第2話 選ぶスキルはこれ一択です
次の日、目がさめると、枕元には雑誌のようなものが置いてあった。俺にはすぐ分かった、これが神様の言っていた資料であると。
俺はワクワクした。あの夢は、やはりほんとうの出来事だったのだ。
さっそく資料を開いてみた。
そこには、俺でさえ見たことのないスキルが大量に載っていた。さすがは、ユニークスキルといったところか。
まずはじめに目に付いたのは、【勇者】というスキルだ。たしかに強力である。
ユニークスキル【勇者】
〔条件〕
○特になし
〔効果〕
○HP、攻撃力、防御力、スピードが、それぞれ1000に固定される。
○魔族との戦闘時、能力値の補正極大。
○ただし、獲得した通常スキルは、3種類までしか効力を発揮できない。
ちなみに、成人男性の能力の平均は、
HP 20
攻撃力 35
防御力 22
スピード18
くらいであることを考えると、【勇者】というスキルがいかに優れているのかがわかる。
ほかにも魅力的なものが多くあった。例えば、
ユニークスキル【魔剣生成】
〔条件〕
○【鍛冶師】のスキルがランク中 以上であること。
〔効果〕
○【鍛冶師】のスキルポイントを得る確率が大幅上昇。
○剣を生成する際、付与効果を3つ付けることが可能。
○生成する剣の威力の基礎値を補正大。
ユニークスキル【ソードマスター】
〔条件〕
○【剣術】のスキルのランクが中 以上であること。
〔効果〕
○【剣術】のスキルポイントを得る確率が大幅上昇。
○金属の棒状の武器を使用する際、自動的に使い方をマスターし、瞬時に使いこなせるようになる。この効果は【剣術】のランク極大 に勝る。
などなど、通常のスキルでは考えられないような強いスキルがたくさんあった。
しかしその中でも、ダントツで魅力的なユニークスキルを見つけた。俺以外であれば、このスキルを生かすことは難しいだろう。
そのスキルとは、【スキルセレクター】である。
ユニークスキル【スキルセレクター】
〔条件〕
○特になし
〔効果〕
○スキルポイントを得た際に、それを使用せず保存することが出来る。
○所持しているスキルポイントを、任意のスキルに割り振ることが可能。その際、スキルポイント割り振りを行う対象も選択可能。
一見、なんてことのないスキルに見える。しかし、このゲームでは、スキルポイント獲得と同時に、勝手にさまざまなスキルにポイントを割り振られてしまうのである。
だから、例えば望んでいないスキルが手に入ってしまうこともあれば、ランクを上げたいスキルがあるのに思うように上がらないこともある。
加えていうなら、このゲームでは、種族ごとに、入手可能なスキルの数が固定されている。これをスキル枠という。例えば人間なら5つ。スライムなどの弱小魔物なら1つ。などである。
一度手に入れたスキルは、決して削除不可能なため、どんなスキルを手に入れるかが非常に重要となる。
つまり、【スキルセレクター】があれば、望んだスキルを望んだままに入手可能、そしてランク上げもスムーズにできるというわけである。ゲームをやり尽くし、膨大なスキルの知識があるからこそ、この【スキルセレクター】が最大の威力を発揮する。
俺は既に、どんなスキルを手に入れるか、その手順で目標を目指すのか、までほとんど決めていた。
興奮で胸が高まる。ゲーム時代、いいスキルが手に入るまで何度も何度も何度もやり直した。セーブとロードを繰り返す日々。どの魔物を倒すとどんなスキルポイントの割り振られ方をしやすいか、という傾向まで研究した。
それが、1発で自分の好きなものだけを得られる。
そして最終的なゴールとして、あのスキルとあのスキルを組み合わせれば、理論上無敵だ。そのコンボを作るまでが苦労するが、、、。いや、やってやる。このゲームを極めた俺になら出来るはずだ。
あの夢にまでみた必殺のコンボを作り上げた時、比喩ではなく俺は無双出来る。
だが、俺の性格上、目立って暴れまくるのは好きじゃない。最強でありながら上手に実力を隠し、ゆったりと楽しむこととしよう。
さて、選ぶユニークスキルはもう確定だが、あとは転生する体のステータスを選ぶ必要がある。転生といっても、今の体のまま、ステータスだけ調整して送り込むと言った方がただしい。だから、転生半分、転移半分といったところだろうか。
選ぶステータスだが、もちろん高い方がいいに決まっている。神様にもらった資料の、選択可能なステータス一覧を眺めていくと、やはり上の方に書いてあるステータスの方が高い。おススメということだろうか。
とりあえず予想できることは、転生者は俺だけではないということ。俺だけしかいないのであれば、そもそもこんな資料など作る必要はないのだから。
それにしても、ステータスに差があるなぁ。
例えばいいものだと、
HP 56
攻撃力30
防御力42
スピード29
などがある。
弱いものだと、
HP8
攻撃力19
防御力12
スピード30
などである。
もちろん俺が選ぶのは、上の方、、、。
ではないのだ。俺には狙いがある。どんどんリストの下の方まで見ていく。そして、、、。
見つけた!!
そう、これが俺の求めていたステータスだ。
HP2
攻撃力9
防御力6
スピード8
もはや、先程の弱い方、の例よりもずっと弱い。完全なる下位互換。
だが、俺が目指す夢のコンボのためには、これを選ぶしかない。
あとは、転生の日まで、俺は目標を達成するための計画を立てていた。
選ぶユニークスキルも完全に決まっていたし、他にも同じような転生者がいた時に、対策しやすいよう、ほかのユニークスキルも全部メモして、理解した。
さあ、まずは三年間、貸切のダンジョンで夢を叶えるとしようか。正直、この三年が勝負である。他の冒険者に邪魔をされないダンジョンほど魅力的なものなど他にはない。
必ずやこの三年で目標を達成する。そう誓って、最後の地球での夜を過ごした。