清夏
「深海の青春」
僕はずっと夏が
つまらないって思ってた
風も音も届かない
深海のような暗い青春
君はそんな僕を笑って
僕の手を引いて 深海を共に泳いでいた
涼しい海風の歌が 波のざわめきが
君の世界に響いていた
青春はきっと つまらないものなんかじゃない 僕は君の青春に、 君の夏に惹かれてるんだ
「君の夏」
風がささやく夏
紫陽花が咲く坂道を 駆け下りていく君が
語った夏の計画
「流星群見に自転車で2時間走ろう」
なんて突拍子もないこと言って
僕を驚かせて 笑ってたな
僕にとってくだらないものも
君は手に取って眺めている
そんな君を見ていると
僕の気持ちも夏の終わりも 全てが軽く見えてきて
孤独とかどうでも良くなるな
「陽炎」
夕焼けが包む教室の中で
君が雲を指でなぞっていた
そんな君が儚くて 輝いてて
君が消えてしまいそうで嫌だった
君は小さく笑っていた
風はないが 君の影が
陽炎みたいになびいていた
「清夏」
夏の終わりを見届けようと
君が 僕の手を引いていく
坂道の枯れた紫陽花が
夏の終わりを物語っている
君は気にも留めず 僕の手を引き続ける
君と僕が初めて出会った
あの丘の上で星を眺める
もう夏は終わりだ
僕は日常に戻り 君は君らしく生きていくんだろう
そんな僕に君は言った
「また、次の夏に会おうね」
「思い出」として残したくない
僕の心を見透かすような 君の瞳が星のように明るい
夏の終わりを見届けながら 小さく頷いた
夏が僕らを呼ぶ日まで 僕らはこの日を思い出すだろう