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異世界のんびり生活  作者: 鏡つかさ
第1巻【異世界】
5/9

第5章『もう一人の……』

すでに読んだ方見逃してください。


ちょっと整理してます。


 ……………


 …………………………?


 な、なんか。


 体重いぞ。


 ……息苦しい。


 爽やかな朝日が射し込むその納屋で、俺は目を覚ました。


 瞼を無理やり開くと、なにか胸に重いことに気付いた。


 毛布を捲ると、そこですやすやと気持ち良さそうに眠っている少女がいた。


 その仄々とした光景に、俺は微かに微笑みながら盛大なあくびをした。


「おい、

 そろそろ起きろうよ、

 アリス」


 と、優しい声で、俺ーー鍵山拓也が胸に眠っている少女に告げた。


 俺の優しい声に、アリスと呼ばれたその少女が目を開いた。


 寝ぼけたまま、頭を上げると、口から滴る涎が見える。


 クスッと俺は笑う。


 それから親指で涎を拭った。


「パ、パ? 

 どうして、ここにいるの?」


「ここに住んでいるから」


 しょぼしょぼする目を擦りながら、アリスは低く唸る様な声を発した。


「そうなの? 

 ごめんなさい、パパ。

 忘れてたー」


「なぜ謝ってるの? 

 ってか忘れてた? 

 いや、それより、腹減ったか」


 俺の質問に、小さな体にあまりにも大きすぎるTシャツだけを着たその少女が頷いた。


「よし。

 じゃあ、なにを食べたい?

  精一杯作ってやるぜ」


「ドラゴンテール」


 と、アリスは即答した。


 俺はクスッと笑う。


 すると、


「ドラゴンテール?

 昨日食ったぞ。

 ほら、他にあんのか」


 俺が言うと、アリスは考えこむかのように天井を見上げた。


 すると、


「うん、

 じゃあ、甘いもの食べたい」


「甘いものか?

 まあいいけど、

 まずパパの胸から降りてくれ」


 俺が聞くと、アリスは俺の胸から離れた。


 すると、柔らかい床から体を起こし、俺は伸びをした。


 さっき体を襲った疲労感が溢れ出てきた。


 すっきり、俺は娘の小さなお手を摑んで玄関へと導いた。


 娘の拓也アリス(似合うかな?)


、年齢:十歳。


 職業:無職。


 長く滑らかな金髪に、蒼穹を見上げるような印象を与える水青色の瞳。


 搾りたてのミルクのような繊細で白い肌、十歳の少女の無邪気な雰囲気。


「そういえ、みんなは?」


 俺が訊くと、


「……………」


 反応はない。


 ん?


 おかしい。


 まあ、別にいいけど。


 俺らは納屋を横断し、玄関へと着いた。


 すると、俺は力を入れ、ドアを開けた。


 そしてやはり、太陽が眩しすぎて目を細めずにはいられない。


 そしてそのとき、


「あ、マスター」


「マスター」


「旦那さま」


 と、3つの異なる声が聞こえた。


 順に、ましろ、アゼリア、そしてグループに入ったばかりのアリサ。


 全員がこっちに来た。


 すると、


「チッ」


 と、アリスは舌打ちをした気がするが、うん…気のせい気のせい。


「みんななにやってんの」 


 俺が聞くと、ましろはこう答えた。


「粉とか他の食品が切れたみたい」


「あ、なるほど。

 そりゃ困るなぁ」


 そうか。


 粉とか他の食品が切れたか。


 でもそりゃ大丈夫。


「じゃあ、

 ちょっとイレナ行きたい気か? 

 せっかく金をたくさん手に入れたし」




 瞬間移動。


 空間を歪めることにより、俺は物体を離れた空間に転送したり、自分自身が離れた場所に瞬間的に移動したりすることができる。


【ゲート】と、俺がそう呼ぶ。


【ゲート】を経て、俺たちはイレナに来た。


 そしていま俺らはイレナの繁華街、町の中央にある噴水の前に立っている。


「さぁて、考えよう。

 俺は新しい服を買いたい。

 逆にアリスは魔法書、

 アリサとましろは肉、

 そしてアゼリアは団子……そうだよな?」


 女の子たちは一斉に頷いた。


 それに俺はため息を漏らすと、顳顬(こめかみ)を揉んだ。


「目標を果たすために分かるしかないが、

 みんなはどう思う?」


 俺が聞くと、女の子たちはお互いに顔を見合わせる。


 なにを考えているのかさっぱりわからん。


 もちろん、俺の【内心窃盗(ソォートゥスティール)】ーー少なくとも俺がそう呼ぶ【読心術】を使ったらすぐにわかるけど……やめたほうがいいと思う。


 人の心を抉るなんてそんな考えだけでムカつく。


 あ、でも相手は敵なら躊躇わずに。


 俺は首を振った。


 すると女の子たちに向かった。


 そして気づいた。


 みんながこっちを見ているってこと。


 つまり、


「決めたか?」


 一斉に頷く女の子たち。


 俺は微笑んだ。


 微笑みながら、


「で、みんなはどうする」


 と、聞いた。





 結局、分かることにした。


 俺は一人で、イレナの街を彷徨っている。


 目的地は服飾店。


 こっちの世界に来てからずっと同じ服を纏っている。その服は俺の制服だ。


 せっかく半神になったのに。


 少なくともカッコイイ服を買いたい。


 なにか悪いか?


 あ、そういえば、ついでにあいつらも新しい服を買ってやる。


 なにがいいかな。


 ましろは……………


 やはりなにも考えつかん。


 はぁ〜


 じゃあ、帰る前にみんなをついてくる。


 そう。


 それが一番。


 みんなが喜ぶかな。


 いや、なにを考えているの、俺?


 そりゃ 当たり前のことだろう。


 うん。


 問答無用だ。



 しばらく歩くと、やがて服飾店を見つけた。


 まだ読めないけど看板を飾っているロゴからわかりやすい。


 俺は中に入って周囲を見回すと、流石に服飾店だな。驚きを禁じ得ない。見渡す限り販売用に被服品と装飾品が棚に広げられていた。


 さて、何にしようかな。


 俺が呟く。


 すると、見て回り始めた。





 はぁ〜


 満足だわ〜


 新しい服を買った後、俺はイレナの街を彷徨うことにした。


 どれくらい時間が経ったのかわかんないのだけれど、いつの間にか夕方になってきた。


 そういえ、みんな一体なにしてるのかな〜


 控えめに言ってもかなり気になっている。


 まあでも、みんなが楽しんでいる限り嬉しい。


 アリス、ましろ、アリサ、アゼリアーーみんな強いから心配してるわけじゃないのだけれど、一人でいるとちょっと寂しい。


 ほら、病院に閉じ込められた頃、みんなに見捨てられたってさ。


 最初から友達なんかいなかった。


 家族に見捨てられたんだ。


 毎日俺を訪れるって言ったのに。


 最初は、俺たちの約束を守ってくれたが、日が経つにつれて崩れ始めた。


 結局のところ、破ってしまった。


 人生は邪魔になったとわかってるが、もし守れないのなら何故最初から約束したんだ?


 どう考えてもおかしいんだろう?


 そういう人がマジで嫌い。


 その考えだけで吐きそうになる。


 本当に腐った世の中だと思う。


 まあでも、ここは『あの世界』ではない。

 

 完全に別の世界だ。

 

 あの世界と違ってここの住民は優しそうに見える。


 とは言え、アゼリアと初めて出会ったとき、俺を殺そうとした。


 ましろも。

 

 彼女と初めて出会ったとき、兄と喧嘩したみたい。


 アリスまで。


 ……………


 俺はかすかに微笑んだ。


 我儘だぞ、俺。


 気まぐれで彼女を救っていない。


 全てが俺のものにしたい。


 最近、こういう感じは多い。


 全てを支配したい。


 全てを破壊したい。


 全てを、


 俺のものにした。


【できますよ】


 突然、声が聞こえた。


 それは……俺の声だろ?


 俺は首を振った。


 気のせい気のせい。


【気のせいではありません】


 ……………


【もうわかってるでしょう、

 きっと】


 ……………誰だ?


【誰だって……

 ボクは君、君はボク。

 一心同体ですよ】


 ふざけんじゃねぇぞ。


 そんなことを信じるか。


【あ、でも事実ですよ。

 君にはまだ早い。

 けど、時間が経つにつれて、

 きっと現実に目を開く】


 まあいい。


 早く消えろ。


【そんなこと言われても、

 それは無理です。

 一心同体って言ったでしょう?

 つまり、ボクら死に臨んでもずっと一緒。

 あ、そういえば、ボクらは不死でしょう?

 死ねない。即ち……】


 もういいだろう?


 早く消えろ!


【愚かな者な、我が分身。

 いいです。

 とりあえず、放っとくよ。

 でももうすぐ、ボクの力が必要になる。

 安心して、素直に譲るから。

 けれど、今のうちに目を開くほうがよい】


 ……………。


【それでは、ご機嫌よう……】


 ………………。


 すると全てが終わった。


 



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