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魔王ですが勇者を育ててます  作者: かなめ ちま
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長年の疑問が解消した瞬間

 私は、洞窟の入り口で降っている雨を見る。

 どうやら、この世界でも梅雨はあるようね。

 昨日から振り続ける弱い雨がうっとおしい。

 結界魔法とかは、使えないのかしら。

 ふと、思い立った私は、右前足を前に出して言った。

 「シールド。」

 あれ? できてない?

 前足を包むような、ほのかな暖かさ。

 恐る恐る前足を雨の中へ出す。

 やった! 濡れてない。

 一旦解除して、今度は体の上に傘をさすようにイメージして。

 「シールド。」

 いい感じ、私はもう一度前足を出す。よし、濡れないね。


 私は、意気揚々と洞窟から出る。雨が体を打つ感覚はなんとなくあるが、濡れて冷たく感じることは無い。

 なにこれ? ちょっと楽しい。

 そうだ、このままベリーの実を取りに行こう。


 私は、巣から離れたベリーの群生地まで走った。

 他の動物には合わず、群生地までこれた。

 瑞々しいベリーを味見。美味しい。

 お腹一杯食べたら、みんなにも持って帰りたくなった。

 どうしよう?

 しばらくかんがえて、斬撃で実を落とし結界でくるんで背中に乗せることにした。


 巣に戻ってみんなにお土産のベリーをあげると喜んでくれた。

 ママは叫んでたけど。

 「ファムどうしたの! そんなに泥だらけになって。」


 そう、傘のようにシールドを張ったから、足元やお腹が跳ね返った泥でドロドロだった。

 失敗。体を包むようにシールドをかけるんだった。


 川で洗おうかと外を見ると、雨脚が激しくなっていた。

 「ママごめんなさい。ベリーが食べたくなって。」

 私は、ママに謝りながら洞窟の奥へ走って行った。

 洞窟の奥は、迷路みたいに狭い通路もあって、ママでは入れない通路も私なら楽々入れる。


 その狭い通路の1つで、私は、思いついた魔法をかけていた。

 「リフレッシュ。」

 うん、疲れが取れたけど、汚れは取れてない。間違えたみたいだ。

 「クリーン。」

 私の足やお腹についていた泥は、一瞬で消えた。

 やっぱり、普通に魔法が使える。

 でも、なんだか眠い。

 あわてて、私は仲間の元へ戻った。

 シールドをかけている間中、魔力を使うことに気付いたのは、夢の中だった。


 次の日は、晴れていた。

 「ママ、晴れてるよ。人間を見に行こう。」

 フォンがママに言った。

 「先に腹ごしらえをしましょう。みんな、足跡を付けづに巣からでれる。」

 みんなは、得意げに頷いた。

 実は、私はこれが苦手だった。

 でも、シールドを地面に引けば大丈夫な気がする。

 「ママ、私もやってみる。」

 今、私はママに咥えられている。

 フォンのバカにしたような顔に蹴りを入れたい。


 「ファム、練習することは良いことよ。でも、足跡から巣の場所がばれると危険なの。練習は巣から遠ざかってからにしてちょうだい。」

 ママはシールドを知らないから、大人しくすることにした。


 巣から離れた茂みの中。ママが小さな声で囁いた。

 「ここから、7つの魔力の塊がわかる?」

 僕たちはみんな、頷いた。

 「自分の力で狩れると思う獲物に気配を消して近づいてね、雨上がりだからいつもより慎重にね。」


 私は、シールドをかけようとして、思い出した。

 「例え親子、兄弟でも自分の能力は見せびらかしてはダメよ。」

 と、ママから言われていたことを。

 悲しいかな、大きくなると親子、兄弟でも敵対することがあるらしい。

 現に、今私とフォンは争っているしね。


 気配を頼りに、走り出す。後ろを振り返ると足跡が残っていた。


 ママから体調が悪い時に食べると回復する草や木の実を教えてもらった。

 私は、魔力が多くない。だから、マナナ草という、魔力を多く含んだ薬草を探す。

 『魔法が使えるんだったら、ポーション作成よね』という、良くわからない衝動に駆られ魔法を教えてもらった時から薬草の見分け方を学んでいた。

 その甲斐あってか、どうやら『鑑定』スキルが身に着いたようだ。

 ある時を境に、急に目の前のものが『わかるよう』になった。


 ステータスとか、ステータスオープンとか言ってしまったのは内緒だ。何も起こらなかったし。


 鑑定には、魔力はいらない。

 しかし、やっぱりシールドには必要みたい。

 ママから離れてシールドを張るようになってから

 マナナ草をかじって魔力回復を図る。

 斬撃でも魔力を使うけど、私は最初良く魔力切れで倒れた。

 最近では、ちょっと減ったと思ったらすぐにかじるようにしている。


 かじったら、シールドを張りそっと獲物に近づく。

 わお! 魔力が多いと思ったら、コーボバッファローだ。

 ひとこぶラクダの様に背中にコブがある、牛肉に似た味がする動物。

 だが、まだ小さい。群れからはぐれた子供は狩られるんだよ。


 「アクアカッター。」

 まだ子供のコーボバッファローの首は簡単に切り落とされた。

 頭は、土に埋める。どうせ全部は持って帰れないから、ここで半分食べよう。

 ハグハグ食べていたら、ゴリっという触感がした。

 ペッと吐き出したら、金貨が出てきた。


 よく、ゲームをしてるとモンスターがドロップするコインって不思議じゃなかった?

 私は、「なんで、モンスターがコインを持ってるんだよ。」とか、思いながらゲームしてた。

 モンスターに生まれてわかったよ、モンスターって基本料理して食べ無いから消化に悪い。

 その、消化を助けるために、硬い物を食べるんだけど、この世界では人の命は軽い。

 残った装備品を胃石がわりに食べるんだよ。当然コインもある。


 まあ、ゲームみたいに必ずコインを持っているわけではないけど、ママに『消化に良いから食べなさい。』と金貨の入った袋を貰った時は、やけに納得して、気分がすっきりした覚えがある。

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