!?
恐る恐る鍵を開け、猫のようにそっと家の中に入る。暗いはずの部屋から光が漏れていた。僕は警戒しておいてあった傘を持ち、そのまま部屋に突撃した。
『あっ、おかえりなさい。』
『・』『・』『・』???
自分の目が信じられず頬をつねる。だって目の前に見えるのは青い髪で白髪パーカーで桃色の瞳の、
『はじめまして、エリス=イェーガーと申します。』
推しがそこにいたから。




