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愛しています


遊ぶことはできず、

勉強ばっかの日々。

お茶会などでみんなのお話を聞くのが、

とても悲しかったわ。



もちろんみんな淑女教育で大変だろうけど、

話題はオペラに行った、美術館に行った、

家族で別荘に行った、だの、

私には経験のない事ばっかりだったわ。




正確にはオペラや美術館には行った事があるのよ。

でも勉強のために行っていたから、あんなに楽しそうに話せる思い出じゃないの。

別荘だって私達は公爵家でたくさん持っているけれど、領地が大きくて、お父様とお母様は多忙。


そして私とお姉様は淑女教育+サルビア家の教育。


家族みんなそんな暇なかったわ。

それでも私やお姉様が、この厳しい教育を頑張ることができたのはお父様とお母様のおかげよ。

お父様とお母様も、この厳しい教育を受けてきたからこの辛さを知ってる。

(お母様は公爵家の令嬢だったから、家の教育も元から厳しかったらしい。嫁いできた後に、サルビア家の教育も受け、淑女教育などは終わっていたのもあるけれど、初めて習うことも多いはずなのにたった2年終わらせたらしいわ。)


私達が大事だからこそ、死なせないために、心を鬼にして、教育に関してはなんにも口を出さなかったそうよ。

(きっとジニア様、ポーラ様を信用していたのもあったのね。)


お父様やお母様は毎日お忙しいはずなのに、朝食、夕食は必ず一緒に食べてくれて、


マナー的にはよくない事かもしれないけれど、喋りながらワイワイ楽しくお食事をしてくれたの。


辛くて、泣きたくなることも多かったわ。


でも私達はサルビア家は、家族以外の前(使用人や侍女、婚約者にも)では決して涙を見せてはいけない。


弱みを晒す事は危険が伴うからだ。


みんなを信頼してないわけではなく、どこから情報が漏れるかわからない。

細心の注意を払う必要がある、ということらしい。


お茶会や夜会に行った日、すごくお勉強が大変だった日、そんな日はその場で泣き出してしまいそうだった。


感情をコントロールして、悲しくてもポーカーフェイスをし、泣きたくても何気ない顔で我慢した。


そういう訓練もあったから容易いことだった。


けれどその分、散りが積もっていくのよね。


ある日侍女を下がらせた途端、糸がプツっと切れたように涙が溢れてきたわ。


誰にも知られないように声を押し殺して泣いた。




すると私が泣いているとわかったのか、すぐにお父様、お母様、お姉様がやってきて、何も言わずぎゅっと抱きしめてくれたの。



びっくりしたけれど、私も何も言わずに抱きしめられながらただただ泣いていたわ。

(安心して、余計泣いちゃったのはここだけの話よ?)




どんなに大変で辛くても、家族からの愛を受け、





明るく、気さくな使用人のみんなにも支えられ、




そのおかげで私は「ベル・サルビア」として誇りを持って生きることができるようになったわ。





お父様、お母様、お姉様、サルビア公爵家に仕えてくれてるみんな、そして私。




大変で辛いことも沢山あるけれど、きっと私やお姉様が嫁ぐまで、


いや嫁いだ後も、厳しけれど、どこよりも暖かい、サルビア公爵家が続いていくものだと思っていた。








でも、









それは唐突に終わりを迎えた。












強く雨の降る夜だった。




雷も遠くで鳴り始めるほど。



その日は2週間の領地視察に向かっていたお父様とお母様が帰ってくる日だった。



嵐が来そうな天候に、何か嫌な予感がしていた私はお姉様と一緒に、2人の帰りを待っていた。



しばらくすると馬車が近づく音が聞こえてくる。 



しかしいつも聞こえる馬車の音とは違く、すごく急いでいるようで、



何かあったのかと、私達は急いで降りようとしたが、



侍女が外に出してくれない。



何かただならぬことが起きていることを知って、



体術に長けていたお姉様が力づくでドアを開け、



私達は玄関に急いで向かう。










すると、






そこには、









赤く染まった人が4人。










明らかに重症な血だらけの2人の騎士が、それぞれ人を抱え、必死に医者を呼べと叫んでいる。






抱えられてる人達は、ぐったりとしていて、











そして、その人達は紛れもなく、













お父様とお母様だった。












ベラ・サルビア8歳、



姉、ユリ・サルビア18歳の時、











父、スノーク・サルビア36歳。



母、ラン・サルビア33歳。













帰ってきた2人は、







2週間前までの姿とは変わり果て、






強く握りしめた手が、






握り返されることはなく、






恐ろしい程に冷たくなっていた。


次から王太子partに入ります。

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