第005話 殲滅 Ⅱ
しかし巨大だ。
どこまでこの城壁は続くのか。
常盤橋や日本銀行は魔王城の下敷きだ。
城壁沿いに竜閑橋から神田駅南口を抜ける。
中央通りは城に潰されている。当然日本橋も。
昭和通りも走って渡り抜け、堀留町。ここは水天宮通りだな。
そこから水天宮方面を見ると魔物が溢れている。
水天宮から南側の蛎殻町や茅場町は、やはり城の下だ。
ひどい。日本橋の町並みはことごとく潰れてしまった。
50年ぶりだから、昔の面影は既に残ってなかったかもしれないが、瞼に浮かんだ昭和39年の東京オリンピックの頃のあの町並みはもう見る影もない。
「くそっ……」
人形町からも溢れつつある魔物を、通りに沿って切り捨て、雷魔法で殲滅していく。
「おおおおおおおぉぉ……」
水天宮前の城門をひとまず破壊し塞ぐと、浜町に向けて新大橋通り沿いに極大火魔法を放つ。
一瞬で新大橋から森下まで溢れつつあった魔物を焼き尽くし、即座に清洲橋通りを左に入り、二発目の火を放とうと構えた。
こちらも魔物で溢れていた。
遠くに何かが飛んでいる。
自衛隊のヘリだった。
4機の自衛隊ヘリがミサイルと機関砲で殲滅していく。
すばらしい。街中での機動力はヘリが一番なんだな。
「清洲橋通りは任せても良さそうだ。」
浜町公園の方は、川から上陸した自衛隊員がマシンガンを掃射していた。
流れ弾避けに物理結界を張って斬り込み、そちらを加勢する。殲滅。
自衛隊もなかなかやるな。
よし、移動だ。
ーーーー
月島に来た。若い頃もんじゃを食べに来た場所だ。
初見橋交差点近くに城門があった。
柱の残骸に佃大橋とかいてあるが、陸橋は既に落ちていた。
ここの城門は既に死体と瓦礫で埋まっていて用をなして無かった。
ここも戦闘機が爆撃したんだな。
動いている魔物も、チラホラいるが、警官と自衛隊員が対応していた。
念のため、城門は太陽光収束で塞いでおく。
清澄通りもドラゴンと戦闘機があらかた殲滅した後だ。
相生橋は落ちていた。魔物を門前仲町側に渡さないために戦闘機が破壊したんだろう。
佃から晴海通りを越えて豊海まで魔物の死体で埋まっていた。
おそらく晴海や豊洲の方も同じだろう。
豊洲の新東京火力発電所は無事だろうか。
あの大きかった6本の煙突が見えない。
破壊されてしまったのだろう。
日本が誇る東洋一の巨大石炭火力発電所だったのに……
晴海通りに勝どき駅と書いてあったが、こんなところに駅ができてたのか。
地下鉄かな? 大丈夫なのか? ここは埋め立て地だろうに。
俺たちが子供の頃から憧れていた未来の技術なんだろうか。
ベレー帽の漫画家の先生が昔描いてたような、電車が走るパイプが海の中にあるのだろうか。
未来。
いい言葉だな。昔から大好きだった言葉だ。
素晴らしいな。
月島商店街は大量の魔物の焼死体が民家の1階を越える高さに連なっていた。
死体が無くとも、どこでもんじゃを食べたかなんて判るわけもなかった。
50年の重みを感じる。
さあ、最後に銀座4丁目あたりの城門を見に行こう。