白楽亭(2)
更新遅くなってごめんなさい!
「そんなに驚かないでくれよ、仮にも王立魔法学園を志望してるんだ。これくらいのことはできて当然だよ」
「いやいやいやいや!!!王立騎士団に頼んでもダメだったのに....!それを簡単に抜いちゃうなんて....!」
「王立騎士団が来たのか??」
「うん....魔法をかけられてからすぐ行ったんだけど....これは無理だって匙を投げられて....だからありがとう!!あなたは命の恩人だよ!!!」
メアはそういうと初めて、心底嬉しそうに笑った。
嬉しそうに笑うメアとは裏腹に、シオンは強烈な違和感に襲われていた。
(王立騎士団ともあろう者たちがこの程度の魔法剣を抜けれないはずがない...)
そう、魔法剣は簡単な能力強化魔法、それも第2階級魔法が使えれば破壊できるような魔法なのだ。
魔法はその特性によって6つに分類される。身体強化魔法、生活魔法、攻撃魔法、防御魔法、治癒魔法、特異魔法の6つだ。大まかにこの6つに分類され、そこからさらに木、火、水、闇、光、無属性の五つの属性に分類されるのだ。
無属性以外の属性は生まれつきの適性がなければ使うことのできない魔法であり、この属性魔法行使の適性がある、そのだいたいが貴族である。
その上で、それぞれの魔法にはその行使難易度によって階級がつけられている。下から第1階級、第2階級と続いて第5階級まで存在するとされている。このように曖昧な表現がされるのは人類が到達した最高領域の魔法が第4階級であるためだ。
しかし、この魔法剣を抜くのに必要なのは身体強化魔法のうち、無属性魔法の第2階級魔法。魔法の適性がなければ難しいが、王立騎士団の一員とあれば、身体強化魔法の才に秀でたものは必ずいるはずであり、第2階級魔法など簡単に使えるはずなのだ。
「メア、騎士団はベイルに関して何か言ってたか?」
「うん、懲罰を与えるって言ってたよ!」
「なるほど....」
恐らくその懲罰は執行されてない可能性が非常に高い。
(ベイル=アイゼルドート....アイゼルドートの名前か.....)
恐らく、騎士団に対してベイルは多少の影響力を持っていたのだろう。騎士団に対してなんらかの根回しがされていなければこの状況は考えられない。
わずかに芽生えた憤りを抑えるようにシオンは手にした剣を握りしめた。
「お客様.....」
弱々しい声の先にいたのはメアの父と母だった。もう意識は戻ったようだが、まだ足元はおぼつかないようで、メアの母がそれを横で支えていた。
「お、お父さん!!」
そんな父を支えようとするメアを手で制し、メアの父はまっすぐシオンの方を見た。
「わたしはここ『白楽亭』の店主、ガルドというものです。宿を救っていただいた上に、私にポーションを使っていただいたとか....この度は本当に、ありがとうございます。感謝を.....」
ガルドが頭を下げるのに対して、シオンも頭を下げることでそれに答えた。
「いえ、むしろいきなり上がり込んで、大変失礼しました。事情があってポーションは多く持っているので気にしないでください。怪我が多少なりとも良くなったのなら何よりです」
「よくできた御仁だ....あなたはこの白楽亭と私の命の恩人です。どうぞ心ゆくまでこの白楽亭にいらっしゃって、私共に恩返しの機会をください」
「お言葉に甘えたいのは山々なのですが、どうにも懐が心許無くて....2、3泊させていただいたら学園の寮の方に住まわせて頂こうと考えています」
「そんな!命の恩人に宿賃をいただくなど滅相も無い!好きなだけいらっしゃってください!お金はいただきませんよ」
「いやでも....」
「気にしないでください!むしろお金をいただくほうが悪い気持ちになります」
シオンにとっては願っても無い話だったが、ここ最近まで客の入らない状態だった宿に堂々と無賃で泊まれるほどシオンは恥知らずではなかった。
だが、ガルドはそう簡単に折れてくれるようなたまでもないだろう。
「....長くお世話になると思いますので、これからの長い間の宿代としてこれを受け取ってください。それで僕の気持ちとしても整理がつきますので」
そういうとシオンはガルドに金貨2枚を手渡した。本来宿泊するはずの2泊分である。
当然、シオンは2泊分行こうの宿代も王都で稼ぎ、白楽亭に対して支払うつもりでいた。
だが、こうでも言っておかないとこのガルドはお金を受け取ってはくれないだろう。
「.....わかりました。不服ではありますが、この先の宿代としていただいておきます」
ガルドは渋々といった様子で、その金貨を受け取った。
「ではこれからお世話になります」
「もちろんですとも。遅ればせながら、ようこそ、『白楽亭』へ」
シオンの差し出した手をガルドはしっかりと握ったのであった。
これからも少しずつ頑張っていきますのでよろしくお願いします。