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出会いは小説より奇なり  作者: 不知火 和寿
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こんな出会いがあったらいいな

初めて小説を書いてみました。


自分で考えたものをカタチにするのが初めてなので拙い部分がほとんどだと思いますが、いつも妄想している世界の話をこのように現実世界に発信出来ることに喜びを感じています。


色んな方に読んでいただき、アドバイスや感想をいただけると嬉しいです。




「はじめまして、灰田さんですか?」


花柄のワンピースに白い麦わら帽子をかぶった女の子が僕に話し掛けてきた。


夏も終わりに差し掛かり、なんとなくノスタルジックな空気が漂い始めたそんな季節だった。


「あ、はい…もしかして、ルカさんですか?」


僕は緊張し、声を震わせながらも答える。


彼女とは親友の太一に薦められたいわゆる「マッチングアプリ」で知り合った。


『写真と実物だと3割減くらいの人が来るからあんま期待するなよー』


親友の太一からアドバイスをもらってたが、とんでもない。想像以上だった。


彼女はショートボブにゆるくパーマをあてた綺麗な茶髪で、目は大きくはっきりとした二重で、20歳にしては幼さが残る顔立ちだった。


背はそこまで高くはなく綺麗というよりは可愛い系だった。


そして彼女が近づくと、ほんのり甘い香りがした。


「とりあえずお茶でもしましょうか?」


彼女は落ち着いた口調でそう促す。


「あ、はい…」


僕は従うことしかできない。

カッコ悪くて死にそうだ。でもこんな可愛い人前にしたら緊張してうまく喋れないよ…

もう帰りたい…



カフェに着いてから、ひとまず注文を済ませ、僕らは席に着く。


僕はよく分からなかったので緊張しながら、『水出しアイスコーヒー』を彼女は『キャラメルモカフラペなんとか』を挨拶をするかのごとく簡単に注文した。


席に着いてからも、僕の緊張が収まることはなく、うまく喋れないままだった。


そんな僕を見かねてか、彼女は突飛なことを言ってきた


「そんなに緊張しないで…わたし、この世界の人間じゃないんですから。」


僕は意味がわからず、ただ黙ってしまう。


「あたし、実は魔法使いで魔界から人間界に遊びにきてるんです。

人間界の人が大好きだから、灰田さんとお会いできるのすごい楽しみだったんですよ!」


僕は困惑していた。多分それが顔に出てしまったのだろう。


彼女は慌てて訂正した。


「という妄想をよくするんですよー、あはは」


浮世離れしたジョークに思わず僕は吹き出してしまう。


「なんだよ、その話…」


「あっ、やっと笑ってくれたね!」


屈託のない笑顔で僕の方を見ながら彼女が言った。


その後も彼女の浮世離れトークは続いた


「魔界を脅かす悪の組織【ダークエメラルド】との魔界戦争は本当に想像を絶する戦いだったんですよ~」


「それは壮絶な闘いだったんですね。ダークエメラルドの黒魔術は強力ですからね。」



そんな話をしていると僕の緊張は嘘のように消え、その浮世離れした魔法トークに乗っかれるようになっていた。


ちょっと電波入ってる子だけど、めちゃくちゃ可愛いし、この子と付き合いたい。


僕は本気でそう思っていた。


僕の緊張を解くために奇妙なジョークで笑いを取るようなそんな優しさにも惹かれていた。



まさか作り話だと思っていた魔界トークが嘘偽りのない真実の話だとはその時の僕は一ミリも思っていなかった…


☆   ☆   ☆


「聞いてくれよ、めちゃくちゃ可愛い子だったんだよ。ほら写真も可愛いだろ?」


僕は講義中にも関わらず太一に熱弁していた。


「こんな可愛い子が出会い系やってるわけねぇだろ。あれだな、きっと性格やべぇ奴だろ。」


太一は冷ややかだった。


太一とは高校時代には毎日のようにくだらないことをやって笑い合っていた。


男子校だったのでお互い彼女もいなかったし、下ネタやら馬鹿話をして大盛り上がりしていた。


しかし大学入ってから太一には彼女ができ、少し疎遠になっていた。


「20ハタチまでには童貞卒業しような」


高校の卒業式の帰り、俺たちは高らかに誓ってからもう何年かが経った。


太一は早々に目標を達成したにも関わらず、僕は…


しかしそんな僕にも圧倒的なチャンスがやってきた!


神はこのために僕に苦行を強いてきたんだ。

今ならそれがわかる。


「んで、どんなこと話したんだ?」


太一はスマホに目をやりながら聞いてくる。


「えーっと…魔界の話…とか…」


太一は目を輝かせながら


「そら、お前。とんでもねぇ電波ガールじゃねぇか!

そっかー、圭祐も魔界に手を出したかー」


太一は小馬鹿にしながら言ってくる。


「違うんだよ、きっとユーモアあふれる子なんだよ!

可愛くて面白いとか最高だろ?」



僕は必死に言い返す。


「まあ頑張れよ。魔界に連れていかれねぇよーになー」



☆   ☆   ☆



「それでね、魔法学校の教官は恐ろしくて、何か悪いことしたりとかすると24時間石にされたりとかしてたんだよー。」



2回目のデートにこぎつけたが、魔界トークが尽きることはなく、前よりも熱を増していた。


「そういえばルカさんは社会人なんですよね?お仕事は何やってるんですか?」



他の話題に移そうと試みるも



「へ?さっきから言ってるじゃないですか!魔女ですよ!魔界で一番大きい魔女会社で働いてるんだー」


とまあこんな調子だ。



せっかく映画に行ったのに映画の感想そこそこに続く魔界トーク。



「魔界トークはそろそろ終わりにして、まじめに話ししましょうよ!」


こう言えばいい、ただそれだけなんだ。

なのにその言葉が出てこない。


「お前、女の子と話すの下手くそだからなー」と太一に言われそうだが、僕だって女の子とそれなりに話してきたし、女友達だっている。


ハタチまでに童貞卒業を掲げて以来、テニスサークルに入ってみたり、合コンに行ったりしたこともある。


でもここまで可愛い子はいなかった。


無理だ…こんな可愛い子と話せるだけで幸せだもの。

魔界トークだっていいじゃないか。

そう自分に言い聞かせていた。


今日話せただけで、あと一ヶ月は幸せに生きれる。そうだ、そう考えよう。


「じゃあ、そろそろ帰ろっか、今日も楽しかったなー。また遊ぼうね!」


「う、うん。じゃあまた今度…」


今日も特に成果はなく、男らしいところも見せられないまま終わってしまった。


それでも彼女は屈託のない笑顔で手を振り続けてくれていた。


僕はモヤモヤした気持ちのまま、帰りの電車のホームへと歩いて行った。


続く

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