第006話 殲滅 Ⅲ
銀座4丁目に向かう。
遠くでドラゴンがブレスを吐いている音が聞こえる。
ちらりと音の方を見ると、昔怪獣映画で見たまんまの光景。
東京の空に怪獣が飛んで口から熱線を吐いている。
違いは首が3本じゃ無いってだけだ。
すごい。
城門は昭和通りの東銀座3丁目。
歌舞伎座のすぐ裏だ。
ここの城門もバリケードで埋まっていた。
自衛隊が塞いだのか。
歌舞伎座はかろうじて残ってるが、こんな高層ビルだったか。
建て直したのか。
いずれにせよ、また建て直しは必要そうだ。
昭和通りも、その下のアンダーパスも魔物の死体で埋め尽くされてる。
晴海通りも同様だ。
おそらく従魔にした連中も混じってるだろう。
道路は全く地面が見えない。
死体の中に自衛隊員の服が混じっているのが見えた。
手を合わせておく。
まだ戦闘中なのだ。
あちこちでマシンガンとヘリの機関砲の音が聞こえる。
だが、おそらく残党狩りも、もうじき終わるだろう。
数寄屋橋。
魔王城の周りをほぼ一周したことになる。
従魔の残りをスキルで確認する。
残念ながら、百数十匹、いや百は今切ったか。
わずかな魔物とドラゴンを残すのみだ。
ドラゴン以外は今もみるみる減っていく。
力尽きたか。自衛隊の攻撃に巻き込まれたか。
いずれにしても残ることはないだろう。
敵を従魔化して利用しただけだ。
思い入れなどは無い。
ただドラゴンは強すぎるだけに、敵や自衛隊の戦力で死ぬことはないだろう。
敵殲滅後は人のいない島を探し、そこに住み着いてひっそりと暮らすよう念話で指示した。
ーーーー
問題は、魔王ディプロニスだ。
おかしい。
何故出てこない。
あれだけの戦力を準備しておきながら殲滅されるに任せている。
何故だ。
城に居るのは判っている。
何をしているのか……
調査しなければなるまい。
ーーーー
有楽町の城門前へ戻る。
城は沈黙している。
「何かがおかしい……」
ふと違和感を感じて、城から距離を取るため日比谷交差点へ向かう。
振り返って見る。
「ま、まさか……」
急いで、俺が落ちてきた最初の場所、二重橋前に走る。
そしておもむろに振り返る。
「な、何ということだ……」
そこからは、土煙が完全に晴れた魔王城の全容を見ることが出来た。
但し、あちらの世界で見た状態の魔王城ではなかった。
二重橋前から見た魔王城は、その高さの3/4より上の塔の部分、便宜的に2階といっておくが、その2階部分が消滅していた。
そう、魔物が大量に格納されていた1階部分だけが残されていた。
俺は膝から崩れ落ちた。
「やられた……最初からこのつもりだったのか……」