1人飲みの僕は気が付けば2人飲み。
僕は毎週土日に1人行きつけの近くの飲み屋さんで飲んでいる。
行きつけのお店なので、お店の店員さんとも物凄く仲良くなり
その日の店員さんのお勧めの料理に、生ビールを頼んでのんびり
自分のペースで寛ぎながら飲むのが僕のステータスなのだ。
ほろ酔いになりながら店員さんと他愛のない話をして盛り上がる。
でも、その日は違ったのである。
カウンター席で、若い女性が僕の隣に座って1人で飲んでいた。
見慣れない子だなと思っていたら? ここのお店に来たのは
はじめてだと言う。
彼女は僕とも少し仲良くなった。
『はじめまして。』
...と彼女はそう言って少しほろ酔いなのか照れてるのか僕に頭を下げた。
『はじめまして』 と僕も頭を下げた。
『お名前は何て言うですか?』
『結奈です。』
『結奈ちゃん? 可愛い名前だね! 僕は琢磨だよ! よろしくね!』
『よろしくお願いします。』
『今、幾つなの?』
と聞くと...? 23歳と答えた。
僕が思っていた以上に若い。大人びているから、もう少し上かと思って
いたからだ。
逆に彼女から、 『琢磨さんこそ幾つなんですか?』
...と聞かれて僕が歳を答えると? お父さんみたいと言われてしまった。
まあ、僕の歳は46歳でバツ1の独身だし。この子ぐらいの子供がいても
おかしくないと言われれば、そうかもしれない!
前の奥さんとの間に子供もいなかったから? いればこの子ぐらいなのかな
と思って見ていた。
『僕のことは、お父さんでいいよ!』
『えぇ!? いいんですか?』
『ここにいる時だけだよ!』
『はい。』
『それと? 敬語禁止ね! タメ語でいいから~』
『はっ.うう.うん。』
◇◆◇◇◆◆◇
あの日から、土日は僕の隣には彼女がいた。
年甲斐もなく、僕は若いこの女の子と会える事に浮かれていた。
話すことも他愛のない話でどうでもいい話を2人で話す。
たまに、店員さんが入って来て3人になることもあるけど......?
それも楽しい。
彼女はつい3ヶ月前までは、彼氏がいたらしいけど? 浮気されて
別れたとか。もう、とうぶんは彼氏は要らないって言っていた。
今は一人暮らしをしているらしい。たまに実家からいろいろ送られてくる
とか? 母親の手紙が入っていて感動したって......。
寂しい時は、お母さんに電話していろいろ話すみたいでその時、お母さんに
聞いてもらっていると、ほっとするとか言ってたな。
見た目は、大人びていても中身はまだ幼いと言うか? なんか可愛い。
それでも彼女の事を、『恋愛対象』として見ていなかった。
でもある時、3ヶ月前に付き合っていた。浮気男が彼女を探してこの店に
きた時に嫌がる彼女を連れて行こうとして、僕は咄嗟に止めた。
正直、ムカついたから!
だから、僕がその浮気男に言ってやった事は......?
『今は僕と付き合っている! その手を放せ!』
『何だ~ おっさん! 口挟むなよ!』
『お前! 浮気したんだろう~ 自業自得だよ!』
『......』
『もうやめて~ 私この人と付き合ってるから帰って! 二度と私に
会いに来ないで!』
『......』
『わわ.わかった。幸せになれよ~ おっさん頼む!』
『任せておけ!』
浮気男はそのまま黙って帰って行った。
よくよく彼女から話を聞けばちょくちょく浮気男から連絡がきていたらしい。
直接、彼女の仕事場やマンションにも......。
何度も何度もしつこく付きまとわれたりしていたとか......?
彼女はそんな事を何にも言わないから、まったく気にしていなかったし
ずっと我慢していたかと思うとよけいに守ってあげたいと思った。
ここではじめて、『娘から女性に変わった瞬間』 だった。
僕はどさくさに紛れて彼女に言った。
『もし良かったら...? 本当に僕と付き合わない!?』
『えぇ!? 本当に......?』
『うう.うん。』
彼女は黙って頷いた。
僕は照れながら頭を掻いて少し体も火照っていたと思う。
◆◇◆◇◆
その日から、土日は行きつけの飲み屋さんで、彼女とカウンターで
隣り合わせで飲む。
ただ、平日は僕の家か? 彼女の家で、『家飲み』 に変わった。
2人だと...? 2倍幸せだな。
最後までお読みいただきありがとうございました。