新たなるフロンティアへ
――ふぅ……撮った撮った。撮りまくったぜ。
とりあえず急ぎで、圧縮した画像を送ったから4時間半位したら、そっちでも見れるはずだぜ。何せ『ここ』は、そちらからは直接なんて見れやしない。
いや、望遠レンズだって届かない奥地だからな。【ハッブル】先輩の目すら届かない場所。
しかし、遠かったぜ。ここまで9年位かかったなぁ。勿論無駄になんかしない9年だったさ。
俺は史上最速の9時間で月軌道を通過。13ヶ月で木星を接近通過したんだ。途中で俺の第一の目標【冥王星】を望遠でパシャリ。目標が見えるというのはいい事だ。
勿論、道々で写真を撮るのは忘れない。小惑星を接写したり。そうそう、木星の3つの火山が噴火してるのを初めて撮影出来たのは俺さ。あれはしびれたね。
その後は長旅だからな。しばらくは半年に一回の目覚ましが鳴るまでは寝てる事が多かったさ。
その間に第二目標をどうするのか、みんなが相談してたらしいんだが、ジャパンの【すばる】ってやつも混ざって色々撮影して考えてくれていたらしい。起きた時に無事に決まっていた。ありがたいこった。
ただ、第一目標到着間近であれには焦ったぜ。1ヶ月前から目を覚まして用意してたってのに、到着数日前に身体が動かなくなっちまってさ。3日かけて、必死に体操してたのが効いたらしく、どうにか万全に戻った。あれは故郷のみんなも焦らしちまったな。本当に面目ない。
でもさ、第一目標【冥王星】を接近通過は大成功。これも史上初。興奮する身体を抑えて、まずは圧縮して写真を送付。
――あの重力に引かれ、離れ……加速される身体。あの感覚、堪らないぜ。
俺に持たされている数少ない荷物にさ、遺灰があるんだ。【冥王星】を発見した人のなんだけどさ。
凄いよな。人類でここまで接近したのはあんたと俺だけだよ。文字通り【我らの共】よ。星条旗にかけて、俺たちはやり遂げたんだぜ。
さて、あまりにも初めて尽くしで写真を撮り過ぎたから、少しずつ送るよ。年内中には送り終わると思う。
それをしながら俺は次を目指す。第二目標は【エッジワース・カイパーベルト】。彗星の故郷とも呼ばれている天体群だ。
さらにその先は……俺は太陽系を飛び出すぜ。さらに、さらに先へ。何故なら俺は【新たなる地平線たち】の名前を冠する者。俺は故郷の地球の人々に、新たな地平を見せ続ける先行者。帰りの事は考えない。神話の世界の果てまでも、いや、もっとずっと先のどこまでも。俺が続く限り……俺は行ける所まで行くぜ。
――俺は【ニューホライズンズ】。最前線の希望だ。