英雄の門出
初めまして、投稿ののペースは遅いかもしれませんが、続けていくつもりなのでよろしくお願いします。
ある朝、教会で一人の青年が人生の門出を迎えようとしていた。彼の名はシオンという。年は今年で17になる。非常に端正な顔立ちをしているのにもかかわらず、目に届くほど長い白髪の前髪のせいで、どこか地味な印象を漂わせていた。
「それじゃあ行ってきます」
シオンは自分を十七年間育ててくれた叔母であるマリーを見た。彼女は目に涙を浮かべながらも必死に笑顔を浮かべていた。
シオンが騎士になるという夢を抱き、それを応援しつづけてきた。その門出で涙はいけないと思ったのだろう。
「風邪には気を付けるんだよ」
「母さんもね」
マリーはしばらくの間無言でシオンを抱きしめると、やがてその手の力を緩めた。
シオンが再度マリーの顔を見たとき、涙は残っていなかった。
「行ってらっしゃい」
「....行ってきます」
背を向け歩き出すシオンを見ながら、マリーは次々と流れ落ちる涙を拭った。
「大きくなったねえ」
シオンは捨て子だった。教会前に捨てられていたのをマリーが見つけ、教会で育てたのだった。
神と結婚した身である自分が一生縁のないと思っていたものである息子を持つというのは大変不思議な経験だった。憎たらしいときもあった。くだらない理由で喧嘩も数知れずした。いったいどこがかわいいのだろうと何度も思ったものだった。だがいつからか、彼の寝顔が愛おしくてたまらなくなり、成長を喜び、母となっていた。
頬にとめどなく流れる熱いものを感じながら、マリーはいつまでもシオンの背中を見送った。