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第001話 転移

 

 俺は異世界人。地球からの転移者。

 この世界での名はルート。以前は相月透(あいづきとおる)という名前だった。

 歳は69。このペンゴア大陸のとある国に召喚されてから50年が経つ。

 老いてはいるが強大な魔力を纏い、この世界最強の魔法剣士たる力と技は健在だ。

 今が絶頂期と言っていい。

 それは、常に奴を滅ぼすことを目指し、自身を鍛え上げた結果なのだ。

 そして、長い年月を経て幾多の魔物を殲滅し続け、今やっと魔王城にたどり着いた。


 惑星ペンゴアは、青い海と緑の豊富な星だ。

 その表面のほとんどが海で、その中に巨大な緑の大陸を1つだけ持つ。

 大陸の名もペンゴアと呼ばれる。

 すなわち、ペンゴアと呼ぶときは星と大陸の両方の意味をもつ。

 また、この惑星ペンゴアは地球のものより遥かに大きい月を1つ持っている。

 その月の名はマーガレット。偶然にも地球の花と同じ名前だ。

 月以外にも惑星創成期に出来たと思われる細かく砕かれた月の欠片が帯状に漂っており環を形成している。


 おかげで夜は幻想的な夜空を眺めることが出来る。

 宇宙から見たら、まるで青い土星のように美しく見えることだろう。


 そして、ここはペンゴア最大のポンベリウス火山、別名『死の火山』。

 この火山の溶岩は『死の溶岩』と呼ばれ、魔力を喰らうと言われている。

 その山麓は、溶岩と魔物が危険過ぎて誰も近寄らない深い『死の森』だ。


 今、俺はそこにいる。


 若い頃、この森の中でよく修行をしていた。

 死の溶岩に常時魔力を吸い取られながら魔法を使い続けることで、莫大な魔力量を得ることが出来たのだ。

 要するにマラソンランナーがトレーニングのために空気の薄い高地で走るのと同じ理屈だ。


 その森の中で俺はとうとう発見した。


「やっと追い詰めたぞ。魔王ディプロニスよ。」


 この森に潜んでいたとは気づかなかった。

 いや、気づけなかった。

 確かにこの火山近辺は、魔力による探知が利きづらい。

 それでこんな場所を選んだのか。


 その壁は黒く、一辺3キロメートル四方と長く、高さは50mはある。

 その城壁の内側上部には漆黒の塔がいくつも見えている。

 城というよりは要塞か。

 圧倒的な巨大さと異形の佇まいに不気味さを感じる。


 森の木々に隠れながら黒い城壁伝いに進むと、ひとつの開いている城門を見つけた。

 静かに忍び込み剣一閃、数十の衛兵を薙ぎ払いつつ中に進む。

 突き当りにあった大きな扉を静かに開き、部屋に入った。

 薄暗い中、じっと目を凝らす。


 その光景に俺は慄然とした。


「こ、これは……」


 部屋の内部は先が見えないほど広い空間で、動かない魔物が何十万、いや、何百万と並んでいた。

 みかけの城の広さを遥かに上回る、広大な空間がそこにあった。


「よくぞ、我が『時空城』へたどり着いた。」


 後ろから突然声がした。

 振り向き様に最大剣速で切りつけた。


「無駄だ。」


 俺の剣は空を切っただけだった。

 魔王ディプロニスがそこに居た。

 一万年前からペンゴアに存在し続けている災厄の象徴とも言える存在だ。

 どうやらこの空間ではどんなスキルも魔法も通らないようだ。


「亜空間結界だからな。」

「ここは何だ。このふざけた数の魔物はいったい何だ。」

「もうあまり時間が無いのでな。簡潔に言うと侵略軍だ。」

「侵略軍?」

「この世界にはとうに見切りをつけていたのだ。」

「準備は整った。我はこの軍団とともに異世界転移し、順次征服してゆくのだ。」

「異世界だと?」

「長い間お前とは戦ってきたが、いい時間稼ぎにはなったぞ。」

「何を…… いったい何処へ転移するというんだ。絶対逃がさん!」

「特別に最初の目的地を教えてやろう。」

「…………」

「お前が生まれた世界だ。」

「何!」

「おっと時間だ。では新天地へ行こう。お前とはここまでだ。無駄足残念だったな。」


 時空が突然歪み、渦を巻き始める。

 この感覚は…… そうだ、俺がこの世界に来たときと同じだ。


 逃がさん。

 俺の50年を無駄にするわけにはいかない。

 そして、地球を渡すわけにはいかない。


 50年前の感覚を記憶の底から拾い出し、持てる限りの魔力で転移渦に同調する。


「くっ……意識が、と、飛ぶ……」


初投稿です。

初回は10話投稿。

その後は16時投稿で。

出来るだけ土日除いて毎日投稿出来るように頑張ります!

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