もふもふパラダイス
ゆる~い感じで不定期連載します。
暖かい目で見守ってくれたらうれしいです。
最後の記憶は、『実家で飼っている、ミーちゃんともっと仲良くなりたかった。』だった。
我ながらしょうもない願いだと思うが、人間死ぬときに何を考えるかなんて解らないものだ。
最初の記憶は、『暖かい』だった。
暖かいもふもふに囲まれて幸せだった。
お腹が空いたら、もふもふすると美味しいミルクにありつけた。
お腹が一杯になったら、もふもふに囲まれてお休み。
正直言って、天国だと思ったね。
そんなパラダイスに浸って気が付いたら、目が開いていた。
周りを見渡したら、黒いもふもふがあふれてた。
クロネコパラダイス、私の兄弟達だった。
ママは大きくて、しっぽが4本あった。
猫の魔物バステトだった。
兄弟を紹介します。
長男:フォン(3本)
長女:フェイ(2本)
次男:フウ (2本)
次女:フィナ(2本)
三女:ファム(1本)
私は三女のファム。しっぽが1本しかない。
正直に言って、眠っている姿は区別がつかない。
ちょっと大きいのが、フォン。
その他は起きて動くとわかるんだけどね。
暖かい季節になり、私たちは巣から出て狩の練習をする。
もう、ミルクはおしまいだ。
実は、私。兄弟で一番狩が上手い。
「ママ見てみて。3匹も小鳥が取れたの。」
「まあ、ファムは凄いわね。」
ママがにこにこしながら、私を見て頭を毛づくろいしてくれた。
「俺の方が大きいぞ。」
フォンは何かと私に突っかかる。
「ファムもフォンも凄いわねぇ~。」
フェイはおっとりしたお姉さんタイプ。険悪な雰囲気が流れて行った。
「ママ、食べたい。」
「ママ、食べていい?」
フウとフィナはマイペース。
でも、私もお腹が空いているので、ママを見る。
ママはにっこり笑って言った。
「いいわよ、骨や羽を喉に詰まらせないように食べなさいね。」
「「「「「はーい。」」」」」
前足で器用に羽を取り除く。
前世の記憶からか、塩コショウで焼きたい衝動に駆られたが、そのまま食べた。
私は小鳥を2羽食べたらお腹がいっぱいになったので、1羽をフェイにあげた。
「ファム、ありがとうねぇ~。」
夜は冷えるので、みんなで体を寄せ合って眠った。
私の幸せな記憶の一部だ。
私たちが、ママの半分ぐらいの大きさになった時、ママが言った。
「そろそろ、体が出来てきたから魔法の訓練をしましょうね。」
え? 魔法? 魔物は魔法が使えるの?
私は、ワクワクしてキラキラした目をママに向ける。
他の兄弟達も同じようだ。
「そうよ、秋になったら独り立ちするんですもの、魔法の練習を始めても良い季節だわ。」